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Stoma creation is associated with a low incidence of midline incisional hernia after colorectal surgery: the “fighting over the fascia” theory concerning the incision and stoma hole

大原, 規彰 名古屋大学

2023.07.04

概要

主論文の要旨

Stoma creation is associated with a low incidence of
midline incisional hernia after colorectal surgery:
the “fighting over the fascia” theory concerning the
incision and stoma hole
結腸直腸癌手術後ストーマ造設症例における
正中腹壁瘢痕ヘルニアと傍ストーマヘルニアの因果関係:
正中切開創とストーマ造設部における「筋膜の奪い合い」理論

名古屋大学大学院医学系研究科
病態外科学講座

総合医学専攻

腫瘍外科学分野

(指導:江畑 智希
大原 規彰

教授)

【緒言】
腹壁瘢痕ヘルニア(IH)は、結腸直腸癌切除症例の 2-21%に発生する頻度の高い合併
症の一つである。また、ストーマを伴う結腸直腸癌切除術後において、傍ストーマヘ
ルニア(PH)の発生率は 5-78%と IH よりも高率に発生すると報告されている。ヘルニ
アの併発は、QOL の低下を引き起こすだけでなく、時にヘルニア嵌頓を併発する可能
性があり、リスク因子を把握し、発生防止に努めることが重要である。報告されてい
るヘルニア発生のリスク因子は 2 つに大別され、高齢や術後創感染などの腹壁の脆弱
性因子と、肥満や COPD などの腹圧の亢進因子が挙げられる。多くの研究では IH・PH
それぞれの検討がなされてきたが、両者の発生メカニズムと因果関係を明らかにする
ことが必要である。
本研究では、正中創閉鎖時におけるストーマ内側への筋膜の牽引がストーマ孔を広
げ、PH の発生率を増加させる、すなわち「筋膜の奪い合い」理論と、PH 発生が腹圧
を低下させ、その後の正中創 IH の発生率を低下させるという仮説を立て、評価した。
【対象及び方法】
2006 年から 2016 年の間に当科で 994 例の原発結腸直腸癌根治切除術を施行した。
そのうち、ステージⅣであった 137 例、術前より IH を認めた 9 例、ストーマが造設
されていた 4 例、正中創以外で手術を施行した 48 例、退院後一度も外来通院のなかっ
た 1 例を除外した計 795 例を解析対象とした。非ストーマ群(n=606)とストーマ群
(n=189)の 2 群に分類し、さらにストーマ群は永久ストーマ群(n=97)と一時的ストー
マ群(n=92)に亜分類した。2 群間の比較は、Mann-Whitney U 検定または Fisher 検定を
使用して行い、p<0.05 は統計的に有意であるとした。
まず非ストーマ群における正中創 IH の発生率およびリスク因子を後方視的に解析
した。リスク因子は Cox 比例ハザードモデルを用いて分析し、抽出されたリスク因子
の数に応じてリスク分類を作成した。Kaplan-Meier 法を用いて正中創 IH および PH の
累積発生率を算出し、リスク分類ごとに Log-rank 検定を行うことで、ストーマ群にお
ける正中創 IH および PH の発生を予測できるか検討を行った。
正中創 IH および PH の発生は、3 ないし 6 か月ごとの腹部所見もしくは再発チェッ
クのため 6 ないし 12 か月ごとに施行された CT 検査により診断した。PH の発生部位
はストーマに対し内側、外側、頭側、尾側のいずれかに分類された。
【結果】
正中創 IH の発生率はストーマ群で 10 例(5.3%)、非ストーマ群で 76 例(12.5%)であ
り、ストーマ群において有意に低かった(p=0.005)。一方、PH はストーマ群で 22 例
(11.6%)に発生したが、そのうち 19 例が永久ストーマ群であった。しかし、後腹膜経
路でストーマ造設が行われた 19 例では PH の発生を認めなかった。
非ストーマ群で抽出されたリスク因子は高齢、女性、開腹術、BMI≧25kg/m2、表在
創感染の 5 つであった。リスク因子を 1 つも有さない症例は低リスク群(n=68)、リス

-1-

ク因子 が 1 ないし 2 個の場合 は中リ スク 群(n=415)、3-5 個の場合 は高 リスク 群
(n=123)とした。非ストーマ群における正中創の IH 累積発生率は有意差をもってリス
ク分類ごとに層別化されたが(図 1a)、ストーマ群の正中創 IH 発生率は層別化されな
かった(図 1b)。一方、永久ストーマ群における PH の累積発生率は層別化される傾向
にあった(図 1c)。
永 久 ス ト ー マ 群 に お け る PH の 発 生 部 位 は 、 ス ト ー マ に 対 し て 内 側 52.6%、 外 側
26.3%、頭側 10.5%、尾側 5.3%であった。1 例は身体所見のみで PH と診断されており、
発生部位は不明であった。
【考察】
永久ストーマ群において、PH は正中創 IH の 3 倍以上の発生率であった。また非ス
トーマ群から作成したリスク分類を外挿すると、正中創 IH ではなく PH 発生の予測に
有用である可能性が示唆された。これらの事実は、永久ストーマ造設患者においてス
トーマ周囲はヘルニアの好発部である事を示唆しており、さらに PH の先行発生が腹
圧を減少させることで IH 発生率の低下につながるという仮説を裏付けている(図 2a、
b)。しかし、肥満患者などでは、PH が発生しても腹圧の低下が不十分な場合に IH を
併発する、と考えられる(図 2c)。
PH 発生部位は、PH 発生メカニズムの究明に対し重要な手がかりとなる。本研究に
おいて PH の 52.6%がストーマ内側に発生していた。PH の発生部位について詳細に検
討した報告によると、PH の 77.6%がストーマ内側に発生した。PH がストーマ内側に
「筋膜の奪い合い」が生じているためと考えられた。すなわ
多く発生する理由として、
ち、正中創を閉じる際、筋膜を過剰に内側に牽引することで(図 3a)、ストーマ内側で
は筋膜とストーマとの間隙が生じやすく、PH の発生率上昇に関与していると考えた。
ヘルニアの発生を防止する対策について、第一に、予防的メッシュの留置という方
法が知られている。ヘルニアの高リスク患者に対するメッシュの予防効果は数多く報
告されているが、IH および PH 両者の予防について言及している報告はない。一方、
ストーマ造設経路による PH の発生率を比較検討した研究では、PH 発生率は経後腹膜
群で 6.4%と、経腹直筋群の 13.3 %に対し有意に低かった。本研究においても、後腹膜
経路で造設した永久ストーマ患者では PH 発生を 1 例も認めなかった。永久ストーマ
の場合、後腹膜経路でストーマを作成することで、ストーマ部のメッシュ使用を回避
できる可能性がある。
また、筋膜閉鎖法も予防策の1つである。多施設 RCT である STITCH 試験では、閉
創時の筋膜の bite と pitch をそれぞれ 5mm 群と 1cm 群に分類したところ、1 年後の IH
発生率は 5mm 群で 13%と、1cm 群の 21%と比較し有意に少なかった。small bite によ
る筋膜閉鎖は「筋膜の奪い合い」を最小限に抑制することで、IH だけでなく PH の発
生率も下げられる可能性がある(図 3b)。
さらに、皮膚の切開部位を変更することは、
「筋膜の奪い合い」を避ける手段の 1 つ
となる。正中切開に比べ、横切開は IH の発生率が少ないという報告があり、低侵襲手

-2-

術において切除標本を摘出する際に、横切開または Pfannenstiel 切開を用いることが
好ましいと考える。
小規模かつ単施設での後ろ向き研究であることは本研究の limitation である。加え
て、フォローアップ期間の間隔により IH、PH の正確な発生時期が断定できない点も
挙げられる。最後に、鼠径ヘルニア、会陰ヘルニア、食道裂孔ヘルニアを併発してい
る患者を除外しておらず、腹圧に影響を及ぼした可能性がある。IH と PH 相互の影響
と発生メカニズムの追及、そして予防法確立のため、ストーマ造設症例を対象とした
多施設前向き観察研究の実施が望まれる。
【結論】
非ストーマ群から作成されたリスク分類は、正中創 IH ではなく PH を予測するのに
有用であった。このことは、ストーマ造設部が最も脆弱な部位に相当し、ヘルニアの
好発部位であることを示唆している。
「筋膜の奪い合い」理論と腹圧の変化は、正中創
IH および PH 発生の因果関係を究明するための重要な手がかりとなる可能性がある。

-3-

図 1 a Cumulative incidence of incisional hernia in the non-stoma group (n=606), which is well stratified by risk
classification. b Cumulative incidence of incisional hernia in the stoma group (n=189), in which the risk classification
was completely useless. c Cumulative incidence of parastomal hernia in patients with permanent stoma (n=97)
according to the risk classification. The patients were stratified without significant differences but well balanced

-4-

図 2 Hypothesis concerning the mechanism of herniation from the perspective of changes in the abdominal pressure.
a Increasing abdominal pressure is a major cause of incisional hernia. b The first herniation induces subsequent
abdominal decompression, resulting in a reduction of risk for a second hernia. c Insufficient decompression after the
first herniation increases the risk of a second herniation

-5-

図 3 Hypothesis concerning the mechanism of herniation from the perspective of “fighting over the fascia”.
a Midline suture pulls the fascia toward the midline and widens the inner gap (green area) of the stoma.
b Small bite sutures may reduce inward traction, resulting in a limited gap at the inner side of the stoma

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