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書き出し

アレルギー性鼻炎における生理活性脂質の役割の解明

橘, 侑里 東京大学 DOI:10.15083/0002006902

2023.03.24

概要

















氏名 橘 侑里
アレルギー性鼻炎(Allergic rhinitis:AR)は鼻腔内に侵入した花粉などの抗原により、くし
ゃみや鼻漏、鼻閉といった症状を呈するアレルギー疾患である。本邦における AR の罹患率
は約 50%と非常に高く、その治療・管理方法の開発が期待されている。生理活性脂質は、が
んやアレルギーなど様々な炎症疾患の発症や増悪、寛解に関与していることが報告されてい
るが、AR における役割については、分かっていることは少ない。橘侑里氏から提出された博
士論文では、AR の病態解明を目的とし、AR モデルマウスの鼻腔内における脂質メディエー
ターの産生動態の解明、及び病態を悪化させる新規生理活性脂質の探索を行った研究内容に
ついて記述されている。AR について書かれた第 1 章に続く、第 2 章以降の研究内容について
以下に要約する。
第 2 章:「アレルギー性鼻炎モデルマウスの鼻腔中に産生される脂質メディエーターの解析」
について
マウスに卵白抗原アルブミン(OVA)を腹腔内投与して感作した後、経鼻投与による刺激
を連日行うことで、AR モデルが作製された。5 回の OVA 刺激ではくしゃみと鼻粘膜への好
酸球の浸潤が認められ、10 回目ではそれらに加えて鼻閉と肥満細胞の浸潤が確認された。過
去の報告と照らし合わせ、このモデルを AR モデルとして、以下の実験に用いた。この AR モ
デルの鼻腔洗浄液を採取して、液体クロマトグラフィータンデム質量分析器(LC-MS/MS)を
用いて解析したところ、複数の脂質メディエーターが、病態の進行にともなって産生されて
いることが確認された。特に、5 回の OVA 刺激では脂質産生酵素であるリポキシゲナーゼの
活性に依存して産生されるメディエーターが、10 回の OVA 刺激ではこれらに加えて、シク
ロオキシゲナーゼや非酵素的酸化によって産生されるメディエーターが検出された。これら
の結果をうけた考察では、AR の進行にともなって鼻粘膜へと浸潤してきた免疫細胞の種類
と、脂質産生に関与する酵素との関連について議論・記述されている。
第 3 章:「12-HETE がアレルギー性鼻炎の病態進行に与える影響」について
第 3 章では、AR モデルマウスの鼻腔洗浄液中に、高い濃度で検出されていた 12-Hydroxy
eicosatetraenoic acid(12-HETE)の病態生理活性に着目した研究が行われた。まず、AR モデル
マウスの鼻粘膜において、好酸球に 12-HETE の合成酵素である Arachidonic 12-Lipoxygenase
(ALOX12)が発現していることを確認した。ALOX12 阻害薬をマウスに投与すると、OVA 刺
激による鼻粘膜への好酸球の浸潤が抑えられた。またこの抑制は、12-HETE の追加投与によ
り解除された。同様に、ALOX12 阻害薬の投与は、OVA 刺激によって増加する顎下リンパ節

中の Th2 細胞の数を有意に抑制し、12-HETE の追加投与はこの抑制を解除した。これらの実
験結果により、AR において 12-HETE は好酸球の ALOX12 から産生され、所属リンパ節にお
ける Th2 細胞の分化を促進することで、アレルギー病態を進行させる分子である可能性が示
された。
第 4 章「アレルギー性鼻炎における TP を介した 8-iso-PGE2 の病態生理活性の解明」につい

AR における鼻閉は、鼻粘膜において産生された Thromboxane A2 が TP 受容体を介して血管
透過性を亢進することで起こる粘膜浮腫に起因すると考えられてきた。第 2 章の結果におい
て、AR モデルマウスの鼻腔洗浄液中において、Thromboxane A2 以外に TP 受容体に作用する
ことが報告されている 8-iso-Prostaglandin E2(8-iso-PGE2)が検出されていた。第 4 章では、こ
の 8-iso-PGE2 の病態生理活性に着目した。まず、単離内皮細胞を用いた実験において、8-isoPGE2 の投与が、TP 受容体の刺激を介して内皮バリアの崩壊を起こすことを確認している。
続く in vivo の実験では、8-iso-PGE2 の経鼻投与が、マウスの鼻腔組織での血管透過性を亢進
させることを色素漏出実験により確認した。さらに、CT スキャンと鼻粘膜の病理切片観察に
より、8-iso-PGE2 の投与が鼻閉を引き起こし、鼻粘膜の浮腫を起こすことを確認している。ま
たこれらの症状は、TP 受容体阻害薬の投与で抑制された。これら第 4 章の実験結果により、
AR において鼻粘膜で産生される 8-iso-PGE2 は、TP 受容体を介して血管透過性を亢進し、鼻
閉を引き起こす可能性が示された。
第 5 章「総合考察」
以上の研究結果をうけて、総合考察ではアレルギー性鼻炎における脂質メディエーターの
産生や病態生理活性を解明することの意義、そしてその診断や治療への応用の可能性につい
て論じられた。
審査結果
アレルギー性鼻炎で産生される、脂質メディエーターとその生理活性を明らかにした本研
究は、その病態メカニズムの解明、新規の診断と治療法の開発に繋がる可能性が期待され、
学術上および応用上で寄与するところが少なくない。博士論文において、一部の加筆や修正、
論文投稿を求めるとともに、審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あ
るものとして認めた。

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