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書き出し

バイオマス発酵ガスが植物の成長に及ぼす影響の解明

高橋, 伸英 信州大学

2020.03.12

概要

2版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
平成 30 年

6 月 23 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 基盤研究(C)(特設分野研究)
研究期間: 2015 ∼ 2017
課題番号: 15KT0117
研究課題名(和文)バイオマス発酵ガスが植物の成長に及ぼす影響の解明

研究課題名(英文)Influence of gases produced from aerobic fermentation of biomass on plant growth

研究代表者
高橋 伸英(TAKAHASHI, Nobuhide)
信州大学・学術研究院繊維学系・教授

研究者番号:40377651
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

3,800,000 円

研究成果の概要(和文):本研究はバイオマスを微生物により好気的に発酵させ、生成する二酸化炭素やその他
の揮発成分をハウス等の施設栽培で植物に供給し、作物収量の著しい増大を実現できる栽培技術の確立を目指し
ている。カラマツに発酵鶏糞と微生物供給剤を混合し酸素存在下で発酵させ、発酵ガスをシロイヌナズナに供給
することにより、成長が著しく促進することを見出した。また、その効果は微生物の種類により異なり、CO2以
外の揮発成分が成長促進に寄与していることが示唆された。

研究成果の概要(英文):This study aims at establishment of technology for greatly promoting plant
growth in greenhouses by supplying gases including CO2 and other volatile substances produced from
aerobic fermentation of biomass.
This study demonstrated that the growth of Arabidopsis thaliana seedlings was significantly promoted
by the gases produced from aerobic fermentation of Larch shavings mixed with the fermented chiken
manure and some microorganism sources. Also, it has been found that the growth-promoting effect
depends upon the kind of microorganism source used, and it was indicated that volatile substances
other than CO2 contributed to the plant growth promotion.

研究分野: 環境工学, 化学工学
キーワード: バイオマスの好気性発酵 発酵ガスによる植物成長促進 発酵ガス中のアンモニア抑制





C-19、F-19-1、Z-19、CK-19(共通)

1.研究開始当初の背景
世界人口の増加に伴い食料不足が危惧さ
れている。日本においても、食料自給の観点
から、食料を効率よく生産するシステムを確
立することが求められている。特に日本は国
土が狭く、その中でも中山間地は広い耕地の
確保が困難である。また、冬季の収量低下等
の問題を抱えており、狭い農地でも周年で収
量を劇的に増大する画期的な技術が求めら
れている。
その手段として、寒冷地における暖房を使
用したハウス栽培が代表的である。しかし、
ハウス暖房の熱源には石油系燃料が一般的
に用いられており、燃料コストが生産コスト
に占める割合が大きく、農家の経営を圧迫し
ている。また、高度に環境条件を制御した施
設栽培技術も研究・開発されているが、高度
な環境制御技術は生産コストをさらに押し
上げることが予想される。また、二酸化炭素
を高濃度化し植物成長を促進するいわゆる
CO2 施肥についても近年広く知られ、実際の
栽培にも使用されており、化石燃料の燃焼や
ボンベからの供給が行われているが、前者は
環境問題につながり、後者は高コストという
課題がある。
そこで、本研究代表者は再生可能資源であ
るバイオマスを微生物により好気的に発酵
させ、発酵熱および生成する CO2 をハウス栽
培に利用することを提案し、研究を行ってき
た。発酵に注目した理由は、バイオマスを燃
焼させる際に必須となる乾燥工程が不要で
あること、発熱の長期持続性、発酵後の残渣
は堆肥として利用可能である、など、多くの
利点が期待できるためである。
発酵速度はバイオマス原料の性質に大き
く依存する。日本には未利用の木質系バイオ
マスが多く存在するため、これまでの研究で
は主に木質系バイオマスを対象としてきた。
しかし、炭素/窒素比(以降、C/N 比)が高く
微生物の増殖に必要な窒素が不足している。
そのため、別途高窒素含有量の副資材を添加
する必要がある。
一方、野菜栽培後の非可食部残渣の処理コ
ストの削減、有効利用が求められている。本
研究では野菜栽培残渣を発酵原料として利
用することも提案する。しかし、野菜栽培残
渣は木質系バイオマスとは異なり、元来 C/N
比が小さく、別途窒素供給源を添加する必要
はないが、窒素が過剰にあるため、発酵時に
植物に有害なアンモニアが生成する可能性
がある。さらに、含水率が高く嫌気的になる
傾向があるため、含水率調整用におがくずや
籾殻など低含水率の副資材と混合する必要
がある。このように、異なるバイオマス種類
の発酵挙動を把握し、それぞれに適した副資
材の添加、処理が必要である。
さらに、近年、CO2 以外に微生物発酵によ
り生成されるアセトイン、2,3 ブタンジオー
ルなどの揮発成分が植物の成長を促進する
という報告もある。CO2 施肥に加え、これら

の揮発成分を人為的に施用できるようにな
れば、さらなる作物収量の増大が可能になる
と期待される。しかし、木質バイオマスから
それらの揮発成分が生成したという報告は
ない。バイオマスの種類や微生物と生成する
揮発成分の関係、および、その植物への影響
についてはまだ不明な点が多い。
2.研究の目的
本研究はバイオマス資源循環型の食料生
産システムの中核技術として、廃棄物系バイ
オマスから、微生物発酵により熱と二酸化炭
素、あるいはその他の有用成分を取り出し、
それらをハウス等の施設栽培で利用し、作物
収量の著しい増大を実現できる栽培技術の
確立を目指している。その中でも、特に、バ
イオマスの発酵により生じる二酸化炭素を
含む発酵生成ガスの供給が植物の成長に与
える影響を明らかにすることを研究目的と
して掲げる。
上記の目的を達成するために、具体的には
以下の項目を調査、検討する。
1) 木質バイオマスの好気性発酵において、最
適な窒素源を明らかにするとともに、木質バ
イオマスの発酵挙動を把握する。
2) 野菜栽培残渣の発酵挙動および発酵生成
ガスの組成を把握する。アンモニアの生成が
認められる場合には、その発生抑制、除去技
術を探索する。
3) バイオマスの発酵による生成ガスが植物
の成長に与える影響を明らかにする。微生物
の種類による成長促進効果への影響を明ら
かにする。生成ガス中の成分を明らかにし、
特に、CO2 以外の揮発成分の成長促進効果の
有無について調査する。
3.研究の方法
(1) 木質バイオマスの発酵挙動と窒素供給源
の探索
木質バイオマス原料として長野県に豊富
に存在するカラマツを対象とした。微生物発
酵に適した C/N 比に調整するためには窒素供
給源の添加が必要である。そこで複数の窒素
供給源を用いて発酵実験を行い、最適な窒素
供給源を探索した。本研究では、窒素供給源
として発酵鶏糞、硫酸アンモニウム、尿素を
使用した。
図 1 に発酵実験装置の概略を示す。2 L の
アルミ製反応容器内にカラマツのかんなく
ず、窒素供給源、および、微生物供給剤を混
合し充填した。C/N 比が 16 となるように各窒
素源の添加量を調整した。発酵槽内の試料含
水率は 60%(湿量基準)に調整した。また、
微生物供給剤としてカビや酵母、バチルス菌
を含む VS34(ブイエス科工)を添加した。
反応器内の試料温度が 40℃となるよう恒
温水槽温度を制御した。空気ボンベから反応

1.Air cylinder 2.Mass flow controller 3.Oxygen sensor
4.Vapor saturation unit 5. Thermostatic water bath
6.Reactor
7.Fermentation
material
8.Stirrer
9.Thermocouple 10.Ice trap 11.Gas drier 12.Datalogger

図 1 発酵実験装置

器内へ空気を所定の流量で供給し、好気的に
発酵させる。反応器通過前後のガス中酸素濃
度を酸素センサーで測定し、それらとガス流
量から酸素消費速度を求め、発酵速度とした。
また、最下流部でガスバッグにてガスを採集
し、ガスクロで O2、CO2 濃度を分析した。
(2)野菜残渣の発酵挙動、アンモニア生成挙動
の把握およびアンモニア発生抑制技術の確

野菜残渣としてトマトの茎や葉などの栽
培残渣を用いた。トマトの栽培残渣は C/N 比
が 10-20 と木質系バイオマスに比べて低いた
め、窒素源を添加する必要はないが、一方で、
アンモニアが生成しやすい。また、含水率が
高い(80%以上)ため、含水率を調整するた
めの副資材の添加が必要になる。本研究では、
農作物の非可食部残渣として有効利用が望
まれている籾殻を副資材として使用した。
実験には図 1 と同じ装置を使用し、まず、
栽培残渣単独で発酵実験を行い、発酵速度の
測定、および、発酵生成ガスの成分分析を行
った。発酵ガス中のアンモニア濃度について
は、反応器直後、および、アイストラップ通
過後でガス検知管により測定した。次に、籾
殻を添加し、添加量と発酵速度、および、生
成ガス組成の関係を調査した。
(3) 木質バイオマスの発酵ガスの組成と植物
の成長に与える影響の解明
CO2 を含む発酵ガスを直接植物の栽培に供
給し植物成長への影響を調査した。使用した
発酵および栽培実験装置の概略を図 2 に示す。
発酵原料としてカラマツを用い、窒素源と

して発酵鶏糞を、微生物資材として VS34 を
使用し、前述と同様の方法で好気性発酵させ、
反応器を通過した空気を植物栽培装置に導
入した。栽培装置には 8.2 L の容積を持つ透
明プラスチック製水槽を用いた。栽培装置内
の CO2 濃度が植物成長を促進するのに十分高
くなるよう、本研究では発酵装置を 2 セット
用意し、それぞれの反応器からのガスを合流
させ、栽培装置に供給した。また、時間とと
もに発酵速度が低下し CO2 濃度も低下するた
め、この実験では発酵開始 1 週間後に発酵反
応器内の試料を新しいものに入れ替えた。
栽培植物はシロイヌナズナを使用した。別
途ロックウールに播種し、栽培に適した大き
さになった時点で栽培実験に使用する。栽培
は水耕栽培で行い、養液を満たした栽培トレ
ーに植物の苗 6 個体を置く。栽培装置には光
源として LED 照明が設置され、栽培面で 60
μmol/(m2 s)の光量子束になるよう調整し、点
灯 16 時間、消灯 8 時間で光を照射した。栽
培装置内にはファンが取り付けられ、装置内
の空気を攪拌し、温湿度・CO2 センサーによ
り環境条件をモニタリングした。また、比較
対照として、CO2 濃度が約 400 ppm の室内空
気を供給した栽培装置を用意し、同様の条件
でシロイヌナズナを栽培した。2 週間栽培し
た後、それぞれの栽培装置内の苗の葉の面積、
生・乾重量などを測定した。この VS34 を用
いた実験を実験 1 とした。
また、微生物供給剤を VS34 から、セルロ
ース分解に有効な Trichoderma 属の菌を含む
微生物資材 VS トリコ(ブイエス科工)に変
えて同様に発酵実験を行った(実験 2)
。また、
VS トリコを用いて 1 週間発酵を行った後、
試料を入れ替えずにバチルス属の菌種を含
む微生物資材リペア・プラス(サバンナブラ
ン)を追加した場合についても実験を行った
(実験 3)。これは、トリコデルマ属の菌によ
りバイオマス中のセルロースを分解し糖化
した後、その糖を利用してバチルス菌が植物
成長促進効果のあるアセトインや 2,3-ブタン
ジオールを生成することを狙ったものであ
る。
さらに、実験 1 において発酵ガスを栽培装
置に供給したところ、栽培装置内の CO2 濃度
は平均で 1400ppm になり、苗の成長が大幅に
促進することが確認された。そこで、これが
CO2 のみの効果であるか、他の揮発成分の影
響かを検討するために、CO2 ガスボンベから
CO2 を栽培装置内に平均 1400ppm になるよ
う供給し栽培実験を行った(実験 4)。
また、実験 1~3 については、発酵反応器
から排出されたガス中の化合物を固相マイ
クロ抽出法で採取し、GC-MS で分析した。

(チップ)

図 2 発酵-栽培実験装置

4.研究成果
(1) 木質バイオマスの発酵挙動と窒素供給源
の探索
本研究では窒素源として発酵鶏糞、硫安、
尿素を使用した。まず、尿素および硫安を窒

0.6

CO2濃度

4
3
2
1

CO2 濃度 [%]

酸素消費速度
[g/(h kg-DM)]

5

酸素消費速度

0
2

4
6
経過時間 [Day]

8

(a) トマト残渣単独の場合
5

酸素消費速度
CO2濃度

0.6

4
3

0.4
2
0.2

1

CO2 濃度 [%]

酸素消費速度
[g/(h kg-DM)]

0.8

0

0
0

1

2

3 4 5 6
経過時間 [Day]

7

8

(b) トマト残渣と籾殻を 1:3 で混合した場合
図 4 トマト栽培残渣の発酵実験結果
200
アイストラップ後

150
100
50
0
0

Fermented chicken
manure
Ammonium
sulfate+Urea+KH2PO4
Ammonium sulfate+Urea

0.8

1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0

1

2

3 4 5 6
経過時間 [Day]

7

8

(a) トマト残渣単独の場合
100
アイストラップ前

0.4
0.2
0
0

5

10
15
20
Time [day]

25

30

図 3 酸素消費速度の時間変化
(カラマツ)
(2) 野菜残渣の発酵挙動、アンモニア生成挙
動の把握およびアンモニア発生抑制技術の
確立
栽培残渣単独の場合の酸素消費速度の時
間変化を図 4(a)に示す。酸素消費速度は実験

NH3濃度 [ppm]

O2 consumption rate
[g/h・g-DM]

1

開始直後から急激に上昇し、、その後徐々に
低下し、6 日目以降はほぼ一定となった。

NH3濃度 [ppm]

素源とした場合は、最大酸素消費速度は硫安
の方が少し大きくなり、硫安は約 1 日で最大
となり、尿素は少し遅れて 2 日目で最大とな
った。これは、硫安は NH4+を含む速効性の窒
素であり、尿素は遅効性の窒素であるためだ
と考えられる。両者とも、最大値をとった後
は速やかに発酵速度が低下した。
そこで、速効性の硫安と遅効性の尿素を混
合することで発酵速度の向上と持続を試み
た。図 3 に硫安と尿素を混合した場合の酸素
消費速度の時間変化を示す。硫安と尿素を混
合することで 2 つのピークが現れた。1 つ目
のピークが硫安、2 つ目のピークが尿素によ
るものであると考えられる。単独のときより
も酸素消費速度の低下が緩やかになった。
一方、発酵鶏糞を用いた場合の酸素消費速
度も図 3 に示した。硫安や尿素、および、そ
れらを混合した場合に比べて酸素消費速度
のピークは著しく大きく、低下も緩やかであ
った。この理由として、発酵鶏糞には窒素以
外にリンとカリウムが含まれているからで
あると考えた。そこで、硫安と尿素の混合物
にさらに KH2PO4 を発酵鶏糞のリンの量と同
等になるように添加した。その結果、最大酸
消費速度は発酵鶏糞と同等の値となった。し
かし、発酵鶏糞のような発酵速度の緩やかな
低下は見られず、急激に低下した。この理由
として、発酵鶏糞の方が pH が微生物の増殖
に好適な中性付近にある、発酵鶏糞に多量に
含まれるカルシウムなど他の成分の寄与、ま
たは発酵鶏糞が微生物単体として適してい
るなどが考えられたが、詳細は不明である。
以上の結果より、本研究で調査した窒素源の
中では発酵鶏糞が最も適していることが分
かった。
また、発酵鶏糞の場合では、CO2 濃度の最
大値は約 50000 ppm に達し、10000 ppm 以上
の濃度が約 4 週間継続した。これより、栽培
に十分な CO2 濃度のガスを十分な期間供給で
きることが明らかとなった。

80

アイストラップ後

60
40
20
0
0

1

2

3 4 5 6
経過時間 [Day]

7

8

(b) トマト残渣と籾殻を 1:3 で混合した場合
図 5 トマト栽培残渣の発酵実験における
アンモニア生成挙動

(3) 木質バイオマスの発酵ガスの組成と植物

の成長に与える影響の解明
図 6 に各実験における栽培装置内の CO2 濃
度の時間変化を示す。発酵ガスを供給した装
置と室内空気を供給した装置のそれぞれに
ついて示した。いずれの実験においても室内
空気供給栽培装置内の CO2 濃度は約 450 ppm
でほぼ一定であった。
実験 1、2 では、発酵ガス供給装置内の CO2
濃度が 1、8 日目でほぼ同等の極大値を示し
た。これは、前述した通り、発酵実験開始後
1 週間で試料を新しいものに取り替えること
により発酵速度が上昇し、高濃度の CO2 ガス
が供給されたためである。実験 3 では発酵試
料の取り替えを行っていないが、7 日目に微
生物資材リペア・プラスを追加したことによ
り新たに分解が進み、CO2 濃度が上昇したも
のと推測される。実験 4 はボンベから CO2 を
供給したが、概ね 1400 ppm でほぼ一定に制
御できたことが分かる。実験 1~4 の 2 週間
の栽培期間の平均 CO2 濃度はそれぞれ 1487、
1612、1364、1395 ppm であった。
各実験において、室内空気供給で栽培した
植物重量に対する、発酵ガスまたはボンベか
らの CO2 供給で栽培した植物重量の比を生重
量と乾重量について表 1 に示す。実験 1 では
CO2 concentration [ppm]

10000

Exp.1 Fermentation gas
Exp.2 Fermentation gas
Exp.1 Room Air
Exp.2 Room air

8000
6000
4000
2000
0
0

2

4

6
8 10
Time [day]

12

14

12

14

(a) 実験 1、2 の場合
CO2 concentration [ppm]

C/N 比は前述のカラマツの場合と同等であ
るが、酸素消費速度はそれよりもやや高くな
った。
次に、栽培残渣と籾殻を乾燥重量比 1:1、
1:2、1:3 で混合し、発酵実験を行った。1:3
の場合の酸素消費速度の結果のみ図 4(b)に示
すが、籾殻の混合比の増加に伴い酸素消費速
度、つまり、発酵速度は低下した。一方、図
中には排ガス中の CO2 濃度の時間変化も示し
た。CO2 濃度は酸素消費速度と同様の挙動を
示した。これより、有機物の好気性発酵が起
こっていることが確認された。
また、トマト栽培残渣の炭素/窒素比(C/N
比)は 12~13 であるのに対し、籾殻の C/N
比は 141~149 であった。C/N 比が小さい方が
微生物の栄養となる窒素源が多いため、発酵
速度は高くなる。したがって、C/N 比の大き
な籾殻をトマト残渣に添加したため、混合試
料量当たりの酸素消費速度(発酵速度)は低
下したと考えられる。
図 5(a)に栽培残渣単独の場合の排ガス中の
アンモニア濃度の時間変化を示す。これはア
イストラップ通過後の濃度である。図より、
時間の経過とともにアンモニア濃度が増大
し、8 日目には 100 ppm を超えるアンモニア
濃度が観測された。ただし、アイストラップ
によるアンモニアの吸収の可能性が考えら
れたため、これ以降はトラップ前後で濃度を
測定した。
図 5(b)に、栽培残渣と籾殻の混合比 1:3 の
場合のアンモニア濃度を示す。図示はしてい
ないが、籾殻の混合比の増大に伴い、トラッ
プ前後ともにアンモニア濃度が全体的に低
下した。アイストラップ通過前の方が高いア
ンモニア濃度を示したことから、アイストラ
ップで凝縮した水とともにアンモニアが一
部除去されていることが明らかとなった。混
合比 1:3 の場合では、トラップ前のアンモニ
ア濃度は時間の経過とともに増大するもの
の、最初の 1 週間では 5 ppm 以下の濃度であ
った。また、トラップ後の濃度は同じ期間で
1 ppm 未満であった。籾殻の添加によりアン
モニアの発生が著しく抑制されることが明
らかとなった。
籾殻混合によるアンモニア生成抑制の理
由としては、一つは籾殻を混合することによ
り C/N 比が高くなり、相対的に窒素が少なく
なることでアンモニアが発生しにくくなっ
たことが考えられる。もう一つの理由として、
籾殻によるアンモニアの吸着が考えられる。
別途行った籾殻によるアンモニアの吸着試
験では、籾殻にアンモニア吸着能があること
が確認された。籾殻を混合したことによる酸
素消費速度の低下の割合よりもアンモニア
濃度低下の割合の方が大きいことから考え
ると、単に窒素が相対的に少なくなることに
よる発生抑制だけでなく、吸着の寄与も大き
いと推測される。

10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0

Exp.3 Fermentation gas
Exp.4 CO2 gas cylinder
Exp.3 Room air
Exp.4 Room air

0

2

4

6
8 10
Time [day]

(b) 実験 3、4 の場合
図 6 栽培装置内の CO2 濃度の時間変化
表 1 発酵ガスによる植物成長促進効果
実験番号

1

2

3

4

微生物源

VS34

VS
Tricho

VS Tricho
Repair・plus

-

生重比

1.4

1.6

1.8

1.4

乾重比

1.3

1.4

1.6

1.4

対照実験に対して 1.4 倍の生重量となった。
微生物資材を VS トリコに変えた実験 2 では
1.6 倍となった。さらに、2 種類の微生物資材
を使用した実験 3 では、実験 1、2 よりも平
均 CO2 濃度は低かったものの、生重比は 1.8
倍と最大であった。このことより、微生物の
種類により植物成長に差が生じることが明
らかとなった。 ...

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