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大学・研究所にある論文を検索できる 「免疫グロブリンの静脈内投与は、敗血症による凝固障害因子を調節し、血清IgM濃度を増加させる:前向き単一施設介入研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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免疫グロブリンの静脈内投与は、敗血症による凝固障害因子を調節し、血清IgM濃度を増加させる:前向き単一施設介入研究

Ando, Yukihiro 神戸大学

2020.03.25

概要

【目的】
敗血症および敗血症による多臓器障害は、集中治療室(ICU)における死亡の主な原因であり、毎年 1900 万人以上が罹患している。敗血症に関連する高い死亡率を減らすために、さまざまな補助療法が行われており、本邦では静脈投与低用量免疫グロブリン G(IVIgG)の静脈内投与が敗血症患者の補助療法として広く使用されている。また欧米では、敗血症患者における IgM 含有 IVIgG の有効性がいくつか報告されている。しかし、IVIgG 療法の IgA や IgM など IgG 以外の免疫グロブリンに対する効果や抗凝固因子への効果は明らかではない。このためこの研究の目的は、敗血症患者において免疫グロブリン(IgG,M,A)および抗凝固因子に対するIVIgG の効果を明らかにすることである。

【方法】
この研究は神戸大学倫理委員会によって承認された(IRB No:190024)。2008 年 8 月から 2013 年 3 月にかけて、敗血症、重症敗血症、敗血症性ショック患者の単一施設観察研究を実施した。救急部または ICU に入院した患者は、患者またはその近親者から書面によるインフォームドコンセントを得た後、研究に登録された。除外基準は、18 歳未満、IVIgG および/または抗生物質に対するアレルギーの既往、肝障害、腎症、過去 6 週間の急性心筋梗塞または慢性心不全、固形癌に伴う術後感染、免疫抑制剤の使用、顆粒球減少症、であった。患者は IVIgG 投与群(血中免疫グロブリン G [IgG]濃度 <870 mg / dL;正常範囲より低 い)と非 IVIgG 投与群(血中 IgG 濃度≥870mg / dL)に分類した。IVIgG 群は、3 日間 IVIgG投与(1 日目:5 g、2 日目:2.5 g、3 日目:2.5 g)を行った。その後患者の年齢、性別、初期バイタルサイン、敗血症のタイプ(敗血症、重度の敗血症、敗血症性ショック)、感染源、カテコールアミン投与期間、人工呼吸器の使用、発熱期間、ICU 滞在期間、全身性炎症反応症候群(SIRS)スコア、播種性血管内凝固症候群(DIC)スコア、Sequential Organ Failure Assessment スコアを後ろ向きに抽出した。また入院 1,3,7 日目における血清 IgG、IgM、 IgA、total plasminogen activator inhibitor 1 (tPAI-1)、 活性化プロテイン C 濃度を、IVIgG 群と非 IVIgG 群とで比較検討した。

統計解析は SPSS16.0.2 を用い、 p <0.05 を統計的に有意とした。対応のない非正規の連続変数の 2 群間比較では Mann-Whitney U 検定を、2 群間の割合の比較ではカイ 2 乗検定を用い、P <0.05 を統計的に有意とした。さらに単変量ロジスティック回帰分析を実施して、結果に関連する交絡因子を解析した。

【結果】
IVIgG 群は 38 人(男性 20 人、女性 18 人)で、平均年齢 68.2±16.3 歳であった。非 IVIG群は 32 人(男性 21 人、女性 11 人)で、 平均年齢は 72.9±16.1 歳であった。IVIgG 投与群の患者は、1 日目よりも 4 日目と 7 日目に血清 IgM 濃度が有意に高かったが、非 IVIgG 群の患者では血清 IgM 濃度の有意な変化はなかった。IVIgG 投与群の患者は、1 日目よりも 4 日目と 7 日目の血清 tPAI-1 濃度が低く、1 日目と 4 日目と比較して 7 日目の血清活性化プロテイン C 濃度が増加した。非 IVIgG 群では tPAI-1 濃度または活性化プロテイン C濃度に有意差はなかった。

【考察】
この研究は、敗血症患者において、IVIgG 投与は敗血症患者の血清IgM 濃度を上昇させ、血清tPAI-1 および活性化プロテインC の濃度を低下させることを証明した最初の研究である。IVIgG 療法は死亡率を低下させなかったが、IVIgG がいくつかの免疫グロブリンの濃度を高め、敗血症による凝固障害や播種性血管内凝固(DIC)の発症を防ぐ可能性があることが、本研究より明らかになった。

現在の敗血症診療ガイドラインでは、IVIgG 療法は推奨されていないが、この治療法には、(ⅰ)オプソニン効果(ii)、補体活性化による溶菌作用、(iii)毒素・ウィルス中和作用、(iv)抗体依存性細胞障害作用、(v)抗菌薬感受性、(vi)抗サイトカイン機能、など様々な有効性が報告されている。

敗血症患者では、IgG の消費と血管からの漏出により、血清 IgG 濃度は基本的に低下する。しかし敗血症生存患者の血清 IgG 濃度は、IVIgG 投与後に非生存者の血清 IgG 濃度よりも有意に上昇することが報告されている。この研究では、IVIgG 製品中の IgM の量が 2.5±1.7 mg / dL と少量にもかかわらず、敗血症に対するIVIgG 治療により IgM の血清濃 度が増加した。 IVIgG 投与により血清 IgM 濃度が上昇する詳細なメカニズムは不明のだが、IVIgG 治療により、抗原抗体相互作用が改善され、末梢血管透過性亢進の程度が増加することで IgG の漏出が減少し、静脈内の IgM 濃度が上昇するのではないかと考えている。

本研究にはいくつかの limitation がある。それは、サンプルサイズが小さく単一のセンターで実施されたこと、 IVIgG が血清 IgG 濃度の低い患者に投与されたこと、敗血症性ショック患者の割合がIVIG 群で非IVIG 群と比較して高いこと、である。単変量ロジスティック回帰分析を実施したが、本研究では有意な要因は確認できなかった。敗血症患者における IVIgG の有効性を明らかにするために、さらなる研究が必要となる。

【結語】
敗血症患者における IVIgG の投与は、血清 IgM および活性化プロテイン C 濃度を増加させ、血清 tPAI-1 濃度を減少させた。このため IVIgG 療法は、敗血症による凝固障害および播種性血管内凝固の予防に応用できる可能性がある。

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