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大学・研究所にある論文を検索できる 「茨城県南地域における侵襲性アシネトバクター感染症の疫学調査」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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茨城県南地域における侵襲性アシネトバクター感染症の疫学調査

喜安, 嘉彦 筑波大学

2020.07.27

概要

目 的:
 Acinetobacter属は,分子生物学的手法による同定法が確立されるまで,正確に同定することが困難だった.このため,今までに報告されているAcinetobacter感染症の疫学調査は,不正確な菌株同定に基づいている可能性がある.本研究では,Acinetobacter感染症の特徴をより正確に調べるため,血液・髄液から検出したAcinetobacter属の菌種を分子生物学的手法で同定し,それに基づいて侵襲性Acinetobacter感染症の臨床像を解析した.また,Acinetobacter属の中でも分離頻度が高く,病原性も高いと報告されているAcinetobacter baumanniiについて,この菌による侵襲性感染症が患者の死亡と関連しているかどうかを調べた.

対象と方法:
 2001年7月1日から2014年12月31日までに茨城県南地域の4基幹病院で血液・髄液から検出した,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌940株を収集した.これらの菌株について,各施設での同定検査の結果に加え,blaOXA-51-like遺伝子の有無,16SrRNAおよびrpoB遺伝子の塩基配列解析から,Acinetobacter属かどうか,そうであればどの菌種かを調べた.また,各種抗菌薬の最小発育阻止濃度を微量液体希釈法で測定し,薬剤感受性を検査した.Acinetobacter属を分離した症例については,患者情報を調べ,菌種・患者背景・臨床情報に関連があるかどうかを解析した.

結果:
 Acinetobacter属を分離し,かつ患者情報を入手できたのは,154症例あった.分離菌の内訳は,Acinetobacter pittii 42株(27.9%),A. baumannii 40株(26.0%),Acinetobacter ursingii 20株(13.0%),Acinetobacter nosocomialis14株(9.1%)などで,15種(3株は菌種未命名)あった.これらの菌株の薬剤感受性は概ね良好だったが,A. baumanniiはそれ以外の菌株と比べ,ampicillin-sulbactam,cefepime,tetracycline,ciprofloxacinに感性の株が有意に少なかった.多剤耐性株はなかった.一次感染臓器は,原発性血流感染が134件(86.5%,うち128件が静脈内留置カテーテル使用中)と最も多く,次いで肺炎が10件(6.5%)だった.28病日の死亡率は13.6%だった.28病日死亡と関連する独立したリスク因子は,脳血管障害がある,腎機能障害がある,Pitt bacteremia scoreが高い,原発性血流感染でない,の4つだった.分離菌がA. baumanniiかどうか,分離菌が発症時に投与された抗菌薬に感性だったかどうかは,28病日死亡と有意な関連を認めなかった.

考 察:
 茨城県南地区の複数施設で約14年間に起こったAcinetobacter菌血症・髄膜炎の起因菌を分子生物学的手法で同定したところ,既報で分離頻度が高いA. baumanniiより,A. pittiiの方が多かった.これは,本研究が通常の同定検査ではAcinetobacter属かどうかも判定できなかった株を含めて菌名を再同定し直したためと考えた.また,多くの症例が原発性血流感染で,既報で多かった肺炎の症例は少なかった.本研究では一般病棟での症例が多く,人工呼吸器を装着していた患者が少なかったためと予想した.さらに,原因菌がA. baumanniiであること,および適切な抗菌薬が発症時に投与されたことは,28病日死亡と有意な関連がなく,Pitt bacteremia scoreが有意に関連していたことから,A. baumanniiと他のAcinetobacter属とでは患者の死亡に関わるような病原性の違いはなく,また全身状態が安定している患者では初期治療に薬剤耐性Acinetobacterを考慮して広域抗菌薬を使用する必要性は低い,と考えた.

結 論:
 侵襲性Acinetobacter感染症の原因菌を分子生物学的手法で正確に調べたところ,A. baumanniiよりA. pittiiが多かった.一次感染臓器は,多くが原発性血流感染だった.28病日死亡につながる独立したリスク因子は,脳血管障害・腎機能障害・Pitt bacteremia score,原発性血流感染でないこと,であり,A. baumanniiかどうか,適切な抗菌薬が発症時に投与されたかどうか,とは関連していなかった.

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