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大学・研究所にある論文を検索できる 「結合共振器系を用いたマルチ共鳴メタマテリアルの作製とテラヘルツ波吸収体への応用」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

結合共振器系を用いたマルチ共鳴メタマテリアルの作製とテラヘルツ波吸収体への応用

宮丸, 文章 信州大学

2021.03.01

概要

2版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
令和

元 年

6 月 11 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 基盤研究(C)(一般)
研究期間: 2016 ∼ 2018
課題番号: 16K05401
研究課題名(和文)結合共振器系を用いたマルチ共鳴メタマテリアルの作製とテラヘルツ波吸収体への応用

研究課題名(英文)Fabrication of multi-resonant metamaterials with coupled resonators

研究代表者
宮丸 文章(Miyamaru, Fumiaki)
信州大学・学術研究院理学系・教授

研究者番号:20419005
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

3,600,000 円

研究成果の概要(和文):本研究では,所望の電磁応答特性が現れるように設計された人工材料を用いて,複数
の周波数で共鳴が生じる構造を作製することを目的としました。結合共振器と呼ばれる,いくつかの共振器が電
磁的に結合する構造を作製することによって,複数の周波数で共鳴モードが生じることを計算機シミュレーショ
ンと実験によって確認し,さらにその構造を用いてテラヘルツ領域におけるメタマテリアル吸収体を作製しまし
た。

研究成果の学術的意義や社会的意義
本研究では,結合共振器メタマテリアル構造によって複数の周波数で共鳴モードが生じることを確認し,それを
用いてメタマテリアル吸収体を作製しました。このようなメタマテリアル吸収体は,電磁波の波長よりも十分に
薄いのでその薄さを活かして,例えば,テラヘルツ波の吸収強度分布を温度分布としてサーモカメラなどで観測
するような用途に応用可能ではないかと考えられます。

研究成果の概要(英文):In this study, we aim to fabricate the structure that has multi-frequency
resonances with the artificial materials called metamaterials. We designed and fabricated the
coupled resonator structures where some resonators had interactions with each other through
electromagnetic coupling. In these structures, the multi frequency resonant behavior was observed
both in simulation and experiment. In addition, we fabricated metamaterial absorbers operated in
terahertz region by utilizing those coupled resonator structures.

研究分野: 光物性物理学
キーワード: メタマテリアル

様 式 C-19、F-19-1、Z-19、CK-19(共通)
1.研究開始当初の背景
電磁波の波長よりも小さい人工構造物が多数配置され,所望の電磁応答特性が現れるように設
計された人工材料はメタマテリアルと呼ばれ,近年非常に多くの研究が行われています。メタマ
テリアルの特徴は,それを形作る材料そのものの特性には大きく左右されずに,構造(形状)によ
って電磁応答特性を制御することができることにあります。それにより自然界の材料には存在
しないような電磁応答特性を得ることができます。
近年,メタマテリアルは様々な目的で研究が進められていますが,その一つに電磁波の吸収体
を作製するという試みがあります[1]。メタマテリアルの吸収体の特徴として,吸収する電磁波
の波長に対して非常に薄いシートでも電磁波をほぼ 100%吸収することが理論的に可能である
ことが挙げられます。例えば可視光領域でこのような吸収体を作製すれば,太陽光発電の効率を
向上できる可能性を期待することができます。
しかしながら,1 つのメタマテリアル吸収体が吸収することができる周波数領域は狭い範囲に
限られているという制限もあります。これは,多くのメタマテリアル吸収体において,電磁波を
吸収するために共鳴構造が用いられているためです。先に例に挙げたような太陽光発電応用な
どのような,広い周波数範囲で高い吸収特性が必要となる応用には,この狭い周波数範囲は不利
になります。そこで,広い周波数範囲をカバーするために,形状が異なる構造(すなわり共鳴周
波数が異なる構造)を複数種類面内に配置することにより,マルチ周波数で共鳴するようなメタ
マテリアル構造が提案されています[2]。

2.研究の目的
複数の異なる形状の共鳴構造を用いる以
外にも、同一の共鳴構造を相互作用させる
ことで周波数の異なる複数の共鳴を実現す
ることが可能です(図 1)。本研究ではこの方
法を用いることにより,メタマテリアルの
共鳴周波数をマルチ周波数化することを目
的としています。このように,各共鳴構造
が,共鳴モードを介して電磁的に結合する
ようなメタマテリアルをここでは,結合共
振器メタマテリアルと呼ぶことにします。
本研究では,いくつかの結合共振器メタマ
テリアルを提案し,それらの電磁応答特性
を調べます。また結合共振器メタマテリア
ルを用いた電磁波吸収体を提案します。

(a)

(b)

)
(



(

1
.



3.研究の方法
上述のように本研究では,結合共振器メタマテリアルを提案し,その電磁応答特性を詳細に調
べることにより,共鳴周波数のマルチ周波数化の特性を把握することを目的の一つとしていま
す。またその結合共振器メタマテリアルを電磁波吸収体に応用することをもう一つの目的とし
ています。それらの目的のために,以下の方法で研究を進めました。
(1) 結合共振器メタマテリアルの設計と電磁応答特性の把握
まず電磁界シミュレーションを用いることにより,結合共振器メタマテリアルの設計を
行います。人工構造物により所望の電磁応答特性を得るのがメタマテリアルの特徴ですが,
それゆえに,幾何学的構造の設計自由度は無限にあります。多くの幾何学的パラメータを
変化させつつ,メタマテリアルの電磁応答特性を把握する必要がありますが,実際にすべ
ての構造を作製するのは多くの時間を要します。そこでまず,計算機シミュレーションを
用いて,様々なパラメータを持つメタマテリアルの電磁応答特性を調べ,マルチ周波数共
鳴が生じる形状を模索します。
次に,シミュレーションを用いて設計された結合共振器メタマテリアルのいくつかを実
際に作製し,その電磁応答特性を実験的に測定します。作製する結合共振器メタマテリア
ルの共鳴周波数はテラヘルツ領域に設定します。テラヘルツ領域とは,周波数が 0.1〜
10THz 付近の電磁波領域のことを指します。本研究では,結合共振器の透過特性を,テラ
ヘルツ時間領域分光装置を用いて行います。この測定を行うことにより,計算機シミュレ
ーションで得られたマルチ周波数共鳴が実際に作製した試料においても同様に得られるの
かを調べます。
(2) テラヘルツ波吸収体への応用

計算機シミュレーションや実験によって調べた結合共振器メタマテリアルの構造を,テ
ラヘルツ波領域の電磁波吸収体に応用することを模索します。具体的には結合共振器メタ
マテリアル構造と金属膜を積層することにより,テラヘルツ吸収体を構成することができ
ます。計算機シミュレーションによる電磁応答特性の把握に加えて,実際に吸収体を作製
し,テラヘルツ領域の反射分光装置による反射特性を通して,メタマテリアルの吸収スペ
クトルを調べます。

4.研究成果
(1)結合共振器メタマテリアルの設計と電磁応答特性の把握
はじめに,結合共振器メタマテリアル構造をいくつか提案し,その電磁応答特性を計算
機シミュレーションによって調べました。具体的な共振構造として図 1(a)に概念図を示
したような,分割リング共振器と呼ばれる形状を用いました。この分割リング共振器は単
体で,ある周波数に共鳴的な特性が観測されます。それを図 1(b)のように,5 つを密に配
置したものを 1 つのユニットとしました(これをユニットセルと呼びます)。このユニット
を平面内に周期的に並べた構造を作製することを想定しています。一例として,図 2(a)に
示したような結合共振器メタマテリアルの透過スペクトルを計算機シミュレーションに
よって計算した結果を図 2(b)に示します。3 つの異なる周波数に共鳴ディップが観測され
ることがわかります。分割リング共振器が 1 つだけしかない場合は,1 つの周波数にのみ
共鳴ディップが観測されますが,今回は、5 つの分割リング共振器が結合することによっ
て,周波数の異なる共鳴モードへの分裂が生じていると考えられます。
計算機シミュレーションで計算した結合共振器メタマテリアルを実際に作製し,その電
磁応答特性を実験的に測定しました。実験で用いた結合共振器メタマテリアルの構造は図
2(a)と同様のものです。実験的に測定した透過スペクトルを図 2(c)に示します。3 つの共
鳴ディップが観測されます。この結果は,計算機シミュレーションで得られた結果と比較
しますと,よく一致していることがわかります。

(a)



(b)


)

(c)

2
(



)

.

.

(2)テラヘルツ波吸収体への応用
結合共振器メタマテリアルでは複数の共鳴モードが現れることがわかりました。次に,
この結合共振器メタマテリアル構造を用いて,テラヘルツ波のメタマテリアル吸収体を作
製しました。具体的には,結合共振器メタマテリアル構造と一様な金属面を,誘電体層を
挟んで積層した構造を作製しました(図 3(a))。一様な金属面があるので,テラヘルツ波は
透過することができません。それ故,この構造の反射率の測定を行うことにより,吸収率
を算出することができます。一例として,図 3(b)に作製したメタマテリアル吸収体の吸収
スペクトルを示します(実線)。また比較のために,ユニットセル内に分割リング共振器が
1 つだけ配置されたメタマテリアル吸収体の吸収スペクトルも図 3(b)に示します(破線)。
結合共振器メタマテリアルを用いた吸収体では,少なくとも 2 つの吸収ピークが観測され
ているのがわかります。一方,ユニットセル内に分割リング共振器が 1 つだけのメタマテ
リアル吸収体では,1 つの吸収ピークしか観測できていないのがわかります。このように
結合共振器メタマテリアルを用いた吸収体では,複数の吸収ピークを持つことによってメ
タマテリアル吸収体の吸収帯域を広げることができることが確認できました。

(a)

(b)

.


)

)



(

3

(3)今後の展望
本研究では,結合共振器メタマテリアル構造によって複数の周波数で共鳴モードが生じ
ることを確認し,それを用いてメタマテリアル吸収体を作製しました。その結果,吸収ピ
ークが複数に分裂することにより,電磁波吸収が生じる周波数帯域が広がることが確認で
きました。このようなメタマテリアル吸収体は,電磁波の波長よりも十分に薄いので,そ
の薄さをメリットとしたいくつかの用途に応用可能ではないかと考えられます。例えば,
本研究で対象としたテラヘルツ波は人間の目では直接観測することはできませんが,テラ
ヘルツ波がメタマテリアル吸収体に吸収され,それに伴い温度が上昇することによって,
テラヘルツ波の強度分布を温度分布としてサーモカメラなどで観測できることが考えら
れます。現在,テラヘルツ波用のカメラは市販されているものがいくつかありますが,メ
タマテリアル吸収体とサーモカメラの組み合わせで,比較的安価にテラヘルツ波の強度分
布を可視化できることが期待されます。
<参考文献>
[1] N. I. Landy, et al., Phys. Rev. Lett. vol. 100, p. 207402 (2008).
[2] X. Shen, et al., Appl. Phys. Lett. vol. 101, p. 154102 (2012).
5.主な発表論文等
〔学会発表〕
(計 6 件)
1. 宮丸文章,
「金属構造を用いた空間的・時間的なテラヘルツ波制御のための光学素子」
,テ
ラヘルツ科学の最先端 V,2018 年
2. 宮丸文章,
「メタマテリアルを基にしたテラヘルツ光学素子」
,レーザー学会学術講演会 第
38 回年次大会,2018 年
3. 加納顕悟,西田翼,中田陽介,中西俊博,宮丸文章,
「結合共振器メタマテリアルを用いた
マルチバンド吸収体の作製」
,テラヘルツ科学の最先端 IV, 2017 年
4. Fumiaki Miyamaru, Tsubasa Nishida, Kengo Kano, Hiroki Morita, Yosuke Nakata, and
Toshihiro Nakanishi, “Terahertz characteristics of coupled-resonator-based
metasurfaces,” The 4th International Symposium on Microwave/Terahertz Science
and Applications & the 8th International Symposium on Terahertz Nanoscience, 2017

5. 宮丸文章,
「結合共振器メタマテリアルによるテラヘルツ波の制御」
,応用物理学会テラヘ
ルツ電磁波技術研究会若手サマースクール,2016 年
6. 宮丸文章,
「テラヘルツメタマテリアルについて」
,第 21 回福井セミナー, 2016 年

6.研究組織
(1)研究分担者

研究分担者氏名:中西 俊博
ローマ字氏名:(Toshihiro Nakanishi)
所属研究機関名:京都大学
部局名:工学研究科
職名:助教
研究者番号(8 桁)
:30362461
研究分担者氏名:中田 陽介
ローマ字氏名:(Yosuke Nakata)
所属研究機関名:信州大学
部局名:先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所
職名:助教(特定雇用)
研究者番号(8 桁)
:50745205

※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等に
ついては、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属されます。 ...

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