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大学・研究所にある論文を検索できる 「Efficacy and Safety of Sorafenib in Unresectable Hepatocellular Carcinoma with Bile Duct Invasion」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Efficacy and Safety of Sorafenib in Unresectable Hepatocellular Carcinoma with Bile Duct Invasion

田中, 卓 名古屋大学

2021.04.23

概要

【緒言】
 肝細胞癌(HCC)の胆管浸潤は稀であり、過去の報告ではその発生頻度は1.2%~13%とされている。これらの症例では黄疸を伴うことが多く、肝予備能も低下して治療が困難となる。また胆管浸潤症例は臨床病理学的には悪性度が高く予後は不良であることも知られている。従来、これらの患者群には有効な治療法がなかったため、化学塞栓療法か緩和治療が選択されてきた。
 ソラフェニブは切除不能なHCCの第一選択の全身療法として承認されており、現行ガイドラインでは切除不能と考えられるBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)分類StageBまたはStageCのHCCに対してソラフェニブの投与が推奨されている。胆管浸潤症例はこのBCLC分類StageCに含まれているが、胆道浸潤を有するHCCに対するソラフェニブの治療成績についてのまとまった報告は我々の知る限り存在しない。
 そこで本研究では、胆管浸潤を有する切除不能な進行HCC患者に対するソラフェニブの有効性と安全性を明らかにすることを目的とした。

【対象と方法】
 2011年6月から2018年2月までの間に、当院でソラフェニブ治療を開始した進行肝細胞癌患者207例を対象とした。当院におけるソラフェニブ治療の適応としては、外科的切除や局所局所療法の対象とならないBCLC分類StageBまたはStageCに相当する症例、Eastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG-PS)が0または1、かつChild-Pughスコアが8点以下の患者としている。これらのうち、画像から抗腫瘍効果が判定でき、転帰が確認できる175例を評価対象とした。そのうち胆管浸潤が認められたのは10例(5.7%)であった。胆管浸潤のあるHCC(B(+)群、n=10例)と胆管浸潤のないHCC(B(-)群、n=165例)に分け、抗腫瘍効果と安全性を比較した。
 ソラフェニブは800mg/日の用量で開始され、80歳以上、体重50kg以下、腎機能不良、静脈瘤や腹水の治療歴のある症例については、早期の有害事象による中止を避けるため、初回投与量を400mg/日とした。ソラフェニブの治療は重篤な有害事象が現れるか、臨床的に腫瘍増大が進行するまで継続された。
 胆管浸潤は造影CTと造影超音波を用いて診断し、日本肝臓癌研究会の分類に基づき胆道浸潤はB1からB4まで分類した。胆管浸潤のない症例はB0に分類した。
 抗腫瘍効果は造影CTをもとに、modified RECIST分類に従って評価を行った。ソラフェニブ投与開始時、開始から6週間後、その後は治療期間中4~10週間ごとに造影CT検査を実施した。抗腫瘍効果は6週間後の奏効率、および最良奏効率の2点について検討した。また、抗腫瘍効果の解析は、客観的奏効率(ORR)および病勢制御率(DCR)によって評価された。
 安全性の評価は、有害事象共通用語規準(CTCAE)ver4.0に基づいて評価された。肝機能は、Child-Pughスコア、アルブミン・ビリルビン(ALBI)グレード、modified-ALBI(mALBI)グレードシステムを用いて評価した。統計解析は、R3.5.2(R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria)のユーザーインターフェースであるeasy R(EZR;埼玉医療センター、日本)を用いて行った。全生存期間(OS)、無増悪期間(TTP)をKaplan-Meier法で算出し、生存、事象発現率の差をlog-rank検定で評価した。予後因子を同定するためにCox比例ハザードモデルを用いて解析を行い、単変量解析、および多変量解析を行った。カテゴリー変数はフィッシャーの正確確率検定を用いて分析し、多変量解析にはロジスティック回帰分析を行った。p<0.05を統計的に有意であると判断した。
 本研究は本学倫理委員会の承認(承認番号2019-0031)を受け行った。

【結果】
 患者背景は男性142例と女性33例、年齢の中央値は69歳(34〜91歳)であった。B(+)群における胆管浸潤の程度はそれぞれB1/B2/B3/B4:0/5/2/3名であった。B(-)群とB(+)群の群間の背景はChild-Pughスコアを除いて、有意差は認めなかった。観察期間の中央値は、B(-)群で12.2ヶ月、B(+)群で13.6ヶ月(p=0.872)であった。(Table1)抗腫瘍効果に関しては6週間のORR(B(-)群 vs B(+)群;17.6% vs 20.0%、p=0.692)とDCR(B(-)群 vs B(+)群;72.8% vs 80.8%、p=1.000)ともにB(-)群とB(+)群の間で有意差を認めなかった。(Table2)
 全生存期間(OS)無増悪生存期間(TTP)とも、B(-)群とB(+)群の間で有意差は認めなかった(OS:14.8ヶ月 vs 14.1ヶ月、p=0.780、TTP:3.4ヶ月 vs 5.7ヶ月、p=0.277)(Figure1)。両群を合わせた本研究の全体の患者のOSに関連する治療前因子を検討、単変量解析では、mALBIグレード(grade1/2a)、AFPレベル(400ng/mL未満)、BCLC病期(ステージB)、門脈浸潤(なし)の4因子が同定された。多変量解析では治療前のmALBIグレード(p=0.002)および門脈浸潤の有無(p<0.001)の2つの因子が治療後のOS延長に寄与する因子として同定された。また治療開始後のOSに延長に寄与する因子と関しては単変量解析にて、初期6週間のALBIスコアの変化、6週間後時点の抗腫瘍効果、6週間後時点のAFP比の3つの因子が同定され、多変量解析では、ALBIスコアの変化(p=0.012)と6週目の抗腫瘍反応(p<0.001)の2因子が同定された。(Table3)
 閉塞性黄疸のためソラフェニブ投与開始前に胆道ドレナージが必要な症例が2例あり、胆管ステント留置により黄疸が改善した後にソラフェニブを安全に開始しえた。B(+)群ではソラフェニブ投与中に胆管炎を発症した患者は5例であった。胆管炎発症例では診断後ソラフェニブの一時的休薬し速やかに内視鏡的介入を行い、症状の改善の後にソラフェニブ治療を再開した。胆道トラブルに関連したソラフェニブの一時的な休薬期間の中央値は10日間であった。
 有害事象(AE)の発生頻度に関しては、B(-)群とB(+)群ですべてのグレードのAE発生率(95.8% vs 90.0%、p=0.382)およびグレード3~4のAE発生率(35.2% vs 40.0%、p=0.744)と有意差は認められなかった。初回減量までの期間中央値は17日であり、両群間に差はなかった[B(-)群 vs B(+)群:19日 vs 17日、p=0.614]。ソラフェニブの治療期間は両群間で差がなかった[B(-)群 vs B(+)群:6.9ヶ月 vs 7.1ヶ月、p=0.447]。

【考察】
 今回の結果から、胆管浸潤を有するHCC患者に対するソラフェニブの全生存期間、TTP、抗腫瘍効果は、胆管浸潤を有しない患者と比較して少なくとも同等であることが示された。今回の検討において、良好なOSに関連する因子に関しては門脈浸潤がないことと、治療開始時でのmALBIgrade1または2aが良好な予後に寄与する重要な因子であることが明らかになり、胆管浸潤の有無は影響を与えていなかった。また、胆管浸潤患者において、ソラフェニブ投与開始6週間後の抗腫瘍反応の判定は、ソラフェニブ治療の継続の指標として有用であると考えられた。胆管浸潤患者における閉塞性黄疸のドレナージに関しては、進行したHCCでは肝機能障害が背景にあるため、予後の改善には寄与しない可能性があることが過去に報告されているが、本研究ではソラフェニブ開始前にドレナージを行った胆管浸潤患者2例では肝機能が改善し、安全にソラフェニブを導入することができた。
 本研究にはいくつかの制約があり、第一に本研究は単施設、後方視的研究であり、無作為化されていないことである。第二に、サンプル数が特に胆管浸潤例で少ないことである。したがって、本研究で得られた知見を確認するためには、より多くの患者を対象とした独立した集団での追加研究が望ましいと考えられた。

【結語】
 ソラフェニブは胆管浸潤を有する進行性肝細胞癌患者において、有効かつ比較的安全に導入できる治療である可能性があると考えられる。

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