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The effects of Y-27632 on pial microvessels during global brain ischemia and reperfusion in rabbits

新谷 則之 山梨大学 DOI:info:doi/10.34429/00005024

2021.03.23

概要

【研究の目的】
Rho-kinase は、粘着力、形態、増殖と運動性、更には平滑筋収縮といった多くの細胞機能に影響を与える。くも膜下出血後の脳虚血に対し臨床利用されている Rho-kinase 阻害薬であるファスジル®は脳血流を改善させると言われている。Y-27632 も Rho-kinase 阻害薬であり、通常の基底細動脈と脳軟膜細動脈を拡大すると言われている。

プロポフォールは一般的に頻用されている麻酔薬であり、循環抑制による脳血流低下とそれに伴う脳代謝の抑制が起こるが、脳軟膜血管には影響を与えないと言われる。我々は以前の研究で、脳軟膜血管はプロポフォール麻酔下での脳虚血・再灌流時には、一過性の脳血管拡張の後、持続的な脳血管収縮が起こることを報告している。脳血管の持続的な収縮は、脳傷害をさらに悪化させる。Rho キナーゼ阻害薬の Y-27632 は、脳血管拡張作用を有することから、脳虚血・再灌流後の持続的な血管収縮を抑制することで脳傷害を軽減させることが期待される。今回我々は、Rho-kinase 阻害薬である Y-27632 を用いることにより、全脳虚血・再灌流時でも脳血管が拡張し脳血流を改善させうるか検討するために実験を行った。

本研究では、ウサギでの全脳虚血・再灌流時において、人工髄液のみを投与する群(コントロール群)Y-27632 を全脳虚血前に投与する群(前投与群)、Y-27632 を脳虚血前より再灌流時まで持続的に投与する群(持続投与群)、Y-27632 を脳虚血後の再灌流時より投与する群(後投与群)において、脳虚血再灌流後の脳軟膜動静脈径の変化を検討した。

【方法】
日本白ウサギを使用した。耳の静脈より静脈路を確保し、プロポフォール麻酔下に気管切開を行い空気と酸素下に人工呼吸管理した。大腿動脈より動脈路を確保し、動脈圧測定と動脈血ガスのサンプリングを行った。開頭し、クラニアルウインドウを作成した。クラニアルウインドウ内に 3 本のカテーテルを接続し、1 本は人工髄液注入用、1 本は排液用、1 本は Y-27632 注入用とした。次に開胸を行い、左鎖骨下動脈、左総頚動脈、右腕頭動脈を同定し、この 3 本の動脈を 15 分間遮断することで全脳虚血モデルを作成した。

コントロール群では、人工髄液を持続投与した。前投与群では、Y-27632 を脳虚血開始 30 分前より脳虚血開始まで投与し、その後は人工髄液を投与した。持続投与群では、脳虚血開始 30 分前より再灌流後 120 分まで投与した。全脳虚血後投与群では、脳虚血開始 10 分後より再灌流後 120 分まで投与した。
脳軟膜動静脈径は、KEYENCE VH analyzer で計測した。動脈圧測定、動脈血ガスサンプリングと脳軟膜動静脈の計測は、虚血前、虚血中 10 分、虚血後 5 分、10 分、20 分、40 分、60 分、80 分、100分、120 分に行った。

【結果】
持続投与群を除いて、全脳虚血後に平均動脈圧と血糖は有意に増加した。
全脳虚血前には、Y-27632 を投与した前投与群と持続投与群で脳軟膜動脈において、太い(≧70µm)動脈で 18-19%、細い動脈(<70µm)で 25-29%の有意な拡張が認められた。
全脳虚血時には、コントロール群と後投与群で脳軟膜動脈の収縮が認められた。一方、前投与群と持続投与群では、虚血前に拡張した脳軟膜動脈は元の径に戻った。
全脳虚血後再灌流時には、コントロール群では有意な脳軟膜動脈の収縮が認められた。前投与群では、脳軟膜動脈は一過性の拡張後元の径に戻った。持続投与群と後投与群においては、脳軟膜動脈に有意な拡張が認められた。
全経過を通じて、脳軟膜静脈径は有意な変化を示さなかった。

【考察】
平滑筋収縮は通常、細胞内 Ca2+濃度によって調停される。細胞内でカルモジュリン・Ca2+複合体が増加し、ミオシン軽鎖キナーゼを活性化しミオシン軽鎖をリン酸化する。リン酸化されたミオシン軽鎖は平滑筋収縮を誘発する。また、ミオシン軽鎖ホスファターゼがリン酸化ミオシン軽鎖を脱リン酸化させ平滑筋を弛緩させる。平滑筋の収縮・拡張は、ミオシン軽鎖キナーゼ活性とミオシン軽鎖ホスファターゼ活性のバランスに依存する。Rho-キナーゼは、ミオシン軽鎖ホスファターゼを不活性化することにより平滑筋を収縮させる。本研究では、Y-27632(Rho-キナーゼ阻害薬)が脳軟膜細動脈を有意に拡大したが、静脈に対しては有意な影響を与えなかった。

Y-27632 の脳虚血前投与でも脳軟膜動脈は拡張したが、投与中止後にその効果は減弱した。持続投与では再灌流後 120 分間脳軟膜動脈は有意に拡張した。脳軟膜動脈は脳虚血後投与群においても再灌流時に拡張を認めた。実臨床においても、脳虚血が疑われた後からでも Y-27632 投与することにより脳虚血に対し効果があると思われる。

この研究のリミテーションは、Y-27632 が静脈内投与でなく脳軟膜への直接投与であること、実際にどれくらい吸収されているか測定していないこと、脳血流自体を測定していないことがあげられる。

【結論】
Y-27632 は全脳虚血後再灌流時に脳軟膜動脈を拡張させたが、軟膜静脈は拡張させなかった。 Y-27632 の虚血前投与は、再灌流時の脳血管を拡張させなかった。Y-27632 の持続投与により再灌流時の脳血管収縮は解除され、血圧の上昇や血糖の上昇が抑制されることから有効と考えられる。
Y-27632 の全脳虚血後投与でも、脳虚血・再灌流時の脳血管収縮の抑制には、十分な効果か期待できると思われる。Y-27632 は、全脳虚血後再灌流時に細動脈血管収縮を抑制することにより、脳虚血からの回復に寄与する可能性がある。

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