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大学・研究所にある論文を検索できる 「食生活支えるラクダのミルク:トウモロコシ料理で補う」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

食生活支えるラクダのミルク:トウモロコシ料理で補う

平田 昌弘 帯広畜産大学

2020.07.13

概要

食生活支えるラクダのミルク:トウモロコシ料理で
補う
著者
雑誌名


ページ
発行年
URL

平田 昌弘
デーリィマン
70
4
62-64
2020-04
http://id.nii.ac.jp/1588/00004656/

帯広畜産大学人間科学研究部門教授平田

昌弘

ヤギと羊は分娩 2日後から 3カ月ほど搾乳し
エチオピア東北部には暑く乾燥した低地が広がります。アフアールとよばれる大地で
す。本誌 2017年 9月号で、アファール北部の半農半牧民の食生活と乳製品利用を紹介

ます。乾期には搾乳が難しくなるそうです。
牛、ヤギ、羊のミルクはそのまま飲用すると

しました。今回はアファール中央部の遊牧民の食生活と乳製品利用を紹介します。そこ

ともに、自然発酵乳、バター、バターオイル、

はラクダのミルクに大きく依存した世界です。アファールの生き方は、乾燥した厳しい
環境でミルクが人々の生活をいかに支えてきたかを教えてくれます(写真 1)。(筆者)

バターミルクに加工します。詳 しくは、本誌
17年 9月号やミルクサイエンス誌 13年 1号
「エチオピア中高地における乳加工体系 Jを参

ことがある」とアファール
牧畜民は晴れやかに言いま

照してください。自然発酵乳、バターオイル、
バターミルクは穀物を用いた食事に利用され

す。驚くほどミルクに依存

ます。農耕にいっさい携わらず、乾燥した大

した生活です(写真 2)
。広

地を移動してきた民が、どのような食事を取
っていたので、しょうか。 とても興味深いもの

大な乾いた牧野を季節移動
する際、限られた穀物(ト

があります。

ウモロコシ)しか持ち運び、
ません。家畜のミルクが生

2日かけトウモロコシを下ごしらえ

命線なのです。
赤道に近いアファール
で、ラクダは周年繁殖が可
能です。雨が十分あり、野
生植物の生育が十分であれ

乾いた大地で雨の音を聞き、
雨の降る場所ヘ

アファール牧畜民が利用してきた穀物はト
ウモロコシです。小麦を利用し始めたのは、
旧社会主義時代中期の 1980年代だそうです。
本村から家族全員で季節移動に出る際、それ


、 1年を通じて搾乳できます。 1日の搾乳
回数は、雨期で 3、 4回、乾期で 1回です。

ぞれがトウモロコシを少量背負って出発しま
す。彼らにとってミルク以外の食事はトウモ

乾期でもミルクを出してくれるのはラクダだ

ロコシ料理なのです。

けです。ラクダは荷物を運び\時に食肉とな
ほどしかありません。アカシアなどの低木が
ポツポツとある程度で、乾期には野生草本は

ダを 200頭も所有する世帯があったそうで

アファール牧畜民が利用するトウモロコシ
は白色でデントコーンのように硬く、外側に
硬い皮が付いています。トウモロコシ料理は、

す。アファール牧畜民にとって、ラクダがど

この硬い皮を剥ぐことから始まります。ブト

干上がり、荒涼とした茶色の大地が続きます。
天水(てんすい、自然の降水)では農作物は栽

れほど大切かが分かります。
ラクダのミルクの利用で特徴的なのは、加

カと呼ばれる木臼にコーンを入れ、水を打ち
ながら、細長い玄武岩でついていきます(写

培することはできない乾燥地です。降水は雨

工を一切しないことです。生乳のまま飲むの

期の 7∼ 9月上旬が主で、 12∼ 2月
、 5∼

です。 2、 3日置いても自然発酵しないとい

真 3)
。何度も何度も繰り返すと、摩擦で少
しずつ皮が剥がれていきます。皮を剥し、だも

6月は乾期に当たり、雨はほとんど見込めま
せん。
他の時期はバラバラと小雨が降る程度です
が、アファール牧畜民は胸を張って言います。

2、 3カ月すれば雨は来る。雨があれば草
木は芽吹く 。われわれは雨の音を聞き、雨の
降る所へ行くのだ」と 。乾燥した大地で季節
移動しながら暮らすアファ ール牧畜民の生活
をよく言い当てています。農作物を栽培でき
ない乾燥地で生き抜くのですから、わずかな
降雨も重要であり、家畜こそが生きる手段と
なります。アファール牧畜民が飼養するのは
ラクダ、牛、羊、ヤギです。

います。ラクダのミルクは搾ったその場でみ

アファール中央部の年間降水量は 200mm

り、時に交換財にもなります。かつて、ラク

んなで飲み合います。親戚も他人も関係なく
分かち合い共有するもの、人間関係を構築す
るものなのです。
牛、ヤギ、羊も周年繁殖です。牛の搾乳

りません。
次に粉に していきます。エイハヤ−リニと
呼ばれる玄武岩でできたサドルカーン(すり

は分娩 3日後から始め、 6カ月ほど続きます。

臼)を用います(写真 4)
。皮を剥し、だコーン
を水に一晩漬けておき、エイハヤ ・リニで 2
回すりつぶします。 1回目はディグルと呼ば
れる組いひき割り状態に、 2回目でようやく
ぺースト状のオウンドゥルと呼ばれる状態に
なります(写真 5)
。こうした手数をかけて、
トウモロコシ料理の下ごしらえが完了です。
ここまで実に 2日かかります。

数カ月、ラクダのミルクだけで
喜らすことも

数カ月、ラクダのミルクだけで生活すでる

6
2


MA 2

のをボカと呼びます。少し割れることもあり
ますが、粉になったり小片に割れることはあ

トウモロコシを湯がき、
バターオイルをかけた f
ボカ j
写真 2

トウモロコシ料理の一つ目は、皮を剥し、だ

回すりつぶしたオウンドゥルをこねた生地
を、側方の石の板に張り付けていきます(写
真 8)
。底には置 き火が赤々と残っています。




h

f

ι

時晶

臼で硬い皮を取り外す

:..•



y


t



写真 6 湯がいたトウモロコシ(右下)。子ヤギの皮に

入れたバターオイルを垂らしている

生地を張り終わったら、上部に小枝を渡し、
その上から布を二重に重ね、さらに灰や砂を
かけて 覆います(写真 10)
。余熱でパンを焼
くのです。30∼40分ほどで、トワモロコシ
パン「ヌーフィエJの出来上がりです。
でき立てのパンはサクサクしておいしいも
のです。 トウモロコシパンはモチモチ感もあ
り、特別な食感です。ヌーフィエを適当な大
きさにちぎり、ヤシの葉で編んだザルに盛り、
発酵バターミルク、バターオイル、粉トウガ
ラシを混ぜたソースを添えます。この組み合

硬い皮を取り外したトウモロコシ

わせがヌーフィエ ・ガンボと呼ばれる 、パン
の料理です( 64

−写真 1
1)
。乳製品はやはり
欠かせません。甘酸っぱし、バターミルクがよ
写真 7



取り外した皮を風選してより分ける
写真 3

トウモロコシの利用法

ボカを湯がいた料理です。湯がし、たトウモロ
コシに塩、自然発酵乳とバターオイルを掛け

トウモロコシのおかゆ。自然発酵乳とバター
オイルが掛けられている

コーンの官みとバターミルクの
酸つばさが調和したおかゆ

気候変動で家畜が激減
貨幣を重視する価値観ヘ変化
ラクダのミルクを飲み、トウモロコシ料理

次におかゆを紹介します。 2回すりつぶ

を補助的に食べて暮 らしてきたアファール牧

したオウンドワルを水に溶かし加熱します。
フツフツと沸騰してきたら、木の棒で、練っ

て、混ぜ合わせて食べます。この料理もボカ
と呼びます。穀物料理で、
あっても、乳製品が

付け上から発酵したバターミルクとバター

活躍します。バターオイルは子ヤギの皮の中
に入れて保存し、使う時に手軽に利用できる

オイルを掛けます。このトウモロコシがゆ
をブッティ・ダロといいます(写真 7)
。ブ

ようになっています(写真 6)
。子ヤギの皮の
中に入れて保存しておくと、バターオイルが

ッティ・ダロは、牛もしくはヤギの生乳と
一緒に頂きます。牛やヤギから搾乳できな
しE乾期にはっくりません。

悪くならないのだそうです。

く合います。

て練って練り続けます。皿に無造作に盛り

昧わいは甘酸っぱく、コーンの甘みと粒
感、バターオイルのまろやかさ 、発酵バタ
ーミルクの酸っぱさがとても良く調和した
食べ物です。

写真 8 パンを焼くかまど。地面を利用する。加熱し

終えたかまどに生地を張り付けている

地申に穴を掘ったかまと、
で、
どこでも焼けるパン
トウモロコシでパンもっくります。遊牧
の民である彼らはどのようにパンを焼くの
でしょうか。
まず地中に縦・横 30cm、深さ 40cm
写真 9 かまどをまきで約 1時間加熱する



ほどの穴を掘ります。大きな石の板を側面
に張り付けます。これが、かまどになりま
す(写真 8)
。かまどのことをヌーフィエ ・
ボドーと呼びます。直訳すれば「パンの穴 J
という意味です。ヌーフィエ・ボドーは移
動した先でいつでもつくれるので、どこで

−−

もパンを焼けることになります。現在、定
住した世帯では鉄製の筒を用いてかまどを
つくるようになりました。
ヌーフィエ・ボドーにたっぷりの木の枝
写真 5 2回目の製粉作業。相いペース卜状となる

を投入します。火を付けて 1時間ほど加熱
します(写真 9)
。かまどが暖まったら、 2

写真 10 かまどの上から布で覆い、灰と砂を上からか

ぶせ、余熱でパンを焼き上げる

6
3

111

1回目のトウモロコシ製粉作業。ひき割リ状態と
なる

1oil 111Illi − − Illit 1 1

写真 4

し、ます。
アファール牧畜民にとって、
かつて家畜は飼うこと自体に価
値がありました。ラクダのミル

かつての、雨の音を聞き、家族全員で移

クは共同体内で分け合い共に飲
むもので、売却するのはタブー
でしたが、 3年ほど前から換金

動し、ラクダのミルクを腹いっぱし、飲み続け
て暮らした日々は、過去のものになりつつあ
るのです。

材となってしまいました。貨幣
こそが重要で、
、それをいかに多

地球温暖化の主な原因は、先進諸国が排出

く獲得するかとしづ価値観へと

する二酸化炭素であるとよく指摘されます。
私たちは、石油燃料をふんだんに使い、快適

徐々に変わってきたのです。

な生活を日々享受しています。その影響は、

村の中心部に定住し、季節移
動しない人々も多くなりまし
た。家畜が激減したことで、ミ

こうした乾燥地で極限の生活を送る人々に、
より顕著に出ているのです。
アファール牧畜民のような気候変動に苦し

畜民。彼らの生業や食生活が大きく変わろう

| ルクも年中は飲めなくなっています。パンの

んでいる人々が地球上にいることを感じなが

としています。
近年の気候変動により雨が降らなくなって

| 付け合わせが、乳製品からシロと呼ばれる豆

ら、私たちは家畜の飼い方や生活を見直して
いきたいものです。

写真 1
1 焼き上がったトウモロコシパン(左)に添えられたソース

| のペーストに置き換わっていたりしています。

きたのです。雨を求めて移動してきた彼らに
とって死活問題で、
す。少雨により野生植物(飼
料資源)の生育が悪くなり、家畜は近年、急

プロフィル

激に減っています。病気や害獣などが原因で、

ひらた まさひろ
1967年生まれ、福井県出身。91年東北大学農学部卒業、 93年東京大
学大学院農学系研究科修士課程修了、 98年京都大学大学院農学研究科

ラクダを全て失った牧畜民もいます。
エチオピアでは 1991年の民主化に伴い市
場経済が導入されました。街の店には、野菜

博士後期課程研究指導認定。京都大学東南アジア研究所研究員などを
経て 2004年帯広畜産大学畜産科学科助教授、 07年准教授、 17年人間
科学研究部門准教授、 18年 4月から現職。 1993∼ 96年青年海外協力
隊としてシリアで活動。農学博士(京都大学)

や穀物類などの食料品、携帯電話に加え、チ
ヤツト(ニシキギ科アラビアチャノキの若葉
で、ドラッグの一種。アルカロイドを含み覚
醒作用がある)など魅力的な商品があふれで

e
輔 ショーリングへの道レジエンドたちのテクニック
..,
.
.
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.
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.
.



ショーリングへの道
レジ、エンドたちのテクニック

5年に l度の酪農の祭典、全日本ホルスタイン共進会(全共)。
本書は、全共で好成績を収めてきたレジエンド、ベテラン出品者たち
のインタビューや座談会を交え、よりよい牛のコンディション作り、審
査基準に沿ったリーディングなどの基本技術等を平易に紹介します。
2
0
2
0年の第 1
5回全共九州・沖縄ブロック大会に向け、ぜひとも手に
取って頂きたい一冊です。
【主な内容】

座談会/インタビュー
‘・座談会
・インタビュー
松島喜ーさん山内
誠さん
松原秀雄さん吉田智貴さん
高橋直人さん佐藤孝ーさん
栗城一憲さん渡辺雄大さん

「乳牛の見方」(雌牛体型審査・線形評価法)

「リーディングの実際 J/
「毛刈りのポイントとその実際」/
「乳牛の個体写真撮影」/他

B5=
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J 1

定価本体価格 2
,
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0円 + 税

|一図書のお申し込みは下記までー

記北海道協同組合通信社
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管理部

FAX 0
1
1(
2
7
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