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大学・研究所にある論文を検索できる 「第2世代薬剤溶出性ステント留置後の遠隔期におけるproximal edge 再狭窄の予測モデルの作成・評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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第2世代薬剤溶出性ステント留置後の遠隔期におけるproximal edge 再狭窄の予測モデルの作成・評価

上妻, 佳代子 東京大学 DOI:10.15083/0002002495

2021.10.15

概要

[目的]
 虚血性心疾患の治療を目的とした冠動脈インターベンション(PCI)において、冠動脈へのステント留置後の再狭窄が問題であったが、これはステント留置部の他にステントを留置した位置から5mm以内のエッジにおいても観測され、手技に左右され得るとされる。再狭窄は新生内膜の増殖過剰が原因であり、この増殖を抑制する薬剤を塗布した薬剤溶出性ステント(DES)の中でも現在主流となっている第2世代DESでは、まだエッジ再狭窄に関する多数症例による詳細な報告がなくその原因についても検討されてこなかった。
 これを踏まえ、本研究ではステント留置直後に施術の成功と冠動脈拡張の必要性を判断する方法の一つとして、ステント留置時にも用いる冠動脈造影画像で測定されるQCA(quantitative cardiovascular analysis)データを用いてエッジ再狭窄を予測する方法を提案する。このため、本研究では第2世代DES留置直後のQCA測定データから遠隔期における、DESでは薬剤の拡散の方向から再狭窄がより多いとされる上流側(proximal)のエッジ再狭窄を予測するモデルの作成とその評価を目的とし、1,000例以上の第2世代DESの市販後使用成績調査のQCA解析データを用いてエッジ再狭窄のリスク因子を同定し、これを基に予測モデルの作成を行った。

[方法]
 本研究において使用するデータは、第2世代DESとされるエベロリムス溶出性ステント(Everolimus-eluting stent: EES)の安全性と有効性を評価するため国内でこれらのDESを植え込んだ症例の予後及び臨床成績について検討し、前向き単群非ランダム化試験が実施された2つの他施設市販後使用成績調査(前向き単群非ランダム化試験)である。1つは2010年3月~2015年3月に登録されたCoCr(Cobalt-chromium)-EES4種(XienceV/Promus、Xience Prime、Xience Prime SV、Xience Xpedition, Abbott Vascular, Illinois, USA)に対する3,755病変、2,955症例のデータであり、もう一つは2012年8月~2013年4月に登録されたPtCr(Platinum-chromium)-EES2種(Promus Element、Promus Element Plus, Boston Scientific, Massachusetts, USA)に対する743病変、685症例のデータである。
 これらの冠動脈造影画像は各ステントメーカーによって収集され、コアラボラトリー・日本カーディオコア(株式会社キックコアラボ事業部,横浜市,日本)において同一のプロトコルに従い独立してQCA解析された。この解析は、ステント留置部(in-stent)、ステントの端から5mm以内のproximal edge、下流側(distal)edge、これらを統合したin-segmentそれぞれのsub-segmentにおいて、測定部位の長さ(mm)、参照血管径(mm)、最小血管径(mm)、狭窄率((術後参照血管径―最小血管径)/術後参照血管径)(%)の測定が術前、術後、フォローアップ時の三度行われ、フォローアップ解析はCoCr-EESでは8ヶ月後、PtCr-EESでは12か月後に行われた。
 解析除外対象は性別・年齢などの基本情報が欠測である病変、術後30日以内にステント血栓症によりフォローアップが行われた病変とし、初期治療不成功の症例を除外した。また、上流側の完全閉塞によりフォローアップ時の測定データが存在しないdistal edgeあるいはin-stentはフォローアップ時の状態が不明のため術後データも欠測であるものとみなした。
 本研究では再狭窄の定義を先行研究から遠隔期(8ヶ月または12か月後フォローアップ時)におけるsub-segmentの狭窄率が50%以上、この有無をエンドポイントとして、始めに第2世代DESにおける再狭窄のリスク因子を同定するため、CoCr-EESデータを予測モデル作成のためのデータセット(development set:以下、作成データセット)とし、proximal edgeおよび参考としてdistal edge、in-stentにおける再狭窄のリスク因子を先行研究から次の13変数、術後狭窄率、参照血管径、ステント径と血管径の差(絶対値)、病変の屈曲>45°、ステントのオーバーラップ(病変に対し複数のステントのオーバーラップ)、高血圧、冠動脈バイパス手術歴、インシュリン治療、PCI歴、透析治療、石灰化、年齢、性別について単変量、及び多変量ロジスティック回帰分析により検討した(in-stentにおいてはステント径と血管径の差を除いた12変数)。次に、先行研究を踏まえ、病変を変量効果として前述の13変数で補正し、ロジスティック回帰によりproximal edgeとdistal edgeにおける再狭窄リスクを比較した。
 続いて、同定したproximal edgeのリスク因子から4種の組み合わせを予測因子とし、作成データセットからproximal edge再狭窄の予測モデルを多変量ロジスティック回帰により作成し、その予測能を評価した。予測能は、1)Brierスコアによる総合的な性能(overall performance)、2)ROC(receiver operating characteristic)曲線とC-統計量による、イベントの有無の判別能(discrimination)、3)較正プロット(Calibration plot)、Calibration-in-the-large、較正スロープ(Calibration slope)による、予測された確率と実際の発生確率がいかに近いかという較正(Calibration)を用いて比較した。ここで、作成データセットによくあてはまりその他のデータへのあてはまりがよいとは限らない過学習(overfitting)によるモデルの過大評価(optimism)の補整のため、イベント数が少ないことからブートストラップ標本(bootstrap sample)を用いて評価指標を補正した。さらにPtCr-EESデータを予測モデル評価のためのデータセット(validation set:以下、評価データセット)として外部検証により予測能を評価し、予測モデルを構成する予測因子を決定した。
 この結果を基に予測モデルの作成と報告の指針(TORIPOD)による提案を参考に予測モデルの更新を行い、本研究においては作成データセットと評価データセットを統合したデータセットを用いて先と同様に予測モデルを作成し、このモデルの予測能を評価した。さらに、作成された予測モデルの意思決定における有用性について評価するために決定曲線解析(Decision curve analysis)を行った。

[結果]
 リスク因子の検討について適格基準を満たしたのは作成データセット1,966病変(1,687名)であった。再狭窄のリスク因子を検討した結果、proximal edgeでは術後狭窄率、参照血管径、屈曲≥45°(ただし逆方向)、ステントのオーバーラップが有意なリスク因子と同定された。尚、推定した結果から、distal edgeに比較してproximal edgeにおける再狭窄の可能性は有意に高い推定となった(オッズ比5.26,95%信頼区間2.70-11.11p<.001)。
 予測モデル作成にあたって、適格基準を満たしたのは作成データセット1,463病変(1,634名)、評価データセット419病変(397名)であった。同定されたリスク因子の4種の組み合わせによる予測モデルのAIC及び予測評価指標から参照血管径及び術後の狭窄率を予測因子として予測モデル作成することとし、2変数により作成された予測モデルでは、proximal edgeにおける再狭窄の起きる確率は

再狭窄確率= exp(−2.618−0.826×参照血管径(mm)+0.080×狭窄率(%))/1+exp(−2.618−0.826×参照血管径(mm)+0.080×狭窄率(%))

で求められる結果となった。
 作成された予測モデルを用いて作成データセットと評価データセットにおいて予測評価の指標を求めたところ、作成データセットにおいて1,000セットのブートストラップ標本を用いて過大評価を補正した評価指標(95%信頼区間)は、Brierスコア、C統計量、calibration-in-the-large、較正スロープ、較正スロープ(logit)がそれぞれ0.03(0.03,0.03)、0.75(0.75,0.75)、0.00(0.00,0.00)、1.00(0.97,1.02)、0.99(0.980.99)と高いあてはまりを示し、過大評価は低く推定された。一方、評価データセットを用いた外部検証においては、それぞれ0.02、0.81、0.02、0.47、1.03であり、較正スロープから予測確率と観測確率の適合はよいとは言えなかった。尚、除外したステントオーバーラップを含めた予測モデルの作成では補正後の各評価指標が0.03(0.03,0.03)、0.76(0.75,0.76)、0.00(0.00,0.00)、1.01(0.99,1.02)、0.97(0.96,0.98)であり、屈曲を含めた場合ブートストラップ標本によるロジスティック回帰分析で推定が収束しない標本が1,000セット中1/3程度あった。
 これらの結果を踏まえ、二つのデータセットを統合して予測モデルを更新する判断をしたところ、予測確率は

再狭窄確率= exp(−2.909−0.759×参照血管径(mm)+0.080×狭窄率(%))/1+exp(−2.909−0.759×参照血管径(mm)+0.080×狭窄率(%))

で求められる結果を得た。この予測モデルの過大評価を補正した評価指標(95%信頼区間)は、同様にBrierスコア、C統計量、calibration-in-the-large、較正スロープ、較正スロープ(logit)がそれぞれ0.03(0.03,0.03)、0.76(0.76,0.76)、0.00(-0.00,0.00)、0.98(0.97,0.99)と高いあてはまりを示した。また、決定曲線解析の結果より、この予測モデルを用いて0.23未満を閾値とし、それ以上の予測確率の場合にステントの追加等の措置を行うことを決めた場合に実質的な利益があるとの結果を得た。

[考察]
 リスク因子の検討に関しては、proximal edgeにおける再狭窄のリスクがdistal edgeよりも高いことが観測され、ステントの改良によりエッジ再狭窄の主なリスク因子は術後の狭窄率であり、術後のエッジにおける狭窄率が、ステントが病変を覆いきって留置することの目安となり得ることを改めて示した。
 予測モデル作成においては、予測因子の選定として、オーバーラップを除いた場合に大きく予測能が劣化しないことが確認され、屈曲を含んだ場合には不安定な予測モデルの可能性が示唆され、術後狭窄率と参照血管径の2変数による予測モデルに大きな問題はないと考えらえた。
 予測モデルの更新方法に関しては、特に検証データセットでイベント数が少ない、作成データセットと評価データセットでは再狭窄の割合に有意な差がない、評価指標の数値上予測モデルの著しい過大評価が見られない、作成データセットと評価データセット間で予測モデルに若干の相違がある、などから統合データによる予測モデルの再構成を行い最終モデルとした。このためさらなる追加データによる外部検証が望ましいと思われる。

[結論]
 第2世代DESとされるCoCr-EESのステント留置後8ヶ月の血管造影画像のQCA測定結果を用いて、proximal edgeにおける再狭窄のリスク因子を検証し、これをもとにエッジ部の参照血管径、術後残存狭窄率を予測因子として再狭窄を予測するモデルを作成し、PtCr-EESのステント留置後12か月のデータを用いて外部検証を行った後、これらのデータセットを統合して予測モデルの更新を行ったところ、ブートストラップ標本を用いて過大評価を補正した評価指標においてC-統計量が0.76と高い判別能を得ることができた。

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