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大学・研究所にある論文を検索できる 「イッテルビウム系近藤格子化合物Yb₄TGe₈(T: 遷移金属)における価数揺らぎに起因する新奇な低温物性」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

イッテルビウム系近藤格子化合物Yb₄TGe₈(T: 遷移金属)における価数揺らぎに起因する新奇な低温物性

山中, 俊介 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24448

2023.03.23

概要

学位論文の要約
題目

イッテルビウム系近藤格子化合物 Yb4TGe8 (T: 遷移金属) における価数揺ら
ぎに起因する新奇な低温物性

氏名

山中 俊介

1. 序論
イッテルビウムやセリウムを含む金属化合物は、強い相関を有する電子によって
生み出される、重い電子状態、非従来型の超伝導、価数転移、複雑な磁気秩序など
の新規な物性の発現の舞台として、近年特に大きな注目を集めている。伝導電子と
4f 電子間の混成は RKKY 相互作用と近藤効果の 2 つの相互作用を生み出し、混成効
果のわずかな違いがイッテルビウムやセリウムを含む金属化合物の基底状態を変化
させる。また、価数の揺らぎも物性に大きな影響を及ぼす要因の一つであり、イッ
テルビウムやセリウムを含む価数揺動系の化合物においては、付加的な磁気相関が
低温部で発達することがしばしば報告され、議論がなされている。そこで申請者は、
基礎物性が研究されておらず、遷移金属サイトの置換により系統的な物性研究が可
能な価数揺動を示す化合物 Yb4TGe8 (T = Cr, Mn, Fe, Co, Ni) に着目し、その単結晶を
育成し、結晶構造及び物性を精査した。また、新たに単結晶の育成に成功した
Yb4RuGe8 の結晶構造と物性を他の 5 つの化合物のそれらと比較することで、低温部
での異常な物性の起源を明らかにすることを試みた。

2. 実験方法
In フラックス法により Yb4TGe8 (T = Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Ru)の単結晶を育成した。X
線回折測定によって得られた試料の相同定及び結晶構造の評価を行った。物性の評
価は磁化率測定、強磁場磁化測定、比熱測定、電気抵抗率測定、X 線吸収分光(XAS)
測定、光電子分光測定によって行った.

3. 結果と考察
Yb4TGe8 (T = Cr, Mn, Fe, Co, Ni) は空間群 Cmcm の CeNiSi2 型結晶構造を有する化
合物であり、T 原子は占有率 0.25 でランダムに Ni サイトを占めている。一方、

Yb4RuGe8 は空間群P1の三斜晶歪をもった CeNiSi2 型結晶構造を有する化合物であり、
Ge ネットの周期的な歪によって Ru 原子の秩序構造と結晶学的に非等価な 4 つの Yb
サイトが生じる。Yb4TGe8 (T = Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Ru) の磁化率𝜒の温度 T 依存性は、
いずれも 40 K 付近でブロードなピークを示す。比熱の温度依存性において、長距離
秩序を示す𝜆型のピークは 2 K までの温度領域にみられていないことから、このブロ
ードなピークは近藤効果によるものであると考えられる。XAS 測定から見積もられ
た Yb4CrGe8 および Yb4MnGe8 における Yb イオンの平均価数と𝜒𝑇の温度依存性は類
似の挙動を示しており、
本系の磁性は Yb イオン中の 4f 電子が支配的な役割を担い、
T 原子中の𝑑電子は遍歴的に振る舞っていることが示唆される。また、低温部におい
ては付加的な磁気相関が発達し、𝜒をエンハンスさせる。このエンハンスメントが生
じる温度領域およびその大きさは T 原子に大きく依存する。
一般に、サイト間の電子移動によって生じる Yb2+⟺Yb3+の熱揺らぎは高温部にお
いては結晶学的に非等価な Yb サイトの価数を均一化するが、温度の減少に伴ってこ
の熱揺らぎの寄与は減少し、各 Yb サイトの平均価数に違いが生じてくる。低温部で
出現してくる Yb の平均価数が小さなサイトにおいては、近藤シングレットの破壊を
通して局在スピンが顕になり、付加的な磁気相関の発達に寄与する。これらの事を
考慮に入れると、低温部における Yb4TGe8 (T = Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Ru) の𝜒-𝑇曲線の挙
動は残留抵抗率比 RRR を基に 3 つのグループに分けることができる。小さな RRR を
もつ Yb4CrGe8,Yb4MnGe8,Yb4FeGe8 においては Ge ネットが完全にランダムに歪ん
でいるために、ほとんど全ての Yb サイトが均一化され、低温での𝜒のエンハンスメ
ントはほとんど起こらない。中間の RRR をもつ Yb4CoGe8,Yb4NiGe8 においては、
Ge ネットの歪が短距離秩序を形成するために数多くの Yb サイトが生じ、広い温度
領域で緩やかに𝜒のエンハンスメントが生じる。大きな RRR をもつ Yb4RuGe8 におい
ては Ge ネットが周期的に歪むことによって非等価な Yb サイトの数が限定されるた
めに、狭い温度領域で集中的に𝜒のエンハンスメントが起こる。

4. 結論
Yb4TGe8 (T = Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Ru) は磁化率の温度依存性において 40 K 付近にブ
ロードな極大をもつ近藤格子系の化合物であり、低温部で付加的な磁気相関が発達
する。付加的な磁気相関は、結晶学的に非等価な Yb サイトの存在に起源をもつ Yb
イオンの価数不均一性によって誘起される。非等価な Yb サイトの数は T 原子に依存
して変化する Ge ネットの歪み方によって異なっており、低温領域における 6 つの化
合物の磁化率の挙動の違いの原因となる。 ...

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