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Footprint-freeで高品質なイヌiPS細胞の作製と胚体内胚葉への誘導に関する研究

塚本 雅也 大阪府立大学 DOI:info:doi/10.24729/00017721

2022.07.05

概要

緒言
 多能性関連遺伝子を体細胞へ導入して作製するiPS細胞は、自己複製能と多分化能をもち、ヒト再生医療へ応用されている。また、遺伝性疾患患者由来iPS細胞は、病態再現を介して、病態解明および創薬研究に有用である。一方、獣医療でも応用を目指し、イヌiPS細胞が多く作製されてきた。しかし、それらは宿主細胞ゲノムを傷害するウイルスベクターで作製され、細胞のがん化など安全性に問題があった。また、既報のイヌiPS細胞は、ヒトやマウスでiPS細胞としての必須条件であるテラトーマ形成能をもたず、品質にも問題があった。そのため、安全性が高く高品質なイヌiPS細胞の作製が求められている。
 センダイウイルスベクターは宿主細胞質内で複製・転写・翻訳が行われ、細胞からの除去が可能である。このため、宿主細胞ゲノムへの傷害がないFootprint-freeなiPS細胞作製手法として、ヒトで用いられている。また、体細胞の効率的な初期化には、複数の多能性関連遺伝子がバランスよく発現する必要がある。センダイウイルスベクターは、複数の遺伝子をひとつのベクターに搭載可能で、高品質なiPS細胞を安定的に作製できる。
 一方、犬炎症性腸疾患は遺伝的背景などが病因として挙げられるが、詳細な発症機序は不明である。炎症性腸疾患の罹患犬に由来するiPS細胞を消化管組織へ誘導することで、その病態解明に応用できると考えられる。ヒト消化管組織は、iPS細胞から胚体内胚葉(definitive endoderm: DE)を介して誘導される。しかし、イヌiPS細胞からのDE誘導方法は明らかではない。
 そこで本研究では、センダイウイルスベクターを使用して、Footprint-freeで高品質なイヌiPS細胞作製を試みた。また、イヌiPS細胞からのDE誘導方法を検討した。

第一章 センダイウイルスベクターを用いたイヌiPS細胞作製
 センダイウイルスベクターであるSeVdp(KOSM)302Lは、ヒトKLF4、OCT3/4、SOX2、C-MYC(4因子)を導入できる。また、iPS細胞で発現するmicroRNA-302により複製が阻害され、自動的に除去される。本章ではSeVdp(KOSM)302Lを用いたイヌiPS細胞作製を試みた。

● 第一節 イヌ胎子線維芽細胞からのiPS細胞作製
 イヌ胎子線維芽細胞(canine embryonic fibroblasts: CEF)へSeVdp(KOSM)302Lによりヒト4因子を導入した。その後、マウス胎子線維芽細胞(mouse embryonic fibroblasts: MEF)上へ再播種し、iPS細胞用培地で培養した。その結果、初代iPS細胞コロニーが得られ、初期化効率は0.02%であった。RT-PCRでベクターの除去が確認された2つのイヌiPS細胞株は、未分化マーカーを発現しており、胚葉体形成後は三胚葉マーカーを発現した。また、免疫不全マウスの精巣被膜下へ移植後、本イヌiPS細胞はテラトーマを形成した。さらに核型解析により、正常核型を示した。
 以上より、SeVdp(KOSM)302Lを用いて、CEFからFootprint-freeで高品質なiPS細胞を作製した。

● 第二節 イヌ末梢血単核球からのiPS細胞作製
 採血で分離可能なイヌ末梢血単核球へSeVdp(KOSM)302Lによりヒト4因子を導入した。MEF上へ再播種し、iPS細胞用培地で培養を続けた。その結果、ベクターが除去された1つのイヌiPS細胞株を得た。本イヌiPS細胞は未分化性とin vitroでの多分化能を有していたが、テラトーマ形成能をもたなかった。
 以上より、SeVdp(KOSM)302Lを用いてイヌ末梢血単核球からFootprint-freeなiPS細胞を作製した。しかし、高品質なイヌiPS細胞作製には、さらなる条件検討の必要性が示唆された。

第二章 ステルス型センダイウイルスベクターを用いたイヌiPS細胞作製
 ステルス型センダイウイルスベクター(stealth RNA vector: SRV)は、従来のセンダイウイルスの免疫源性を軽減したもので、効率的にヒト体細胞を初期化できる。生物種特異的な多能性関連遺伝子の導入や、上述の4因子にLIN28とNANOGを追加した6因子導入も、効率的な初期化に有用である。また、初期化を促進する低分子化合物と無血清iPS細胞培地のStemFitが、イヌ末梢血単核球からの高品質なiPS細胞作製に有用である。本章ではイヌ6因子を搭載したSRVと低分子化合物、StemFitを用いてイヌiPS細胞作製を試みた。

● 第一節 イヌ線維芽細胞からのiPS細胞作製
 2種類のSRV(159cfと162cf)でCEFおよび成犬線維芽細胞(caninedermalfibroblasts:CDF)へイヌ6因子を導入した。MEF上へ再播種後、CEFにはMEK阻害剤、GSK3β阻害剤、TGFβ阻害剤およびRock阻害剤(4 small molecules: 4SM)を、CDFには4SMに加えてアスコルビン酸、フォルスコリン(6 small molecules: 6SM)を添加したN2B27培地で4日間培養した。その後、StemFitで培養すると、CEFから初代iPS細胞コロニーが複数得られた。159cfと162cf使用時の初期化効率は、0.120%と0.187%であった。またCDFからも複数の初代コロニーを得た。siRNA処理を経てSRVが除去されたiPS細胞は未分化性、in vitroでの多分化能および正常核型を有していた。さらに、複数のイヌiPS細胞はテラトーマ形成能を有していた。
 以上より、SRVでイヌ6因子を導入し、低分子化合物とStemFitを使用して、イヌ線維芽細胞からFootprint-freeで高品質なiPS細胞を効率よく作製した。

● 第二節 イヌ尿由来細胞からのiPS細胞作製
 尿から分離したイヌ尿由来細胞(urine derived cells: UC)へSRVによりイヌ6因子を導入した。CDFと同様の条件で初期化すると、初代iPS細胞コロニーを多数得た。159cfと162cf使用時の初期化効率は、最大で1.58%と2.43%であり非常に高かった。siRNA処理を経てSRVが除去されたイヌiPS細胞は未分化性、in vitroでの多分化能、テラトーマ形成能および正常核型を有していた。
 以上より、SRVによりイヌ6因子を導入し、6SMとStemFitを使用して、イヌUCからFootprint-freeで高品質なiPS細胞を非常に効率よく作製した。

● 第三節 Feeder-free条件でのイヌiPS細胞作製
 MEFなどの異種由来成分は、生体投与時に未知の感染症や免疫拒絶のリスクを増加させる。そこで、MEFを使用しないFeeder-free条件下でイヌiPS細胞を作製した。Feeder-free培養システムであるDEF-CSを用いて、イヌ6因子導入CEFおよびイヌUCを培養した。その結果、複数の初代iPS細胞コロニーが得られた。siRNA処理を経てSRVが除去されたiPS細胞は未分化性、in vitroでの多分化能を有していた。さらに、CEF由来iPS細胞はテラトーマ形成能と正常核型を有していた。
 以上から、SRVでのイヌ6因子導入により、Feeder-free条件下でもイヌiPS細胞を作製した。

第三章 イヌiPS細胞から胚体内胚葉への分化誘導法の検討
 ヒトでDE分化に使用される高濃度Activin Aを用いて、イヌiPS細胞からDEを誘導した。Matrigelをコートした培養皿上へ、イヌiPS細胞を1.0×104~8.0×104/cm2で播種した。48時間後から、100ng/mL Activin AとFBSを含むDE分化培地で3日間培養した。その結果、1.0×104/cm2で播種時、イヌiPS細胞は敷石状へ形態変化し、フローサイトメトリ解析および免疫染色でDEマーカーを発現した。またDE誘導時の培養期間および播種細胞密度を検討した結果、96時間培養および5.0×103/cm2の播種密度でDE誘導効率が高かった。続いて5.0×103/cm2で播種したイヌiPS細胞をMatrigelでサンドイッチ培養した後、96時間DEを誘導した。その結果、免疫染色でOCT3/4陽性細胞が減少した。さらに、FBSを血清代替物(Knockout serum replacement:KSR)に変更すると、DE誘導効率は64.32%に向上した。
 以上より、至適密度で播種したイヌiPS細胞をMatrigelでサンドイッチ培養後、KSR添加DE分化培地で培養することにより、効率的にDEを誘導した。

総括
1. SeVdp(KOSM)302Lを用いたヒト4因子導入により、CEFからFootprint-freeで高品質なiPS細胞を作製できる。
2. 1.と同様の方法で、イヌ末梢血単核球からFootprint-freeなiPS細胞を作製できる。しかし、そのイヌiPS細胞はテラトーマ形成能をもたず、低品質である。
3. SRVを用いてイヌ6因子を導入し、4SMまたは6SMとStemFitを用いることで、CEFとCDFからFootprint-freeで高品質なiPS細胞を効率よく作製できる。
4. 3.と同様の方法で、イヌUCからFootprint-freeで高品質なiPS細胞を非常に効率よく作製できる。
5. SRVを用いたイヌ6因子導入により、CEFとイヌUCからFeeder-free条件下でiPS細胞を作製できる。
6. 至適密度で播種したイヌiPS細胞をMatrigelでサンドイッチ培養後、KSR添加DE分化培地で培養することにより、効率的にDEを誘導できる。

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