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大学・研究所にある論文を検索できる 「術前化学療法を施行した食道扁平上皮癌におけるGlucocorticoid(GC)-Glucocorticoid receptor(GR)伝達経路関連因子の臨床病理学的,免疫組織学的検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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術前化学療法を施行した食道扁平上皮癌におけるGlucocorticoid(GC)-Glucocorticoid receptor(GR)伝達経路関連因子の臨床病理学的,免疫組織学的検討

植木 俊輔 東北大学

2020.03.25

概要

【背景】食道扁平上皮癌は比較的悪性度の高い固形腫瘍であり,この事から本邦における切除可能な局所進行食道扁平上皮癌の標準治療は,術前化学療法後の根治切除とされている.しかし化学療法による治療効果は症例により異なり,満足な治療成績が現状では得られておらず,患者の治療成績向上のため新規の予後予測因子や新規治療対象の発見が待たれている.Glucocorticoid(GC)-Glucocorticoid(GR)伝達経路は, 細胞のストレス応答に関する重要な経路であり,悪性腫瘍でも腫瘍細胞のストレス応答に密接に関連しており,化学療法の効果に影響を及ぼす可能性がある.しかしヒト食道扁平上皮癌において GC-GR 伝達経路を網羅的に検討した報告は未だない.一方 GC-GR 伝達経路の中核である GR 発現は,扁平上皮癌では他の上皮性腫瘍よりもその発現が比較的高頻度であるとの報告もあり,GC-GR 伝達経路は特に扁平上皮癌においてより活性化している可能性が示唆されてきた.そこで今回,食道扁平上皮癌の切除症例のなかでも,腫瘍細胞により強いストレス負荷が生じていると考えられる術前化学療法施行症例で,GC-GR 伝達経路関連因子の発現と治療成績との関連性を検討した.今回の病理組織標本を用いた検討により GC-GR 伝達経路が食道扁平上皮癌に及ぼす影響を推察でき,新たなより効果的な予後予測因子や治療法の発見につながるものと考えられる.

【目的】術前化学療法を施行した食道扁平上皮癌患者を対象に,GC-GR 伝達経路関連因子の発現と治療成績を中心とする臨床病理学的因子との関連を術前化学療法施行前後での各因子の発現動態の変化を含めて検討する.この検討により GC-GR 伝達経路が食道扁平上皮癌患者に与える影響を解明し,新たな臨床予後予測因子や,新規治療標的となりうる因子を検索する事を主目的とした.

【対象と方法】2008 年 4 月から 2015 年 12 月に東北大学病院移植再建内視鏡外科において,Japan ClinicalOncology Group (JCOG) 9907 trial のプロトコールに準じて術前化学療法を実施後,食道切除術を施行した 98 症例を対象とした.これら 98 症例のうち術前化学療法施行前の生検検体が入手可能であった 42 例では,術前化学療法前後での各因子の発現変化を検討する目的で生検検体も対象とした.GC-GR 経路関連因子である,GR,Heat shock protein 70(Hsp70),Heat shock protein 90(Hsp90),Serum- andglucocorticoid-regulated kinase 1(Sgk1),N-myc down regulation gene1(NDRG1),Specificity Protein 1(SP1)および,p53,Ki-67 に関しては切除標本を用い免疫組織学的に検討した.あわせて GR,Sgk1,NDRG1,SP1 に関しては生検検体でもその発現動態を検索した.上述の検討で得られたこれらの因子の個々の症例における発現動態と治療成績(全生存率,無病生存率),臨床病理学的因子(pT,pN,M,G,pStage,ly,v),並びに術前化学療法治療効果(RECIST 分類,組織学的治療効果判定)との関係を中心に検索し,あわせて各因子の発現動態間の相関関係,術前化学療法前後での各因子の発現変化に関しても検討した.

【結果】術前化学療法施行後の外科的切除によって得られた切除検体での検討では,Sgk1 高発現と pT,pN,リンパ管侵襲及び静脈侵襲との間に,NDRG1 高発現と pT,静脈侵襲との間に, SP1 高発現と,pT, pN と静脈侵襲との間に有意な相関関係が認められた.一方生存期間分析では,GR 高発現群,SP1 高発現群において有意に全生存期間が短縮し (GR:p=0.0473,SP1:p=0.0127),中でも Sgk1, NDRG1 関しては,いずれも高発現群において有意に全生存期間,無病生存期間ともに短縮していた(全生存期間:Sgk1 p=0.0055,NDRG1p=0.0021,無病生存期間:Sgk1 p=0.0240,NDRG1 p=0.0086).生検検体における検討では,Sgk1 高発現群有意に無病発生存期間が短縮し(p=0.0095),NDRG1 高発現群で有意に全生存期間,無再発生存期間双方が短縮し(OS p=0.0233, p=0.0006),NDRG1 高発現群,SP1 高発現群において術前化学療法の腫瘍縮小効果(RECIST分類)が減少している傾向が認められた(NDRG1; p=0.021, SP1; p=0.037).

【結論】術前化学療法を施行した食道扁平上皮癌において GC-GR 経路に関連する,GR,Sgk1,NDRG1,SP1の発現が全生存期間や術前化学療法に対する治療効果などの治療成績や臨床病理学的因子と関連している事が初めて明らかにされた.今回の研究結果から術前化学療法を施行された食道扁平上皮癌患者では,GC-GR経路の活性化が腫瘍の局所進行,化学療法耐性の形成に密接に関わっており,これらの要因により患者の生存率が低下されている可能性を初めて示す事が出来た.併せて,GC-GR 関連因子である GR,Sgk1,NDRG1,SP1 が,臨床予後予測因子となり,今後の化学療法耐性改善のための新規治療対象となりうる事が示された.

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