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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on intestinal absorption and skin-improving effects of dietary sphingolipids」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on intestinal absorption and skin-improving effects of dietary sphingolipids

Ohta, Kazushi 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23940

2022.03.23

概要

スフィンゴ脂質は長鎖アミノアルコールのスフィンゴイド塩基を共通の構成要素として含む脂質群の総称であり、真核生物では生体膜を形成する主要な脂質成分として普遍的に存在する。一方で、スフィンゴイド塩基の化学構造については、生物種によって極めて多様であることも知られている。スフィンゴ脂質は、日常的に摂取されている食品成分であるにもかかわらず、体内で合成され、欠乏症状も確認されていないことから、栄養学的には重要視されてこなかった。近年、スフィンゴ脂質の摂取による大腸がん予防効果や脂質異常症の改善効果、皮膚改善効果が見出されてきており、その食品機能性が注目されてきているが、消化管吸収や代謝、体内分布などの生体利用特性についての知見は十分には得られていない。このような背景のもと、本論文は、経口摂取されたスフィンゴ脂質の消化管吸収機構と血中動態、さらに皮膚への影響を解明し、スフィンゴ脂質の食品機能性の理解につなげることを目的としたものである。本論文の内容は以下のように要約される。

1. これまでに遊離セラミドの消化管吸収については評価されていなかった。本論文では、新たに開発された醬油粕から調製された遊離セラミド(醬油粕由来セラミド)を用いて、スフィンゴ脂質の消化管吸収について調べ、コメ由来グルコシルセラミドと比較した。マウスに醬油粕由来セラミドまたはコメ由来グルコシルセラミドを単回経口投与したところ、投与したものと同じ化学構造のセラミドやグルコシルセラミドが、経口投与後の血漿から検出された。さらに、コメ由来グルコシルセラミド投与後の血漿から分解物と考えられるセラミドが検出された。以上の結果から、経口投与したセラミドおよびグルコシルセラミドの一部は、消化されずに直接吸収される可能性が示された。

2. これまでにグルコシルセラミドやスフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質の経口摂取による皮膚バリア機能改善効果が確認されている。そこで新規素材として食品分野での有効活用が期待される醬油粕由来セラミドについて、ヘアレスマウスの皮膚への影響を評価し、皮膚バリア機能改善効果が報告されているトウモロコシ由来グルコシルセラミドと比較した。0.1 % 醤油粕由来セラミドまたは0.1%トウモロコシ由来グルコシルセラミド配合食をヘアレスマウスに 2 週間自由摂食させ、経皮水分蒸散量、角層水分量、粘弾性などの皮膚性状を測定した。その結果、醤油粕由来セラミド摂取群の経皮水分蒸散量がコントロール群に比べて有意に低下し、皮膚バリア機能の向上が確認された。この効果は、トウモロコシ由来グルコシルセラミド摂取群と比較して同等以上であった。また、醤油粕由来セラミド摂取群では、皮膚におけるセラミド合成酵素4 やインボルクリンの mRNA 発現量が有意に減少した。表皮に含まれるセラミド量については、一部の分子種で有意な増加が認められたが、摂取したスフィンゴ脂質に由来するセラミド分子種は検出されなかった。以上の結果から、醤油粕由来セラミドの経口摂取による皮膚バリア機能向上作用が示され、間接的な作用メカニズムで効果を発揮することが示唆された。

3. ヒトにおけるコメ由来グルコシルセラミドの吸収について調べるために、経口投与したヒト血清に含まれるスフィンゴ脂質の経時変化について評価した。被験者 7名(男性、 20~59 歳)を対象に、1.8 mgまたは150 mgのコメ由来グルコシルセラミドを経口投与し、摂取前および摂取30~360分後の血清に含まれるスフィンゴ脂質を定量分析した。摂取後の血清から、摂取したものと同じ化学構造のグルコシルセラミドは検出されなかったが、炭素鎖長22未満の脂肪酸から構成されるモノヘキソシルセラミド分子種が、摂取後に有意な増加を示した。さらに鎖長22以上の脂肪酸から構成されるセラミド分子種が摂取後に有意な減少を示した。また、180 mg投与の場合、スフィンゴシン-1リン酸およびスフィンガジエニン-1リン酸が有意に増加した。以上の結果から、経口摂取されたグルコシルセラミドは消化および代謝されることで、スフィンガジエニン-1リン酸として血中に移行する可能性が示唆された。また、グルコシルセラミド摂取によって、内因性スフィンゴ脂質代謝が変動する可能性が示された。4. 食品成分として、消化管で生じるいくつかの遊離スフィンゴイド塩基に注目し、腸管上皮細胞におけるスフィンゴイド塩基と相互作用を示すタンパク質分子を探索した。スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニンをそれぞれ固定化した磁性ナノビーズを調製し、腸管上皮様に分化させたCaco-2細胞の破砕液からスフィンゴイド塩基との結合を示すタンパク質を分離した。得られたタンパク質については、スフィンゴイド塩基の構造による違いは認められなかった。MALDI-MS を用いて得られたタンパク質分子を同定したところ、オリゴ糖転移酵素複合体サブユニットのリボホリン1や、ミトコンドリア膜タンパク質などの複数のタンパク質が見出された。さらに、ウエスタンブロッティング法によって、得られたタンパク質の同定が正しいことを確認した。

以上のように、本論文は食品成分としてのスフィンゴ脂質の消化管吸収と皮膚に対する効果に関する新たな知見と、スフィンゴイド塩基の生理的な意義と生体内での作用メカニズムに関わると考えられる候補分子を見出したものであり、今後のスフィンゴ脂質研究に大きく貢献するものといえる。

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