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書き出し

構造初期化によるセルロースゲル材料の創製

木村, 睦 信州大学

2020.03.12

概要

4版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
平成 30 年

6 月 25 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 挑戦的萌芽研究
研究期間: 2016 ∼ 2017
課題番号: 16K14078
研究課題名(和文)構造初期化によるセルロースゲル材料の創製

研究課題名(英文)Development of Cellulose Gel Materials through Structural Initialization

研究代表者
木村 睦(Kimura, Mutsumi)
信州大学・学術研究院繊維学系・教授

研究者番号:60273075
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

2,900,000 円

研究成果の概要(和文):これまでに見出したセルロースのイオン性液体溶液へのメタノール蒸気によるゲル化
手法を元に、中空糸およびナノファイバー化に関し検討を進めた。2重構造を持つノズルを用い中心にメタノー
ルおよび外側にメタノール蒸気にセルロース溶液を晒したところ、内部に密なセルロース層をもつセルロース中
空糸の成形に成功した。得られた中空糸の透水性評価を行ったところ、別手法で得られた再生セルロース中空糸
と比較して透水量は若干低いものの、色素およびマグネシウムイオンの排除率に優れていることがわかった。ナ
ノファイバー不織布化を電気2重層キャパシタのセパレータとして用いたところ、キャパシタ性能の低下なく電
解液の保持に優れていた。

研究成果の概要(英文):Shape-persistent and tough cellulose hydrogels were fabricated by a stepwise
solvent exchange from a homogeneous ionic liquid solution of cellulose exposure to methanol vapor.
The cellulose hydrogels maintain their shapes under changing temperature, pH, and solvents. The
micrometer-scale patterns on the mold were precisely transferred onto the surface of cellulose
hydrogels. We also succeeded in the spinning of cellulose hydrogel fibers through a dry jet-wet
spinning process. The mechanical property of regenerated cellulose fibers improved by the drawing of
cellulose hydrogel fibers during the spinning process. This approach for the fabrication of tough
cellulose hydrogels is a major advance in the fabrication of cellulose-based structures with defined
shapes.

研究分野: 繊維化学
キーワード: セルロース イオン性液体 繊維 ゲル 中空糸 透水膜 キャパシタ ナノファイバー

様 式 C-19、F-19-1、Z-19、CK-19(共通)
1.
研究開始当初の背景
人類は古来より植物から得られるセルロー
スを材料として利用してきた。セルロース
溶解液から湿式紡糸プロセスで得られる繊
維は、レーヨン(再生セルロース繊維)と
して前世紀初頭から製造されてきた。セル
ロースを繊維状に紡糸するには、セルロー
ス間の水素結合を切断することができる溶
媒が必要であり様々な溶媒が開発されてき
ている。近年、イオン性液体によるセルロ
ースの溶解が報告され(Swatloski et al., J.
Am. Chem. Soc., 2002)
、イオン性液体を用い
たセルロースの再生化が試みられている。
また、物理・化学的手法によって木材をナ
ノ化したセルロースナノファイバーは軽
量・高強度・小熱変形の複合材料用部材と
して期待されている(Nogi et al., Adv. Mater.,
2009 & Isogai et al., Nanoscale, 2011)
。セル
ロースは植物中において様々なスケールの
階層構造を形成している。セルロース再生
化は、自然界の階層構造を初期化し材料と
して利用できる構造に変えるプロセスであ
る。これまでに、コーネル大学との国際共
同研究の中でイオン性液体を用いたセルロ
ース溶液の段階的溶媒交換によって、95%
以上の水を含むセルロースハイドロゲルを
得ることに成功した(論文投稿中)
。イオン
性液体を用いることによりセルロース間の
水素結合を切断することができ、セルロー
スは分子分散することができる。セルロー
ス溶液をメタノール蒸気で処理し、水に置
換することによってセルロースゲルを得る
ことができた。部分的なセルロース鎖間の
水素結合を架橋点とし水を 95%以上含む
ハイドロゲルとなる。得られたセルロース
ハイドロゲルは物理ゲルとしては高い強度
を示すことを見いだした。このプロセスを
湿式紡糸に展開することによって、連続的
なセルロースゲルファイバーを得ることに
も成功した。
アルカリと二硫化炭素、
銅アンモニア溶液、
N-メチルモルホリン-N-オキシド等の溶媒
にセルロースを溶解させ、水中で凝固させ
ることによって固体として取り出すことが
できる。固化する際に水素結合によってセ
ルロース鎖間が集合化する。
しかしながら、
植物のように水素結合形式を精密に制御す
ることはできず、得られた再生セルロース
繊維の機械的強度は低い。従来再生プロセ
スでは、天然の木材で見られるセルロース
鎖間の水素結合形成によるボトムアップ的
階層構造形成はできていない。
高分子を高濃度で溶解させた高分子溶液
を紡糸し、ミクロ層分離による均質な架橋

点構造を持つゲル状の糸に成形した後、高
倍率延伸するゲル紡糸が高強度・高弾性繊
維の紡糸方法として利用されてきた。イオ
ン性液体はセルロース鎖にダメージを与え
ずセルロース鎖を分子分散できる。我々は
イオン性液体を用いたセルロース溶液への
メタノール蒸気によるゲル化を見いだし、
このプロセスによって均質な架橋点密度を
持つゲルを得ることができた。本研究では
ゲル紡糸手法を展開し、セルロースからな
る伸びやすいゲル状物質を延伸し、延伸に
伴う分子鎖配向とともに鎖間の水素結合形
成による結晶化度制御手法に関し検討を行
う。セルロース化学は長い歴史を持つが、
セルロース溶液濃度と溶媒組成によるミク
ロ相分離構造制御および得られたセルロー
スゲル・繊維の延伸による結晶化制御に関
しては未踏領域である。天然がつくり出し
た階層構造を持つセルロースを初期化し、
必要とされる物性にあわせた再生プロセス
を確立することができれば、再生可能資源
であるセルロースのさらなる応用展開領域
の拡大につながる。セルロースゲルを用い
た結晶化度制御手法は、独創性・新規性が
高く挑戦的な課題である。

図1 セルロースゲル(a)、表面 SEM 像(b)
およびゲル化機構(c)
2.研究の目的
再生プロセス条件とセルロースゲル・繊維
の結晶化度との相関およびセルロース鎖が
形成するナノ構造を明らかとし、再生セル
ロース材料の結晶化度制御手法を確立する
ことを目的とした。さらに結晶化度向上に
よるゲル・繊維の高強度化(セルロースゲ
ルの現状の圧縮強度 5MPa 程度を数倍に)
を達成し、バイオメディカル材料としての
可能性を探索した。

図2.セルロースゲルの延伸による結晶化
3.研究の方法
平成 28 年度は、温度・溶媒組成によるセ
ルロース溶液のゲル化プロセス制御に関し
詳細な検討を行う。ゲル化プロセスの制御
により、セルロースゲル内の架橋点密度を
変えることができる。
架橋点密度の違いは、
セルロースハイドロゲルの圧縮強度および
変形率を大きく変化させる。セルロースゲ
ル内の架橋点構造解析を行い、さらに得ら
れたセルロースゲルの構造と力学特性との
相関を解明する。平成 29 年度は、平成 28
年度に確立したセルロースゲル内のナノ構
造制御手法を利用し、圧縮・延伸によるセ
ルロース鎖間の水素結合形成による高強度
化に関する検討を行う。圧縮延伸速度・温
度を系統的に変化させ、得られる圧縮延伸
セルロースゲル・繊維のナノ構造解析およ
び力学特性解析を実施する。

4.研究成果


ネットワークを解裂することができ、イオ
ン性液体中にセルロース鎖を分子分散する
ことができる。セルロース鎖に溶媒和した
イオン性液体を除去することによって、部
分的にセルロース鎖間が水素結合し三次元
ネットワーク構造を形成することによって
ゲル化する。貧溶媒中でイオン性液体を置
換すると、ゲル内での架橋点密度の不均一
化(ゲル表面の密度が高い)が生じる。こ
れに対し、セルロース溶液内に貧溶媒の蒸
気を拡散させると、溶液全体で溶媒置換が
起こり溶液全体で架橋点が形成する。その
結果、溶液の体積を維持したまま溶液全体
をゲル化することができる。この架橋点形
成過程は、溶液温度および貧溶媒蒸気濃度
によって変化する。セルロース溶液粘度が
温度によって大きく変化することがわかっ
ており、温度変化によってセルロース鎖の
運動性を変えることができる。そこで、ゲ
ル化温度を 0-60℃(60℃以上ではセルロー
スの分解が生じる)まで変化させ、架橋点
密度の違うセルロースゲルを調製した。さ
らに、貧溶媒蒸気濃度変化による架橋点密
度変化についても検討を行った。さらに、
水晶発信子を用いた揮発性有機化合物発生
装置を用い、1-2000ppm の一定濃度のメタ
ノール蒸気を発生させセルロース溶液温度
およびメタノール蒸気濃度変化による架橋
構造制御を行った。条件変化によって、ゲ
ル強度に大きな変化が見られ、内部構造制
御が可能であることを見出した。

図4 中空糸の SEM 写真

図3. 架橋密度向上による高強度化

イオン性液体中にセルロースを溶解させる
ことによって、セルロース鎖間の水素結合

セルロースのイオン性液体による構造初
期化を行い、その後の成形手法を開発し再
生セルロース内のナノ構造制御および得ら
れたセルロース材料の水処理膜および電気
2重層キャパシタのセパレーターへの展開
を行った。これまでに見出したセルロース
のイオン性液体溶液へのメタノール蒸気に
よるゲル化手法を元に、中空糸およびナノ
ファイバー化に関し検討を進めた。2重構

造を持つノズルを用い中心にメタノールお
よび外側にメタノール蒸気にセルロース溶
液を晒したところ、内部に密なセルロース
層をもつセルロース中空糸の成形に成功し
た。電子顕微鏡観察により得られた中空糸
には内側および外側共に物理的な孔はなか
った。しかしながら、中空糸の外側はほぼ
アモルファスであったのに対し、内側はわ
ずかに結晶化のピークが得られたことから、
溶液と蒸気の違いによってセルロース密度
の異なる非対称性を付与できた。得られた
中空糸の透水性評価を行ったところ、別手
法で得られた再生セルロース中空糸と比較
して透水量は若干低いものの、色素および
マグネシウムイオンの排除率に優れている
ことがわかった。さらに、ナノファイバー
化と不織布化を行い電気2重層キャパシタ
のセパレータ部への展開を行った。キャパ
シタ性能の低下なく通常の不織布と比べ電
解液の保持に優れていることを見出した。
本手法は、イオン性液体を利用することに
よって天然資源であるセルロースを様々な
形態に成形することができる。しかし、本
研究を通じ得られたセルロース材料の耐環
境性が課題であることがわかった。

5.主な発表論文等
〔雑誌論文〕
(計1件)
① T. Shii, M. Hatori, K. Yokota, Y. Hattori,
M. ...

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