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大学・研究所にある論文を検索できる 「Role of cervical cancer screening during prenatal checkups for infectious diseases: A retrospective, descriptive study」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Role of cervical cancer screening during prenatal checkups for infectious diseases: A retrospective, descriptive study

丸山 康世 横浜市立大学

2023.02.28

概要

1. 序論 本邦では,ほとんどの妊産婦が妊娠初期から産婦人科を受診し定期的な妊婦健診を受ける.検査結果を踏まえた医療介入が母児の予後改善に有益であるものとして,日本産科婦人科学会産婦人科診療ガイドライン産科編 2020 年版では,妊婦健診で推奨されている感染症スクリーニング検査として,HBs 抗原,HCV 抗体,風疹抗体,梅毒スクリーニング, HTLV-1 抗体,HIV スクリーニング,トキソプラズマ抗体が挙げられている.また子宮頸部細胞診も,一定期間に子宮頸がん検診として子宮頸部細胞診を受けていない妊産婦に対しては同診療ガイドラインで妊娠初期に得ておくべき情報として記載されている.子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV)ワクチンによる HPV 感染予防と子宮頸がん検診による早期発見で罹患率の減少が期待される疾患となった.本邦では HPV ワクチンは 2013 年から定期接種となっており,小学校 6 年生から高等学校 1 年生相当年齢の女子を対象として無料で接種を受けることができるが,2013 年 6 月より接種の積極的勧奨が中止され,接種はほとんど行われなくなった.本邦の子宮頸がん検診事業は 20 歳以上の女性を対象として,厚生労働省の管轄で 1967 年より行われているが,子宮頸がん検診の受診率は約 40%と低い(国立がん研究センターがん情報サービス).本邦の現状は HPV ワクチン接種率,がん検診受診率ともに WHO の介入目標には届かない(Woman 4 Global Fund).このような現状から本邦では,妊娠が初めての産婦人科受診となる女性も多い.妊婦健診のスクリーニングの現状を把握するために,ヒトパピローマウイルス感染により惹起される子宮頸部細胞診異常の頻度と転帰,子宮頸部細胞診の採取器具,その他の感染症の現状について検討した.

2. 実験材料と方法 2014 年から 2017 年の小田原市立病院の分娩症例 3393 例のうち,今回の妊娠中に子宮頸部細胞診を受けた妊産婦を対象として,妊婦健診として施行される感染症,および子宮頸部細胞診のスクリーニング結果,子宮頸部細胞診の採取器具が記載された診療録を後方視的に検討した.同期間に複数分娩した症例も含まれている.子宮頸部細胞診異常症例については診療録を 2020 年 3 月まで追跡調査した.子宮頸部細胞診の結果と子宮頸部組織診断の一致についても解析した.本研究は小田原市立病院倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号 2018-1).

3.結果 対象となる分娩数は 3393 例であり,子宮頸部擦過細胞診結果の確認できた妊産婦は 3280 例(96.6%),このうち妊娠前の 1 年以内に子宮頸がん検診を受けた妊産婦は 639例(18.8%)であった.今回の妊娠中に子宮頸部細胞診を施行していた 2641 名(81.2%)を分析した.中央値年齢は 32 歳であった.子宮頸部細胞診結果は 2562 名(97.0%)が陰性(Negative for intraepithelial lesion or malignancy : NILM)で,79 名(3.0%)が異常であった.妊娠中に施行を推奨されている感染症の検査結果の陽性率は,B 型肝炎ウイルス 15 人(0.6%),C 型肝炎ウイルス 11 人(0.4%),梅毒 6 人(0.2%),成人 T 細胞白血病ウイルス 4 人(0.2%),トキソプラズマ 45 人(1.7%),クラミジア・トラコマティス 55 人(2.1%),淋菌 2 人(0.1%),B 群連鎖球菌 403 人(15.3%),カンジダ・アルビカンス 424 人(16.1%)であった.クラミジア・トラコマティス陽性率は,子宮頸部細胞診異常群(n=50,6.3%)が NILM 群(n=5,2.0%,P=0.007)より有意に高かった.子宮頸部細胞診異常症例 79 人のうち,妊娠を契機に発見された症例は 70 人であった.このうち 42 人は子宮頸部軽度異形成以上の病変があった.細胞診の採取器具はスパチュラが最も多く,次いで綿棒であり,妊娠経過に対し採取器具による大きな副作用は認められなかった.自院では主にスパチュラで採取しており,多量の出血など処置を要した症例は認めなかった.

4.考察 妊娠中の感染症スクリーニングは重要である.HPV ワクチン接種率が 5%未満の本邦では,子宮頸がん検診率の低さは子宮頸がん予防の大きなハードルとなっている.本研究では対象年齢中央値は 32 歳と子宮頸がん検診の対象年代であるが,妊娠前の定期的な子宮頸部細胞診検査を受けた女性は約 20%にとどまり,本邦の検診率より低かった.子宮頸部細胞診の新規異常発見率は 2.7%,子宮頸部軽度異形成以上と診断された率は 1.6%であった.分娩後に手術が必要となった症例もあった.妊娠中の子宮頸部細胞診検査は,非妊娠時に比べて精度は落ちることが示されている.採取器具をスパチュラにすることで細胞診の精度が上がる可能性が考えられ,本研究の中でスパチュラでの採取は妊婦にも比較的安全に使用できたことが示された.妊娠中の細胞診結果が不確実である可能性があり,分娩後も定期的に検診を受けることの重要性を妊産婦に伝える必要がある.HPV ワクチン接種の普及と検診率が向上するまでは,初産婦,経産婦ともに妊娠時の子宮頸部細胞診の重要性は変わらない.

参考文献

当院における妊産婦の風疹抗体保有率と産後の風疹ワクチン接種状況

木野民奈,丸山康世,中川沙綾子,山本賢史,中島文香,小河原由貴,平吹知雄,宮城悦子: 日周産期・新生児会誌 第 57 巻第 2(号) 309 頁~314 頁 2021 年

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