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大学・研究所にある論文を検索できる 「施設栽培条件下における短期栽培トマトの乾物生産解析に基づく収量および糖度モデルの構築と実証」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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施設栽培条件下における短期栽培トマトの乾物生産解析に基づく収量および糖度モデルの構築と実証

伊藤, 瑞穂 筑波大学

2021.08.02

概要

トマト短期栽培とは,1~3 段程度の果房を残して摘心する短期栽培を繰り返す栽培方法で,年間に複数回改植を行うことで周年生産が可能になる。生産現場では、高糖度トマトで先んじて普及していたが、ここ数年は普通トマトの大型拠点も生産を開始し、国内の様々な地域で栽培が行われている。近年,トマトでは,収量に影響を及ぼす要因(収量構成要素)に基づく,植物の乾物生産解析が行われており、トマトの生育・収量予測に活用されている。また、この予測結果を図示し、見える化するツールの開発も行われているが、短期栽培では、乾物生産の知見が乏しいため、生育・収量の予測も、ツールの利用もできない。そこで本研究は、2014 年から 2016 年に宮城県山元町で行われたトマト短期栽培の大規模実証事業で得たデータを用いて、収量構成要素の解析を行い、短期栽培の普通および高糖度トマトの乾物生産の特徴を明らかし、そこから収量モデルを作成、検証した。

初めに、普通トマト6作の乾物生産解析を行うと、いずれの作でも総乾物生産量は積算受光量と有意な正の相関がみられ、作ごとの光利用効率は平均日中 CO2 濃度と有意な正の相関がみられた。このことから、短期栽培であっても、CO2濃度の向上が収量向上に効果的であることが明らかになった。一方で、光利用効率は多段栽培よりも低く、早期の摘心によるシンク強度の低下が光利用効率を多段栽培よりも低下させるのではないかと考えられた.

次に、CO2 濃度と光利用効率の関数を作成し、そこから光利用効率を予測し、実測積算受光量と予測光利用効率から総乾物生産量(収量)の予測を行うモデルを作成すると、多段栽培と同様に収量の予測が可能だった。一方で、CO2 濃度が関数の範囲内の場合は高い精度で総乾物生産量を予測できたが、範囲外の場合は低く予測されることが明らかになった。予測精度を向上するには,より広範囲の CO2 濃度で光利用効率を計測し,再度関数を作成する必要があると考えられた.また、不完全な灌水によって作物の生育が阻害された作では実測よりも高く予測され栽培に不備がある場合も正しく予測できないことが明らかになった。

培養液の EC 操作による塩類処理で生産した高糖度トマト 3 作の解析では、塩類処理が収量構成要素の階層構造に及ぼす影響を調査した.その結果,果実糖度と果実乾物率は,塩類処理によって有意に大きく、果実新鮮重は有意に小さくなった。一方、処理区間で、果実乾物重、総乾物生産量、乾物果実分配率、光利用効率、積算受光量、葉面積指数に差は見られなかった。このことから、塩類処理による乾物生産の低下はみられず、果実乾物率の向上によって、果実糖度の向上と、果実新鮮重の低下が引き起こされていることが明らかになった。また、乾物生産に低下がみられなかったとこから、高糖度トマト栽培でも、普通栽培で作成した収量モデルが適用できることが明らかになった。

本研究およびこれまでの研究の結果を合わせて考えると,塩類処理による収量低下について,少なくとも二つの閾値があり,最初の閾値は給水を制限し,二つ目の(より高い)閾値は乾物生産を制限すると考えられる.従って,養液の EC を一つ目と二つ目の閾値の間に管理できたならば,収量の低下を最小限にして果実糖度を高めることができると考えら、本研究の EC 操作では、それが可能だったと考えられた。

以上の結果から、短期栽培を活用した普通トマトおよび高糖度トマトの収量構成要素を解析することにより,短期栽培の乾物生産の特徴を明らかにした.さらに,乾物生産に基づく収量モデルの構築を行い,短期栽培であっても、多段栽培と同様の方法で、普通トマト・高糖度トマトで収量予測が可能であることを示した。今後は多段栽培で活用されている生育・収量予測ツールが短期栽培でも利用できるようになることが期待される。本研究で構築したモデルやツールの活用には、いずれも圃場への環境計測機器および環境制御機器の導入が欠かせないが、近年はこれらの生産現場への普及が広がっている。従って、本研究で開発した知見は研究現場だけでなく,生産現場でも十分実用可能になっている.今後は、本研究の成果を活用することで,短期栽培を導入している生産現場での収量向上や作業時間の把握などの生産性向上に寄与できることが期待される

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