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書き出し

類似度に基づくXANES分析による金属錯体の構造推定

福, 健太郎 東北大学

2023.03.24

概要

博士論文

類似度に基づく XANES 分析による
金属錯体の構造推定
Structure Estimation of Metal Complexes by
XANES Analysis Based on the Similarity



健太郎

令和 4 年

金属錯体は、金属イオンに配位子と呼ばれる分子が結合することで構成される物質群であり、金属イ
オンの示す多彩な性質に加えて、配位子の調整による物性のコントローラビリティから、触媒や太陽電
池など様々な分野で応用されている。錯体の構造、特に配位環境はその錯体の機能性や物性に密接に関
係していることが知られている。一方で、錯体の配位環境を分析する手法はほとんどが単結晶 X 線回折
による構造解析であり、反応中間体や表面・界面といった単結晶を得ることができない系においては、
直接的な構造推定は困難であった。
このような X 線回折が利用できない物質系で有用な構造推定手法として注目されているのが
XAFS(X-ray Absorption Fine Structure)である。XAFS は X 線の吸収スペクトルに現れる微細な波状構
造を分析する X 線分光法の一種であり、吸収端近傍の XANES(X-ray Absorption Near-Edge Structure)
と EXAFS(Extended-XAFS)から構成される。この中でも、XANES は配位環境の対称性や電子状態など
に敏感であることや、測定可能な条件が非常に幅広いことから錯体の構造推定に非常に適していると考
えられる。しかし、XANES スペクトルのシミュレーションのコストの高さやスペクトル解析による特
徴量の抽出のむずかしさといった問題から、錯体化学においては参照サンプルと比較する“指紋照合”的
な分析がほとんどであり、かつその分析も殆どが XAFS のプロによる“職人芸”であった。
近年、スペクトル分析に機械学習を用いた分析手法が数多く報告されてきている。機械学習とは人工
知能(AI)研究の一分野で、大量のデータからパターン認識やデータ処理の最適化を機械に行わせること
で、特徴量の抽出やパラメータの予測を行う手法である。これをスペクトル分析に用いることで属人性
を廃した客観的な分析が可能になり、また物理量などとの関連性を見出すことなどが可能となる。
本研究では、機械学習(データマイニング)の手法であるクラスタリング及び多次元尺度構成法(MDS)
を用いた XANES スペクトル分析による構造推定手法について報告する。
約 70 種の Ni 錯体について合成を行い、XAFS スペクトルを測定した。得られた XAFS スペクトルの
うち XANES 領域について、クラスタリング及び多次元尺度構成法(MDS)により分析を行った。クラス
タリングにおいては様々な距離(類似度)関数・連結法で分析を行ったが、コサイン類似度-完全連結法に
おいて配位数・配位元素を反映した分類を行うことに成功した(図 1)。得られたデンドログラムを分析
した結果、キレート環サイズや配位元素の化学環境によって明確に類似度が異なっており、配位環境の
歪みや配位子の配位の強さといった点についても分類できていることが確認された。また、MDS によ
って次元削減を行い、2 次元で可視化した。得られた 2 次元マップ上では配位数・配位元素によって明
確にグループが形成されており、配位数を反映した特徴量を抽出できていた。さらに、ユークリッド距
離を用いた MDS では、配位数だけでなく「配位の強さ」を示唆する特徴量が抽出された(図 1)。これら
のことから、従来の”専門家による指紋照合”的な分析をクラスタリング及び MDS によって代替・改善
し、容易に分析することが可能であることを示した。

図 1 クラスタリング及び MDS による XANES スペクトル分析結果

図 2 1Cu の構造及び 2Cu の合成と MDS による XANES スペクトル分析
本手法の実際の応用として、構造が未知である 1 次元錯体[Ni(dhbq)]及び半導体配位高分子
[Cu(NDIenpy)2]·5H2O の構造推定を試みた。1 次元錯体[Ni(dhbq)]については、クラスタリングによっ
てキレート配位子を有する酸素原子が 6 配位している錯体群にクラスタリングされ、類似度が高いスペ
クトルは[Ni(acac)2(H2O)2]と [Ni(hfac)2(H2O)2]であった。このことから、脱水後の構造は上下の別の
1 次元鎖の酸素が配位した 6 配位構造となっていると推定された。また、半導体配位高分子
[Cu(NDIenpy)2]·5H2O においては、Cu 錯体のシミュレーションデータを用いて同様に XANES スペク
トル分析を行った結果、2Cu の配位環境は平面 3 配位または直線 2 配位であることが明らかとなった。
今後、様々な基本的な金属錯体の実測・シミュレーション XANES スペクトルデータベースが構築さ
れれば、クラスタリングや MDS により構造推定を行うことができる。触媒反応や電気化学反応など、
様々な分野で鍵となる反応種の構造推定が可能になると期待される。 ...

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