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書き出し

小学校で栽培したジャガイモによるソラニン類の食中毒について

荻原, 弥生 小野, 辰哉 信州大学

2023.08.22

概要

Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023

   小学校で栽培したジャガイモによるソラニン類の食中毒について
02-1
荻原弥生、小野辰哉(長野県長野保健福祉事務所)
キーワード:ジャガイモ、植物性自然毒、ソラニン類、食中毒、小学校

要旨:ジャガイモは、植物性自然毒であるソラニン類(α-ソラニンおよびα-チャコニン)を含み、
その芽や皮層部、緑色になった部分および未熟なものには特に多く含まれるため、このような部分を
多く摂取すると食中毒となることは広く知られている。しかしながら、学校で栽培する野菜として選
択されやすく、ソラニン類による食中毒は、学校現場で多く発生している。令和4年7月に管内小学
校において、栽培したジャガイモを原因としたソラニン類による食中毒事件が発生したため、その概
要と今後の検討課題について報告する。
1 事件の概要

※1 芽かきとは、太い芽を2~4本ほど残して他の

 令和4年7月 21 日、管内H小学校(以下、
「当

芽を抜き取る作業で、未熟なものが育たないため

該校」という。)から「本校の畑で栽培したジャ

ジャガイモを大きく育てることができる。1)

ガイモを児童等が喫食したところ、30 分後くら

※2 土寄せとは、ジャガイモが地面の外に出ないよ

いから数十名が嘔吐、吐き気、腹痛等の症状を

うにうね土を盛り上げ、ジャガイモの緑化を防ぐ

呈している。」との連絡を受け、調査を開始した。

作業のことである。1)

 調査の結果、患者の共通食は、授業の一環で栽
培・調理した茹でジャガイモのみであり、患者

 担当教員に聴取したところ、「芽かきを行った

の症状がソラニン類によるものと一致したこと

際に芽を多く残してしまっていた。」
「収穫時にジ

から、茹でジャガイモを原因とするソラニン類

ャガイモが浅いところにあったので土寄せが不

による食中毒と断定した。喫食者は 98 名、発症

十分であったかもしれない。」とのことであった。

者は 46 名、潜伏時間は 20 ~ 150 分(平均 73 分)、

また、じゃがいもを保管していた場所は、直射

主な症状は吐き気(64%)
、腹痛(38%)、嘔吐

日光こそ当たらないが、完全な暗所ではなかっ

(29%)であった。

た。担当教員らは、ジャガイモの芽や緑化した
ものには、ソラニン類が含まれることを認識し

2 原因食品の『茹でジャガイモ』について

ており、調理前洗浄の際には目視確認で緑化し

(1)ジャガイモの栽培から喫食までの経過

たものを除去していたが、未熟なジャガイモに

 ジャガイモは、当該校の2年生3クラスの担

ついてのソラニン類のリスクや暗所保管の必要

当教員および児童が、クラスごとに学校内の畑

性については認識していなかった。

で栽培したものであった。担当教員はジャガイ

 なお、担当教員らが使用した参考図書には、芽

モの栽培経験がないかまたは経験が非常に浅か

かきおよび土寄せの解説箇所にソラニン類につ

ったため、事前に参考図書を読み、栽培にあた

いての記載があったが、保管方法についての記

っていた。栽培から喫食までの流れは次のとお

載はなかった。

りである。

(2)検査結果

4月下旬 種イモの植え付け

 茹でジャガイモの残品について、長野県環境

5月下旬 1回目の芽かき※1

保全研究所において検査した結果を表1に示す。

6月上旬 2回目の芽かき、土寄せ※2
7月中旬 収穫→保管→ 7月 21 日 調理・喫食

34

信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. 1, August 2023

クイン種を選択したこと
(2) 検査結果
Shinshu
Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023
茹でジャガイモの残品について、長野県環



境保全研究所において検査した結果を表1に

考察
ジャガイモは比較的簡単に栽培でき、調理が簡

示す。

単なため、学校で栽培されることが多いが、食中
 しかしながら、本事例において担当教員らが

表1 ソラニン類の検査結果

毒を防ぐためには、栽培から喫食まで複数の過程
使用した参考図書には、ソラニン類を増やさな

において注意が必要である。

検査項目

いための栽培上の注意点は書かれているものの、

α-ソラニン

α-チャコニン

検出された

しかしながら、本事例において担当教員らが使
保管方法についての記載はなかった。一方、農

(㎎/㎏)

(㎎/㎏)

ソラニン類の計

用した参考図書には、ソラニン類を増やさないた
林水産省のホームページでは、ソラニン類を増



90

170

260

めの栽培上の注意点は書かれているものの、保管
やさないための注意点が動画やリーフレットに



140

240

380

て細かく示されているが、当該校の担当教員は
方法についての記載はなかった。一方、農林水産



210

340

550

これらを見ていなかった。
省のホームページでは、ソラニン類を増やさない

検体名

ソラニン類を体重1㎏あたり1㎎以上摂取す

 ソラニン類の食中毒は学校で多く発生してい
ための注意点が動画やリーフレットにて細かく示

ると中毒様症状が出る可能性があるとされてい

されているが、当該校の担当教員はこれらを見て

る。患者からの聞き取りによると、多くの患者
る。患者からの聞き取りによると、多くの患者が

いなかった。

ることから、学校現場への周知方法について再

 ソラニン類を体重1㎏あたり1㎎以上摂取す

考が必要である。今年度より長野県では食の安

ると中毒様症状が出る可能性があるとされてい

全子ども教室が開始され、小学校との交流もあ

ソラニン類の食中毒は学校で多く発生している

が中2個を含む合計3個以上を喫食していた。
中2個を含む合計3個以上を喫食していた。中

ることから、このような機会を捉えて啓発等を


(平均重量0.026
0.026㎏)2個と小(平均重量
㎏)
2個と小
(平均重量 0.012
(平均重量
0.012

ことから、学校現場への周知方法について再考が
実施していきたい。

㎏)1個を喫食したと仮定すると、ソラニン類
㎏)1個を喫食したと仮定すると、ソラニン類

必要である。今年度より長野県では食の安全子ど

は26
26 ㎎(中
㎎(中 22 個×0.026kg×380
個× 0.026kg × 380㎎/kg+小1個
㎎ /kg +小1


も教室が開始され、小学校との交流もあることか
農林水産省:ソラニンやチャコニンによる健康影
1)

個× 0.012kg × 550
㎎ /kg)となる。小学2年生
×0.012kg×550
㎎/kg)となる。小学2年生の

響(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/
ら、このような機会を捉えて啓発等を実施してい
solanine/kenkou/kenkou.html)
きたい。

の平均体重(男子:24.9kg、女子:23.9kg)を考

平均体重(男子:24.9kg、女子:23.9kg)を考

慮すると、じゃがいもの喫食量によっては、合

慮すると、じゃがいもの喫食量によっては、合

計のソラニン類が 1 ㎎/体重1㎏を超えて中毒

1) 農林水産省:ソラニンやチャコニンによる健

計のソラニン類が 1 ㎎/体重1㎏を超えて中毒
量に達したことが推測された。

量に達したことが推測された。

康影響

3 事件発生の原因

(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisak
u/solanine/kenkou/kenkou.html)

3  発生要因として、以下が推察されたが、いず
事件発生の原因
発生要因として、以下が推察されたが、いずれ
れか一つのみを原因として特定することはでき
ず、これら複数の要因が重なり、中毒量に達し、
か一つのみを原因として特定することはできず、
本事例が発生したと考えられた。
これら複数の要因が重なり、中毒量に達し、本事
1)芽かきが不十分で、未熟なジャガイモがで

例が発生したと考えられた。
きてしまったこと

1)芽かきが不十分で、未熟なジャガイモができ

2)収穫後6~9日間、不完全暗所で保管され

てしまったこと

たためにソラニン類が増えてしまったこと

3)皮ごと喫食したこと
4)他品種に比べてソラニン類ができやすいメ
ークイン種を選択したこと
4 考察
 ジャガイモは比較的簡単に栽培でき、調理が簡
単なため、学校で栽培されることが多いが、食
中毒を防ぐためには、栽培から喫食まで複数の
過程において注意が必要である。
35

信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. ...

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