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大学・研究所にある論文を検索できる 「Effects of light quality on the growth and flowering in Phalaenopsis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Effects of light quality on the growth and flowering in Phalaenopsis

YOGENDRA GHARTI MAGAR 東京農業大学

2021.09.24

概要

ファレノプシス(Phalenopsis)は,日本,欧米で鉢物としての需要が高いラン科植物の一つである。その開花生理については 1970 年代以降に精力的に研究が進められ,栽培温度,日射量,施肥管理などが生長・開花に及ぼす影響が明らかにされた。ファレノプシスの花成誘導温度は 20~25℃と狭い温度帯にあり,高品質生産のためには必要十分な光量を与えることが必要である。これらの知見が営利生産現場に導入され,日本ではヒートポンプ冷暖房,保温カーテン,遮光カーテンなどを組み合わせた高度な環境調節技術を用いて周年で開花誘導を行い,主にギフト用鉢物として出荷されている。しかし,近年の異常気象(異常高温,春・秋期の曇天による寡日照)によりファレノプシスにとっての適正環境の維持が難しくなってきた。冷暖房効率を高めるには遮光カーテン,保温カーテンの利用が必須であるが,これらのカーテン類は日射を遮るため光量が不足がちとなる。ここ数年続く酷暑の夏期は強い遮光を行わないと開花誘導温度の維持が出来ないため,必要な光量を確保できず開花の遅れや鉢物としての品質の低下(開花輪数の減少,小花のサイズダウンなど)が起きている。この対策として不足する日射を補うための人工光による補光がある。従来の光源は発熱が大きく施設内での利用が困難であったが,近年高輝度化が進む発光ダイオード(LED)は低発熱光源で,その利用が期待される。しかし,LED ランプには様々なタイプがあり,生産に用いる補光光源として利用するための基礎的知見がほとんどなかった。そこで,本研究では, LED の利用を前提とした環境調節技術の開発を目的に,ファレノプシスの生長・開花に及ぼす光質の影響を解明し,営利生産現場で利用可能な LED ランプの選定と LED 補光の実地試験を行った。

第1に,ファレノプシスの生長・開花に及ぼす光質の影響を,完全閉鎖環境下で LED 光源のみで栽培して調査した。青,緑,黄,赤,遠赤の 5 種類の LED を用い,白色蛍光灯を対照区とした。照射施設が限られるため試験には小型の原種を供試したが,現在の営利品種 の重要な育種親の一つで,営利栽培にも用いられている Phalaenopsis amabilis を選択した。その結果,青・黄 LED 光は開花を抑制し,赤 LED 光は開花を促進した。これまで長期に わたって光質の影響をみた例がなかったので,この試験を数年間継続したが,それぞれの光 質の影響は継続してみられた。また,長期の光質照射を続ける中で,光合成には無効な遠赤 LED 光下で頻度は低いものの継続して開花がみられ,遠赤光には赤色光とは異なる開花誘 導促進効果があると思われた。また,草姿にも光質は強く影響し,青 LED 光下では花茎は 短く直立し,小花数は少ないものの着生方向が揃い観賞性が高かった。赤 LED 光下では花 茎は長く横走し,小花数は多いものの各小花が背きあい観賞性が劣った。

第 2 に,第 1 で得られた結果を基に実験温室下の Phal. amabilis に,日射に加え各種 LEDを用いて補光を行った。昼間補光は 6:00~22:00 の 16 時間,夜間補光は 16:00~22: 00,2:00~8:00 の計 12 時間とした。夜間補光で 22:00~2:00 消灯したのは,ファレノプシスは CAM 型光合成を持つ植物で,終夜照明を行うと代謝が乱れ著しく開花を阻害するためである。用いた LED は,青,青緑,緑,黄,赤,温白色の 6 種類とした。春~夏期の結果では,第 1 の結果と同様,昼間・夜間補光の双方とも赤 LED 光下では花茎が長く小花数が多く,開花が早まる結果となった。また,青 LED 光下では花茎が短く,小花数は少なかった。温白色 LED 光下では,赤 LED 光と青 LED 光の中間的な値を示した。この試験でも栽培を継続して,長期照射の影響を検証しようとしたが,実験温室(厚木市)は空調設備がなく夏期は猛暑となり,株の消耗が激しく,その影響からか夏期後の株の反応には差がみられなかった。

第 3 に,営利栽培温室での利用を前提とした補光効果を検討した。すなわち,補光に用いる光源として,単色の LED 光は光質の影響は強く表れるものの照射下での作業は困難で,また,高輝度タイプのランプは研究用にのみ作成されており,営利生産に用いるには広く市販されている照明用白色 LED に準拠するランプが適切と判断した。白色 LED は殆どのものが高輝度青 LED に蛍光体を被せて白色としたもので,蛍光体により照射光の光質が異なる。ファレノプシス生産に適切な白色 LED を選択するために以下の実験を行った。供試材料は第 2 と同じ Phal. amabilis とし,第 2 の条件で昼間補光を行った。試験区は無補光を対照とし,冷白色(5,000K)および温白色(2,700K)LED の 3 区とした。その結果,いずれの白色 LED 光も花成反応を促進したが,冷白色に比べて温白色 LED の方が発生する花茎数が著しく多かった。これは,温白色 LED 光は冷白色 LED 光よりも赤色光成分を多く含み,第1,第 2 の結果でみられた赤色光の花成促進効果がより強く表れた結果と考えられた。

第 4 に,第 3 で得られた結果を基に,営利栽培温室(神奈川県座間市)に実際に冷白色,温白色 LED を設置し,主要営利栽培品種である Phalaenopsis Sogo Yukidian V3 への昼間補光効果を検討した。当該営利温室は,近隣に高層の配送センターが建築されたことにより日照不足で品質低下が生じていた。その問題となっている温室内に第 3 で用いたものと同じ 2 種類の LED を設置し,補光効果を比較した。冷白色,温白色 LED のいずれも無補光に比べ花成反応が促進され,花茎発生が早まり,小花数が増え,小花サイズが増大した。この促進効果は,温白色 LED 光で顕著にみられ,寡日照下での早期開花,品質向上に寄与することが明らかになった。

以上の結果から,開花誘導温度下にあるファレノプシスへの LED 補光は寡日照下での花成促進,品質向上に有効であり,営利栽培に利用する際には白色 LED の中でも赤色光成分の多い 2,700K 前後の色温度をもつランプ(青 LED 素子に蛍光体を被覆)を用いることがさらに有用であることが明らかになった。この研究成果で,営利栽培温室での設置が始まっている。

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