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Serum and plasma levels of Ba, but not those of soluble C5b-9, might be affected by renal function in chronic kidney disease patients

山根, 良子 名古屋大学

2023.07.31

概要

主論文の要旨

Serum and plasma levels of Ba, but not those of
soluble C5b-9, might be affected by renal function
in chronic kidney disease patients
慢性腎臓病患者において、血清/血漿Baは腎機能の影響を受ける
かもしれないが、血清/血漿sC5b-9は腎機能の影響を受けない

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座

総合医学専攻

腎臓内科学分野

(指導:丸山 彰一
山根 良子

教授)

【緒言】
補体系は、重要な自然免疫系として、また獲得免疫の橋渡しの役割を担っている。
一般的に、補体系は宿主において抑制と活性化の間でバランスを保ちながら維持され
ている。しかし、補体系の調節障害や過剰な活性化は、腎疾患では非典型溶血性尿毒
症症候群(aHUS)や C3 腎症、そして Guillain-Barre 症候群、重症筋無力症、視神経脊髄
炎など様々な病態の発症、促進を促すことがあり、諸刃の刃となる。
ここ数十年、補体依存性の疾患メカニズムが明らかになるにつれて、抗補体薬によ
る治療の臨床的有効性が注目されている。抗補体薬の開発が進むにつれ、補体系に関
するバイオマーカーの研究も重要となってくる。このような研究の一環として、血清
/血漿の Ba、C5a、solubleC5b-9(sC5b-9)の濃度を調べることは、腎臓内科領域における
aHUS や C3 腎症などの病態の診断や疾患活動性を検討するために有用であると考え
られる。aHUS や C3 腎症は若年層で発症することが多いが、片腎摘出後の成人や腎硬
化症の高齢者など慢性腎臓病(CKD)の患者に発症することもある。バイオマーカーを
評価する場合、成人 CKD 患者、特に高齢者の腎機能障害が存在する条件下で結果が
腎機能に影響されるかは不明であり、血清/血漿の補体成分と補体活性化物の濃度を評
価する場合、背景にある腎機能を考慮する必要があるかもしれない。
そこで本研究では、活動性の高い糸球体腎炎を除いた CKD 患者を対象に、血清/血
漿中の補体活性化物濃度とイヌリンクリアランスで評価した腎機能との関係について
評価した。
【対象及び方法】
本研究は、2009 年 5 月から 2016 年 4 月までに研究に同意し登録された 844 名の患
者のうち、以下の基準で 40 名を選出した。
活動性の高い糸球体腎炎を除き、詳細な組み入れ基準は、1)動脈硬化による腎硬化
症、2)腎細胞癌による片腎摘出、3)尿検査で細胞円柱や変形赤血球を認めない尿蛋白
1.0g/g・Cre 未満の糸球体腎炎とした。除外基準は、1)腎機能を評価するための尿検査、
イヌリンクリアランス、eGFR の測定がない、2)-80℃で保存された血清と血漿のサン
プルがない、3)尿蛋白が 1.0g/g・Cre 以上認め、細胞円柱や変形赤血球のある糸球体腎
炎とした。
また、各患者のカルテから、以前の報告に従って日本人向けに調整した eGFR を含
む検査データを収集した。測定する補体価は、補体成分である C3、C4、溶血活性を示
す CH50、補体活性化産物である Ba、C5a、sC5b-9 とし、CH50 は溶血アッセイ、C3、
C4、Ba、C5a、sC5b-9 は ELISA で測定した。
40 名の患者を、2 つの異なる閾値で、Cin<60mL/min/1.73m2 (Cin<60 group) vs. Cin
≧60mL/min/1.73m 2 (Cin≧60 group)、Cin<30mL/min/1.73m 2 (Cin<30 group) vs. Cin≧
30mL/min/1.73m2 (Cin≧30 group)の 2 群に分けた。これらの群を用いて、C3、C4、CH50、
Ba、C5a および sC5b-9 濃度と腎機能との相関を調べた。

-1-

【結果】
全患者の背景特性として、本研究では、活動性の高い糸球体腎炎を除いた CKD 患
者を対象としたため、ほとんどの症例で腎機能低下は生体腎移植のドナー候補者、腎
細胞癌や腎移植のための片腎摘出手術後、腎硬化症などで偶発的に確認されたものだ
った。
各補体価の血清と血漿間の比較を行った。C3 および CH50 では、血清と血漿の間に
有意な差は認められなかった(Fig.1a,c)。Ba、C5a および sC5b-9 は、以前に健康な日
本人ボランティアの研究で報告されたように、血漿より血清で明らかに高かった
(Fig.1d-f)。しかし、血清 C4 は血漿よりわずかに有意に高かったが、ほぼ標準範囲内
であった(Fig.1b)。
次に各補体価と腎機能の相関を検討した。C3、C4 および CH50 の血清/血漿濃度と
Cin および eGFR に相関は認められなかった(Fig.2)。Cin と血清/血漿 Ba に有意な相関
が認められたが、血清/血漿 C5a および sC5b-9 と Cin に有意な相関は認められなかっ
た(Fig.3)。以下の解析では腎機能の指標として eGFR ではなく、Cin を用いた。
2 つのグループ(Cin<60 vs. Cin≧60 と Cin<30 vs. Cin≧30)で比較し、腎機能低下
の影響を検討した。血清/血漿 C3、C4、CH50 では、いずれの群間においても有意差は
認められなかった(Fig.4,5)。Ba、C5a、sC5b-9 を比較すると、血清/血漿 Ba および血漿
C5a は、Cin≧60 群に比べて Cin<60 群で有意に増加していた(Fig.6a,b,d)。また、血
清/血漿 Ba は Cin≧30 群に比べて Cin<30 群でも有意に増加していた(Fig.7a,d)。しか
し、血清 C5a および sC5b-9 の血清/血漿濃度は Cin<60 と Cin≧60、Cin<30 と Cin≧
30 の 2 群間で有意差は見られなかった(Fig.6c,e,f、Fig7.b,c,e,f)。
【考察】
本研究では、血清/血漿 Ba は Cin および eGFR と逆相関を示したが、血清/血漿 C5a
と sC5b-9 は Cin および eGFR と相関を示さなかった。一方、C3、C4、CH50 は血清、
血漿ともに標準的な範囲にあり、腎機能との相関は見られなかった。血清と血漿での
違いについては、Ba、C5a および sC5b-9 の血清濃度は血漿濃度より有意に高く、過去
の報告と同様だが、その研究は健常者のみを対象としたものであった。
CKD の特徴に応じた腎機能と関連した今回の結果から、Cin<60 または Cin<30 の
患者では、Cin≥60 または Cin≧30 の患者と比較して、血清/血漿 Ba がそれぞれ有意に
増加することが確認された。血漿 C5a は Cin<60 の患者では、Cin≧60 の患者と比較
してわずかに有意に高かったが、C5a は健康な日本人を対象とした研究から報告され
た標準範囲内にほぼ収まっていた。そのほかの群の間で有意な差は確認されなかった。
本研究では、GFR を eGFR と同様に Cin で評価したが、これは Cin がクレアチニン
クリアランスと比較してより正確な方法であり、通常腎機能評価のゴールドスタンダ
ードと位置付けられているためである。今回の結果から活動性のある糸球体腎炎の除
いた CKD 患者では、血清/血漿 Ba を評価する際、ベースラインの腎機能を考慮するべ
きであり、一方、血清/血漿 sC5b-9 および C5a を測定する際には臨床的には考慮しな

-2-

くてよい可能性を示唆するものである。なぜ血清/血漿 Ba だけが腎機能と相関がある
か、本研究では不明である。仮説として、Ba は補体活性化系の第二経路の補体活性化
物である B 因子のフラグメントであり、腎機能増悪によるD因子増加の報告から、腎
機能低下により第二経路の活性化亢進による影響を受けるかもしれない。あるいは、
Ba の分子量(~33kDa)は C3、C4 および sC5b-9 の分子量(~190kDa、~187kDa および
>1000kDa)よりはるかに小さいので、GFR 低下に対する影響が他の測定項目より大き
かった可能性がある。C5a の分子量(~11kDa)も小さいが、C5a の産生は補体活性系の
C3 転換酵素産生の段階で複数の補体制御因子により抑制されるためかもしれない。別
の仮説として、進行した CKD では血液 pH の低下や尿毒症物質の増加により、補体活
性 化 経 路 の 第 二 経 路 の 初 期 段 階 で 、 B 因 子 が 結 合 し て C3 転 換 酵 素 の 一 つ で あ る
C3(H2O)Bb を形成する反応が常に起こりやすい状態にあり、結果として Ba が産生さ
れ、増加する可能性がある。しかし、腎機能が低下しても、補体制御機構は補体系の
終末経路を止めるために有効的に働いていたのではないか、と考える。今回の研究の
限界として、サンプル数が少なく、透析治療を要する ESRD に進行した患者は含まれ
ていない。今回の研究では、CKD 患者の血清/血漿 Ba のベースラインが適切であった
かどうかは不明である。今後、この問題を明らかにするために、より大規模な研究が
必要である。
【結語】
本研究では、活動性の高い糸球体腎炎を除いた CKD 患者で、特に Cin<30 の患者
では血清/血漿 Ba が腎機能に依存して上昇するが、sC5b-9 は腎機能の影響を受けない
ことが分かった。進行した CKD 患者で、血液サンプルの補体産物を分析、評価する際
に、Ba では GFR に基づいて解釈する必要があることが示唆された。

-3-

Fig.1
Comparison between plasma and serum levels of C3, C4, CH50, Ba, C5a and sC5b-9 and inulin clearance (Cin) as a
marker of renal function. When we compared levels of C3 (a), C4 (b), CH50 (c), Ba as a fragment of factor B (d), C5a
(e) and sC5b-9 (f) between plasma and serum samples, serum levels of C5a, Ba and sC5b-9 were significantly higher
than plasma levels, although no differences were evident between plasma and serum levels of C3, C4 or CH50. Closed
and open circle represent plasma and serum samples, respectively

Fig.2
Correlation between plasma/serum levels of C3, C4, CH50 and inulin clearance (Cin). Correlations of levels of C3, C4
and CH50 with Cin are shown in a and d, b and e, and c and f, respectively. Correlations between plasma levels and
Cin are shown in a, b and c, and correlations between serum levels and Cin are shown in d, e and f

-4-

Fig.3
Correlation between plasma/serum levels of Ba, C5a, sC5b-9 and inulin clearance (Cin). Correlations of Ba, C5a and
sC5b-9 levels with Cin are shown in a and d, b and e, and c and f, respectively. Correlations between plasma levels and
Cin are shown in a, b and c, and correlations with serum levels and Cin are shown in d, e and f

Fig.4
Comparison of plasma or serum levels of C3, C4 and CH50 between inulin clearance (Cin) <60 mL/min/1.73m2 (Cin
<60) and Cin ≥60 mL/min/1.73m2 (Cin ≥60). In plasma and serum samples, levels of C3, C4 and CH50 did not differ
significantly between Cin <60 and Cin ≥60. a and d, b and e, and c and f show levels of C3, C4 and CH50, respectively.
a-c and d-f show plasma and serum samples, respectively. Closed and open circles represent Cin <60 and Cin ≥60,
respectively

-5-

Fig.5
Comparison of serum or plasma levels of C3, C4 and CH50 between Cin <30 mL/min/1.73m2 (Cin <30) and Cin ≥30
mL/min/1.73m2 (Cin ≥30). In serum and plasma samples, levels of C3, C4 and CH50 did not differ significantly
between Cin <30 and Cin ≥30. a and d, b and e, and c and f show levels of C3, C4 and CH50, respectively. a-c and df show plasma and serum samples, respectively. Closed and open circles represent Cin <30 and Cin ≥30, repectively

-6-

Fig.6
Comparison of plasma or serum levels of Ba, C5a and sC5b-9 between Cin <60 mL/min/1.73m2 (Cin <60) and Cin ≥60
mL/min/1.73m2 (Cin ≥60). For both plasma and serum samples, levels of Ba in Cin <60 were significantly higher than
those in Cin ≥60 (a and d). For plasma samples, levels of C5a were slightly but significantly higher in Cin <60 than
Cin ≥60 (b). On the other hand, serum C5a levels and plasma and serum sC5b-9 levels did not differ significantly
between Cin <60 and Cin ≥60 (c, e and f). a and d, b and e, and c and f show levels of Ba, C5a and sC5b-9, respectively.
a-c and d-f show plasma and serum samples, respectively. Closed and open circles represent Cin <60 and Cin ≥60,
respectively

-7-

Fig.7
Comparison of serum or plasma levels of Ba, C5a and sC5b-9 between Cin <30 mL/min/1.73m2 (Cin <30) and Cin ≥30
mL/min/1.73m2 (Cin ≥30). For both plasma and serum samples, levels of Ba were significantly higher in Cin <30 than
in Cin ≥30 (a and d). On the other hand, plasma and serum levels of C5a and sC5b-9 did not differ significantly between
Cin <30 and Cin ≥30 (b, c, e and f). a and d, b and e, and c and f show levels of Ba, C5a and sC5b-9, respectively. a-c
and d-f show plasma and serum samples, respectively. Closed and open circles represent Cin <30 and Cin ≥30,
respectively

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