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大学・研究所にある論文を検索できる 「Validity and reliability of a driving simulator for evaluating the influence of medicinal drugs on driving performance」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Validity and reliability of a driving simulator for evaluating the influence of medicinal drugs on driving performance

岩田, 麻里 名古屋大学

2021.07.16

概要

【緒言】
 本邦では、殆どの向精神薬の添付文書は、明確な証左なく服薬中の自動車運転を一律に禁止しており、服薬継続を要する患者の服薬アドヒアランスや社会復帰を妨げている。欧州では証左に基づいて医薬品がリスク毎に分類され、近年、米国でも中枢神経作用薬が自動車運転に与える影響の調査を求めている。欧米の証左をそのまま日本人に外挿することは困難であり、日本の公道での実車試験を実施することは現実的でない。従って、運転シミュレータ(DS : Driving simulator)による評価系確立が期待される。そこで、新規に開発した DS を対象にまず信頼性の検証を行い、次に世界的基準であるアルコールを用いて妥当性検証を実施した。

【対象】
 試験 1 と 2 では 20 名、試験 3 では 26 名の健康な日本人男性を対象とした。運転免許証を最低 3 年は保持し、日常的に運転していることを組入条件とした。試験 3 ではアルコールを摂取する実験を行うため、アルコール代謝に影響を与える ALDH 2 (Aldehyde dehydrogenase 2)遺伝子が高活性型の被検者のみを対象とした。

【方法】
 試験1では、60 分までの累積 DS データを 5 分間隔で測定し、横揺れを表す主要評価項目(SDLP: standard deviation of lateral position)の安定した値を得るために必要な測定時間を検討した。試験 2 では、1 週間間隔で反復測定した DS データのクラス内相関係数(ICC : intraclass correlation coefficient)を算出することで個体内差を検討した。試験 3 では、血中アルコール濃度(BAC: blood alcohol concentration)0%と 0.05%の SDLP値の差から、臨床的に意味のある SDLP 値の閾値を算出した。
 DS 操作に慣れるため練習期を設け、7 日後に試験を行った。試験 1 では R=500mの車線維持課題を 60 分、追従走行課題を 25 分、急ブレーキ課題を 15 分行った。試験2 では R=800m の車線維持課題を 60 分、追従課題を 5 分、急ブレーキ課題を 5 分行い、1 週間後に同様の課題を行った。試験 3 は、二重盲検、プラセボ対照、ランダム化、4 群 4 期クロスオーバー試験(Williams 設計)として、試験 2 と同じ課題を行った。アルコール摂取量は既報に倣って Widmark の計算式を用い、個別に設定した。
 DS 課題の車線維持課題では、緩やかなカーブを描く 2 車線の道路を時速 100 km で走行しながら左車線の中央を維持するように指示し、SDLP を測定した。追従走行課題では、加減速しながら走行する先行車両に一定の間隔で追従するように指示し、車間距離の標準偏差(SD:standard deviation)を平均値で割った変動係数(CV:Coefficient of variation)を測定項目(DCV: distance coefficient of variation)として評価した。急ブレーキ課題では、時速 50km での走行を維持し、道路の両側からランダムに出現する人形モデルとの衝突を急ブレーキによって回避するよう指示し、ブレーキ反応時間 (BRT:brake reaction time)を測定した。
 主要評価項目は SDLP であり、探索的評価項目として 1)レーンまたぎ回数、2)DCV、3)先行車両減速への反応時間、4)BRT、5)人形❜デルへの衝突回数、6)コースアウト回数、7)先行車両への衝突回数、8)速度の標準偏差、を測定した。また、検査時の眠気やアルコールによる気分変化が結果に影響を与える可能性を考慮し、日本語版カロリンスカ眠気尺度(KSS:Karolinska Sleepiness Scale)と日本語版気分プロフィール検査 2(POMS 2:Profile of Mood States 2nd Edition)の評価も行った。
 統計分析は、主要評価項目と探索的項目について、平均値と SD を算出した。試験 1 では 5 分毎の各評価項目の値を✲用して CV を計算した。試験 2 では、2 回の試験における各項目の ICC を計算し、試験再試験信頼性を評価した。試験 3 では、60 分までの累積 SDLP の平均と SD、および BAC 0%との差を算出した。BAC 0.05%と 0%との SDLP の予測差は線形回帰❜デルを✲用して計算した。

【結果】
 試験 1:5 分間隔の累積 SDLP 値は安定しており、CV は 30%未満であった。累積 DCV値の CV は約 30%、累積 BRT 値の CV 値は 10%未満と安定していた。2 名が軽度の DS酔いを報告した。
 試験 2:各項目の結果の散布図を Fig. 1 に示す。SDLP の ICC は 0.93 であり、信頼性が優れていることを示した。DCV と BRT の ICC は 0.70 と 0.86 であり、それぞれ良好と優れた信頼性を示した。
 試験 3:Fig. 2 は車線維持課題の各 BAC 群における平均(SD)SDLP 値を示している。 SDLP は BAC 濃度依存性に増加を認めた。線形回帰❜デルを✲用して計算された BAC 0.05%と 0%の予測差は 9.23cm(95%信頼区間[CI]:6.99–11.47)であった(Fig. 3)。探索的項目は、SDLP に準ずる一部の項目は濃度依存性の増加を示したものの、その他は BAC との関係は認めなかった。また、KSS スコアも BAC との関係は認めず、どの群でも眠気は低い結果となった。POMS 2 スコアは、BAC とともにわずかに増加が見られた。有害事象の発生は認めなかった。

【考察】
 本 DS が走行性能に関するデータを十分に安定して取得できることが示され、試験 2 では優れた試験再試験信頼性が示された。試験 3 では主要評価項目の SDLP が BAC濃度依存性に増加することが示され、十分な妥当性が確認された。信頼性を検証した DS 評価系は本研究が初であり、妥当性と信頼性の両方を備えた本 DS が、薬物の運転技能に与える影響に関する研究を今後加速させる可能性がある。
 本研究では、BAC 0%と 0.05%との予測差が 9.23cm と比較的大きな値になったのは、車線維持課題のシナリオが緩やかなカーブが連続するコース設定だったからと考えられた。また、BAC の測定法は呼気濃度からの予測値ではなく、採血による直接測定であったことも影響した可能性がある。BAC を考慮する際、ほぼ 100%が高いアルコール代謝能を持つ欧州の人種と比べ、10 〜60% が活性の低い ALDH2*1/*2 または ALDH2*2/*2 遺伝子を持つアジア人はアルコール代謝能が低いため、検証試験の結果の解釈を困難にさせる可能性がある。そのため、本研究では高活性型の ALDH2*1/*1
 遺伝子型を有することを確認した上で実験を行った。
 また、SDLP はアルコールへの感度が高いことが知られており、本研究でも BAC との有意な相関を認めたが、その他の項目については一定した見解は得られていない。しかし、実薬での影響が報告されている項目もあるため、今後はさらなる検討が必要である。

【結語】
 本研究で用いた新規 DS 評価系は、信頼性、妥当性、および忍容性を備えており、運転技能に対する薬物の影響を評価するのに適していると考えられた。本評価系により、科学的証左に基づいた添付文書記載や、延いては患者の服薬アドヒアランス向上や社会復帰の実現が期待される。

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