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大学・研究所にある論文を検索できる 「Clinical Impact of Neoadjuvant Therapy on Nutritional Status in Pancreatic Cancer」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Clinical Impact of Neoadjuvant Therapy on Nutritional Status in Pancreatic Cancer

多代, 充 名古屋大学

2022.01.27

概要

【緒言】
 膵癌治療において手術療法が唯一の根治的治療ではあるが、診断時に手術可能な症例は全体の15~20%に過ぎず、また治癒切除術を施行しても術後の再発率が著明に高い。これに対して近年、治療強度を高めるために切除可能膵癌にたいしても術前化学療法が標準治療となり、術前治療(術前化学療法・術前化学放射線療法)を行う症例が格段に増えている。
 化学療法施行には種々の副作用を伴う一方で、その有効性は用量依存性であることが多いため、化学療法の忍容性の向上が、癌の制御という観点でも重要である。そこで患者の栄養状態不良はその毒性を増悪させて忍容性を減ずるとされ、栄養介入の有用性を示す報告が散見される。特に消化管癌領域では、化学療法中の栄養介入が毒性の逓減、忍容性の向上につながるとの指摘が多い。しかし膵癌治療において、術前化学療法が患者の栄養状態に及ぼす影響に関して検討した報告は限られており、確立された知見は乏しい。
 本研究では、膵癌治癒切除後の症例を解析し、術前治療の栄養状態への影響を、rapid turnover protein(RTP)を含む種々の栄養指標、CRPなどの炎症反応指標、Glasgow Prognostic Score(GPS)やPrognostic Nutrition Index(PNI)などのinflammation-based prognostic scores(IBPS)を用いて検討した。また、relative dose intensity(RDI)の影響に関しても検討した。

【対象及び方法】
対象
 2010年8月から2017年3月までに膵癌にて当教室で膵頭十二指腸切除術を施行した161例を対象とし、術前治療を受けた群(術前治療群; n=67)と術前治療を受けなかった群(術前治療非施行群; n=94)の2群にわけて比較検討した。
方法
 術前治療群と非施行群とで、術前治療前後、さらには周術期の栄養指標・炎症反応指標・IBPSの変化を比較検討した。また、周術期合併症発生率・術後在院日数・術後補助療法開始までの期間も比較し、術前治療が周術期経過に及ぼす影響も検討した。術前治療群をRDI≥80%症例(n=39)とRDI<80%症例(n=19)の2群に分け、術前治療の忍容性が周術期栄養状態に与える影響も検討した。

【結果】患者背景
 術前治療群の術前治療前後の患者背景をTable.1に示す。術前治療前後で、体重(54.7±2.6 vs. 53.3±2.2kg, p=0.39)・BMI(21.3±1.3 vs. 20.6±1.1kg/m2, p=0.41)が下がる傾向を認めた。

術前治療の栄養指標・炎症反応指標・IBPSに対する影響
 術前治療前後における栄養指標・炎症反応指標・IBPSの変化をTable.2に示す。術前治療施行により、栄養指標としてRTPであるレチノール結合蛋白(P<0.01)やプレアルブミン(P=0.03)が有意に低下した。炎症反応指標としては、白血球(p=0.04)、リンパ球数(p<0.0001)が有意に低下した。IBPSとして好中球リンパ球比(P=0.04)や血小板リンパ球比(P<0.01)、PNI(P<0.01)が有意に悪化した。
周術期のRTPの推移をFig.1に示す。術後のRTPの回復が、術前治療群において有意に不良であった(P<0.05)。

術前治療の周術期経過への影響
 術前治療群と非施行群の周術期経過の比較をTable.3に示す。術前治療群と非施行群とで、術後合併症発生率、術後在院日数、術後補助療法開始までの期間に、有意差を認めなかった。

RDIの解析
 RDI≥80%の症例とRDI<80%の症例の周術期RTPの推移をFig.2に示す。当初、RDIと術前治療の影響は相関し、RDIが高値の症例の方が栄養状態は悪化すると予測していたが、結果としてはRDI≥80%群の方がRDI<80%群よりも栄養状態は保たれていた。

【考察】
 術前治療施行によりRTPが悪化しその回復も障害されたことから、術前治療は患者の栄養状態に影響し、さらに手術後の栄養状態の改善も障害される可能性が示唆された。
 術前治療のRDIが高値であった症例の方が栄養状態は保たれていたことから、予定通りに化学療法を行えた症例は、術前治療開始前の栄養状態や術前治療中の栄養摂取が良好であった可能性が示唆され、術前治療前・術前治療中の栄養状態の管理が重要であることが示唆された。
 今回の検討では、術前治療を行うことで術後合併症をはじめとした術後経過の悪化を認めなかったが、今回の症例数と合併症発生率から考えると、さらなる症例の集積により確認が必要と考える。
 術前治療症例に術前栄養介入することは有用である可能性が示唆された。

【結論】
 膵癌術前治療は栄養状態の悪化をきたし、手術後の栄養状態の修復も阻害すると考えられた。さらに低栄養状態が術前治療の忍容性を悪化することが示唆された。以上のことから、膵癌術前治療において栄養介入を行う重要性があると考えられた。

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