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書き出し

遍歴電子系Co化合物における多彩な量子物性

森山, 広大 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24445

2023.03.23

概要

学位論文の要約
題目

遍歴電子系 Co 化合物における多彩な量子物性

氏名

森山 広大

1. 序論

固体物性の研究分野において、種々の相転移の量子臨界点近傍の物性が長らく注目を
集めてきた。量子臨界点の近傍では強い量子揺らぎが特異な物性を誘起することが期待
される。近年ではウラン化合物において強磁性量子臨界点近傍でスピン三重項超伝導が
発見されており、異常物性に対する強磁性揺らぎの影響の解明が望まれている。また近
年の物性物理学の重要なテーマとしてトポロジカル物性が挙げられる。固体のバンド構
造に非自明なトポロジーが存在する場合、量子ホール効果や巨大磁気抵抗などの新奇物
性の発現が期待されるため、非自明なトポロジーを有する物質の探索が望まれている。
申請者は遍歴電子が媒介するこれらの量子物性についてさらなる知見を得るため、遍
歴電子強磁性の量子臨界近傍物質である SrCo2(Ge1−xPx)2 と RCo9Si4 (R=Y, La)の磁性を巨視
的・微視的測定により調べた。また、Co 化合物の新奇物性探索を目的として籠状構造を有
する超伝導体 A3Co4Sn13 (A=Ca, La)の磁場中での電気抵抗測定を行った。

2. 実験方法
SrCo2(Ge1−xPx)2 については自己フラックス法により単結晶を育成し、EDX 測定や X 線回
折測定による試料評価と磁化, 比熱測定による物性評価を行った。また、固相反応法で合成
した粉末試料を用いて 31P-NMR 測定を行い、微視的な磁性を評価した。RCo9Si4 (R=Y, La)
については誘導溶解法で合成された粉末試料を用いて 59Co-NMR 測定を行い、微視的な磁性
を評価した。A3Co4Sn13 (A=Ca, La)については Sn フラックス法により単結晶を育成し、磁場
中電気抵抗測定やホール抵抗測定を行い、輸送特性の磁場依存性や温度依存性を評価した。

3. 層状化合物 SrCo2(Ge1−xPx)2 における遍歴電子強磁性
SrCo2(Ge1−xPx)2 は ThCr2Si2 型構造を有する AT2X2 化合物の 1 つであり、CoX4 (X=Ge, P)四面
体が稜共有で二次元的に連なった CoX 層と Sr 層との積層化合物である。一般に、AT2X2 化
合物は隣接 TX 層間の X-X 化学結合の有無によって cT 相と ucT 相とに分類される。SrCo2(Ge1
−xPx)2

についてはこれまで多結晶試料の合成のみが報告されていたが、自己フラックス法を

用いた結果初めて単結晶が得られた。X 線回折測定と磁化測定の結果、本系では X-X 結合
を形成する X サイトに元素のランダムネスが存在する影響により cT 相と ucT 相の間に幅の
広い中間相が存在し、これが複雑な磁気相図と密接に関わっていることが判明した。また
比熱測定から、中間相に属する x=0.39 と 0.58 における強磁性の量子臨界現象を発見した。
これらの量子臨界現象は Ge→P 置換によるキャリアドープ効果と、中間相での連続的な構
造変化による相互作用の変化により発現したと考えられる。また NMR 測定によりスピン揺
らぎを評価した結果、中間相において強磁性揺らぎの振幅が増大していることが判明した。

4. RCo9Si4 (R = Y, La)の遍歴電子磁性とスピン揺らぎ
RCo9Si4 は R サイトの元素に依存して物性が大きく異なり、YCo9Si4 が TC~25 K で強磁性
を示す一方で LaCo9Si4 は 2 K まで磁気秩序を示さず、磁場中で遍歴電子メタ磁性転移を示
す。一般に遍歴磁性体では格子定数が大きい方がフェルミ準位の状態密度が小さくなるた
め強磁性の発現には不利と考えられ、RCo9Si4 の磁性の変化はこのような単純な描像では説
明できない。今回の NMR 測定により、YCo9Si4 と LaCo9Si4 のいずれにおいてもスピン揺ら
ぎの強磁性成分が支配的であることが判明した。また SCR 理論に基づく定量的解析の結果、
LaCo9Si4 の方がスピン揺らぎのエネルギー幅が 2 倍程度大きいことが判明し、磁性を担う d
バンドのエネルギー幅の増大に起因して磁気秩序が抑制されている可能性が示唆された。

5. 籠状超伝導体 A3Co4Sn13 (A=Ca, La) における異常磁気抵抗
A3Co4Sn13 (A=Ca, La)は 12 個の Sn 原子からなる籠状構造を有する超伝導体であり、
La3Co4Sn13 については T*=152 K でカイラル構造への相転移を示すと同時に、磁化率が増大
するという異常が報告されている。今回、純良な単結晶試料を用いた磁場中電気抵抗測定
の結果、Ca3Co4Sn13 と La3Co4Sn13 のいずれも低温で正の磁気抵抗効果を示すことが判明した。
また通常金属の磁気抵抗が磁場の 2 乗に比例する一方で、本系の磁気抵抗は磁場のおよそ 1
乗に比例して増大した。このような線形磁気抵抗はバンド構造の特異なトポロジーによっ
て発現したディラック電子に起因すると考えられる。

6. 結論
SrCo2(Ge1−xPx)2 や RCo9Si4 について、元素置換による Co 周辺の局所構造の変化に対応して
相互作用の強さやスピン揺らぎのエネルギーが変化し、強磁性量子臨界現象をもたらして
いることが判明した。SrCo2(Ge1−xPx)2 については新たに中間構造相が発見され、量子臨界現
象との関わりが明らかとなった。また A3Co4Sn13 については線形磁気抵抗効果が発見され、
この物質群がさらなるトポロジカル物性発現の舞台となり得ることが示唆された。 ...

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