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大学・研究所にある論文を検索できる 「Nutritional Recovery after Open and Laparoscopic Distal Gastrectomy for Early Gastric Cancer : A Prospective Multicenter Comparative Trial (CCOG1204)」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Nutritional Recovery after Open and Laparoscopic Distal Gastrectomy for Early Gastric Cancer : A Prospective Multicenter Comparative Trial (CCOG1204)

松下, 英信 名古屋大学

2022.04.25

概要

【緒言】
胃癌の治療成績は近年飛躍的に向上し、検診の普及などに伴い早期胃癌の割合は半数を超えている。早期胃癌は高い治癒率が期待できるため、根治性を損なわない範囲で Quality of life(QOL)のより高い術式が求められる。胃切除術後患者の栄養状態は、様々な面で QOL に影響を与える可能性があり、術後補助化学療法のコンプライアンスを通じて予後に影響を及ぼすという報告もある。
腹腔鏡下胃切除術は 1994 年の報告以来、広く行われるようになった。腹腔鏡手術と開腹手術の本質的な違いは、創部が小さく腹壁の破壊が少ないことであるが、この腹腔鏡手術の利点が患者の QOL や栄養状態にどの様な影響を及ぼすかについては客観的データに乏しい状況であった。
我々は以前、胃癌に対し開腹や腹腔鏡で手術を施行した患者の体組成の経時的変化を報告した。開腹の幽門側胃切除術と胃全摘術、腹腔鏡下幽門側胃切除術の 3 群に分け、術後 1、3、6 カ月の変化を検討したところ、腹腔鏡群では筋肉量の減少が術後 1カ月で止まり、6 カ月後には術前レベル近くにまで回復したのに対し、開腹群では両術式ともに術後 1 カ月での減少率が大きく、術後 6 カ月でも回復傾向になかった。ただし、この研究が行われた時期には腹腔鏡下幽門側胃切除術の適応が cStage I に限られており、開腹群に術後補助化学療法を要する pStage II 以上の症例が多く含まれるなど、患者背景に明らかな差があったため、本研究では術前診断で cStage I の早期胃癌のみを対象として開腹と腹腔鏡を比較する新たな試験を考案した。

【対象および方法】
本試験は、13 の参加施設による多施設共同、非盲検の前向き第Ⅱ相試験である。対象は、術前診断で内視鏡的切除の適応とならない cStage I の胃癌初発例とした。選択基準および除外基準は、以下のとおりとする。
選択基準:①病理組織学的に胃の腺癌
②cStage IA(T1N0)または IB(T1N1, T2N0)
③幽門側胃切除術または幽門保存胃切除術で根治切除が可能
④年齢は 20 歳以上 80 歳以下 など除外基準:①活動性の重複癌を有する
②BMI:30 以上
③術中に胃全摘へ移行
④術後の病理診断で pStage II 以上と判明 など
症例数は、以前の研究の測定結果を元に計算した(術前と術後 6 カ月の筋肉量の差は、腹腔鏡群で 0.6 kg、開腹群で 1.6 kg、標準偏差を 2 kg、α エラー0.05、検出力 0.8、腹腔鏡群と開腹群の登録比を 2:1 と設定)。腹腔鏡群 96 例以上、開腹群 48 例以上が必要と算出され、除外例を考慮し腹腔鏡群 110 例、開腹群 55 例と設定した。
方法は、術前、術後 1、3、6、12 カ月で体組成の測定と血液検査を行った。体組成の測定には、参加各施設で同一機種の体組成計(TANITA DC-320)を用いたインピーダンス法による評価を行った。
主要評価項目は、術前と比較した術後 6 カ月での筋肉量の減少率とした。副次評価項目は、体組成に関しては、体重、筋肉量、脂肪量を、血液検査に関しては、リンパ球、ヘモグロビン、総蛋白、アルブミン、総コレステロール、トリグリセリド、カルシウム、鉄の測定を行った。安全性に関しては、手術時間、出血量、術後合併症の発現率、入院期間などを検討した。尚、本研究は、名大の IRB およびその他の 12 の参加施設の倫理委員会によって承認され、また UMIN の臨床試験登録システムにも登録 (UMIN000015196)された。

【結果】
2012 年 5 月から 2014 年 10 月の間に、165 人の患者が登録され、148 人(腹腔鏡群:96 人、開腹群:52 人)がデータ分析の対象となった(Fig. 1)。患者背景を Table. 1 にまとめた。両群間で年齢、性別、併存疾患、および術前 BMI に有意差はなかった。cStage ⅠB の割合は、腹腔鏡群より開腹群の方が高かった。
周術期の結果を Table. 2 に示した。D2 リンパ節郭清は、腹腔鏡群および開腹群でそれぞれ 15% と 30%で施行された。手術時間は腹腔鏡群で有意に長かったのに対し、術中の出血量は腹腔鏡群で有意に少なかった。両群間で郭清リンパ節個数に有意差はなかった。術後合併症率は同等で、入院期間も有意差はなかった。
腹腔鏡群と開腹群の間でベースラインの測定値に有意差は認めなかった(Table. 3)。術後の体組成と栄養指標の減少率は Table. 4 にまとめた。本研究の主要評価項目である術後 6 カ月での筋肉量の減少率は、両群間で同等であり(-3.72% および -3.40%、 P = 0.7657)、筋肉量は両群ともに同じようなレベルが 1 年間続いた(Fig. 2A)。一方で、体重は両群とも減少し続け(Fig. 2B)、体脂肪量も研究期間を通じて両群とも減少した (Fig. 2C)。術後 12 カ月間、体組成および血液検査の全ての数値に両群間で有意差は認められなかった(Table. 4)。

【考察】
体組成の維持は、栄養状態の代表的な指標の 1 つである。我々が以前報告した胃癌術後の体組成の結果から、腹腔鏡アプローチにより術後疼痛が軽減されると日常生活への早期復帰が促進され、結果として筋肉量が早期に回復するという仮説を立てた。ただし、先行研究では早期癌患者の多くが腹腔鏡手術を受けていたのに対し、開腹手術の多くは進行癌で術後補助化学療法を受けたというバイアスがあった。従って、本研究では cStage I の胃癌患者のみを対象にしたが、主要評価項目である術後 6 カ月の筋肉量を含め、筋肉量の経時的変化は両群ともほぼ横ばいだった。この理由として、硬膜外麻酔や鎮痛薬による適切な疼痛管理により両群の術後患者の活動に想定されていた差が生じなかった可能性があげられるが、先行研究で見られた差が背景因子の差を大きく反映していた可能性も考えられる。また、術後 1 か月以降の体重減少は、筋肉量に変化がほとんどなかったため、主因は脂肪量の減少であったと考えられる。
我々は以前、開腹と腹腔鏡の幽門側胃切除術後の QOL を比較するため、EORTC QLQ-C30 という質問票による多施設共同での評価を実施した。その結果、術後の食思不振はアプローチを問わず術後 1 カ月が最低で、その後は徐々に回復した。今回、術後 12 ヶ月以内の体組成に回復が見られなかったことから、食欲が比較的早期に回復したとしても、胃切除後の消化・吸収不良や摂食障害は 12 ヶ月以上続くと推察される。
腹腔鏡下幽門側胃切除術は、試験計画当時の胃癌治療ガイドラインでは研究的治療の位置づけであり、一部の施設では早期癌に対し日常診療として実施され、他の施設ではまだ導入されていないなどの施設間格差が顕著にあったため、ランダム化試験とするには困難な状況であった。これは、開腹群へより進行した癌の割合を高めた可能性があり、腹腔鏡群に有利に働く可能性のあるバイアスだったが、本研究では腹腔鏡のアプローチに期待されていた結果を証明することができなかった。今回の結果を受け、腹腔鏡が筋肉量の回復に有用であることを確認するためのランダム化比較試験は予定していない。今後は、本研究では検討しなかった迷走神経の温存や、プレアルブミン等のラピッドターンオーバープロテインの測定などが検討課題と考える。

【結語】
cStage I の胃癌患者に対して幽門側胃切除術を施行した術後 12 ヶ月間で、体組成と栄養状態は外科的アプローチの影響を受けなかった。

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