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大学・研究所にある論文を検索できる 「胃管再建における腹腔鏡下胸骨後経路作成の有効性と術後成績:傾向スコアマッチングによる後縦隔経路再建症例との比較」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

胃管再建における腹腔鏡下胸骨後経路作成の有効性と術後成績:傾向スコアマッチングによる後縦隔経路再建症例との比較

堀川, 学 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Efficacy and Postoperative Outcomes of
Laparoscopic Retrosternal Route Creation for
the Gastric Conduit: Propensity Score-Matched
Comparison to Posterior Mediastinal…
Reconstruction

堀川, 学
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8698号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485882
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Efficacy and Postoperative Outcomes of
Laparoscopic Retrosternal Route Creation for the Gastric Conduit:
Propensity Score–Matched Comparison to
Posterior Mediastinal Reconstruction
胃管再建における腹腔鏡下胸骨後経路作成の有効性と術後成績:
傾向スコアマッチングによる後縦隔経路再建症例との比較

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
食道胃腸外科学

(指導教員:掛地 吉弘教授)

堀川 学

胃管再建における腹腔鏡下胸骨後経路作成の有効性と術後成績:
傾向スコアマッチングによる後縦隔経路再建症例との比較
Efficacy and Postoperative Outcomes of Laparoscopic Retrosternal Route Creation for
the Gastric Conduit: Propensity Score–Matched Comparison to Posterior Mediastinal
Reconstruction
[背景と目的]
食道亜全摘術後の胃管再建経路には胸壁前経路、胸骨後経路、後縦隔経路があり、それぞれ
に利点と欠点を有する。このうち胃管による再建に基本的に用いられるのは後二者である。
後縦隔経路は食物の経路として生理的であり、再建手技も比較的容易である利点があるが、
その解剖学的位置ゆえに縫合不全発症時の重篤な縦隔炎や胃管気管瘻、また食道裂孔ヘル
ニアのような致命的術後合併症のリスクを有する。一方、胸骨後経路では再建胃管が胸骨後
腔に位置するため気管背側と直接接触せず、食道裂孔は縫合閉鎖するためこれらの合併症
を理論的には回避することができる。しかしながら、胸骨後腔は生理的には本来存在しない
空間であるため、剥離による作成を必要とする。この経路作成は従来、開腹のうえ用手的・
盲目的に行われていたが、その際の出血や胸膜損傷の可能性は胸骨後経路特有のリスクで
あり、可及的に減ずる必要がある。これらの観点から当科では、より低侵襲かつ安全な手技
をめざし 2019 年 9 月より腹腔鏡下胸骨後経路作成(Laparoscopic Retrosternal Route
Creation; LRRC)を考案、導入し報告した。
本研究では、低侵襲食道切除術(Minimally Invasive Esophagectomy; MIE)後の LRRC に
よる胸骨後経路再建の術後成績を検討し、その安全性と有効性を明らかにすることを目的
とした。
[方法]
2010 年から 2021 年までに神戸大学医学部附属病院において頸部吻合による一期的胃管再
建を伴う MIE を施行された 374 例を対象とした。このうち LRRC による胸骨後経路再建
症例は 62 例、後縦隔経路再建症例は 312 例であった。対象症例において年齢、性別、臨床
病期 T、術前リンパ節転移の有無、腫瘍主座、術前化学療法の有無、組織型を共変量とする
ロジスティック回帰を用いた最近傍法での傾向スコアマッチングを行い、腹腔鏡下胸骨後
経路再建群(Laparoscopic Retrosternal; LR)と後縦隔経路再建群(Posterior Mediastinal;
PM)間での周術期成績、合併症発生率、再建胃管機能の比較を行った。
[結果]
62 例の LRRC 施行症例は全例 LR 群(n = 62)に含まれた。傾向スコアマッチングの結果、
各 LRRC 症例に対応する 62 例の後縦隔再建症例を得た(PM 群、n = 62)


マッチング後の患者背景は、ロボット支援下手術が LR 群で有意に多く、頸部郭清を伴う三
領域リンパ節郭清が LR 群で有意に少なかった。また頸部吻合法に関して LR 群ではその大
部分がリニアステープラーによる三角吻合であった(三角吻合 58 例、手縫い吻合 4 例)のに
対し、PM 群では有意にバリエーションを認めた(三角吻合 44 例、手縫い吻合 12 例、サー
キュラーステープラー 6 例)が、その他は有意な差を認めなかった。
術後成績について、手術時間は LR 群で有意に長く、出血量は LR 群で有意に減少し(P<
0.001)、病理学的病期および術後在院日数に両群間で有意差は認めなかった。縫合不全率
(LR 24% vs. PM 19%)、肺炎発症率(LR 21% vs. PM 19%)、Clavien-Dindo 分類 G2 以上の
その他合併症率(LR 24% vs. PM 18%)に有意差はみられなかった。PM 群で胃管気管瘻(1
例)、食道裂孔ヘルニア(2 例)の発症を認めたが LR 群では発症なく、肺塞栓症については両
群でその発症率に差を認めなかった(LR 5% vs. PM 5%)。
再建胃管機能について、内視鏡的拡張術を要した術後吻合部狭窄率(LR 16% vs. PM 27%)
には有意差を認めなかった一方、逆流性食道炎に関する術後 1 年での再建胃管吻合部の内
視鏡所見(修正 Los Angeles 分類、>M)は LR 群で有意に良好であった(LR 群 2% vs. PM 群
15%, P=0.037)。
[考察]
LR 群での手術時間の延長と出血量減少はロボット支援下手術が多かったことが影響した
と思われる。術後成績について両群間に注意すべき差はみられず、LR 群では意図通りに術
後の後縦隔経路特異的合併症を回避できている。
術後 1 年での術後逆流性食道炎について、
LR 群で内視鏡的粘膜所見評価において有意に良好な結果が得られた。これに関して、胸骨
後経路再建では食道胃管吻合部は解剖学的に頸切痕やや頭側に位置することになる。同部
は胃管の胸郭からの出口となり狭小部であるため、胃管の過度の圧迫を避けるために十分
な剥離を行うが、一方でこの部位での適度な圧迫は、吻合部口側食道の粘膜変化を抑制する
可能性がある。胸骨後経路では後縦隔経路と比較して再建胃管長が短くてよいこと、縫合不
全発症時の管理が容易であること、異時性の胃管癌に対処しやすいことなどの利点を有す
る。これに加え、LRRC による胸骨後経路再建はその他合併症のリスクを増加させること
なく、より良好な再建胃管機能の維持に貢献しうる。
[結語]
LRRC による胸骨後経路再建は後縦隔経路再建と比較して術後合併症に遜色なく安全に施
行できる。また、後縦隔経路再建特有の合併症を回避でき良好な術後再建胃管機能をもたら
す可能性があり、有効である。

神戸大学大学院医学(
系)
研究科(博士課程)

論 文審 査 の 結 果 の 要 旨
甲第

3300 号



受付番号



堀川学

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胃管再建における腹腔鏡下胸骨後経路作成の有効性と術後成績 :傾

向スコアマッチングによる後縦隔経路再建症例との 比較

主 査
審査委員

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詞 吼\見/

(要旨は 1
, 000字∼ 2, 000字程度)

〔目的〕
食道亜全摘術後の胃管再建経路には胸壁前経路、胸骨後経路、後縦隔経路があり、それぞれに利点と欠
点を有する。このうち胃管による再建に基本的に用いられるのは後二者である。後縦隔経路は食物の経
路として生理的であり、再建手技も比較的容易である利点があるが、その解剖学的位置ゆえに縫合不全
発症時の重篤な縦隔炎や胃管気管痩、また食道裂孔ヘルニアのような致命的術後合併症のリスクを有す
る。一方、胸骨後経路では再建胃管が胸骨後腔に位置するため気管背側と直接接触せず、食道裂孔は縫
合閉鎖するためこれらの合併症を理論的には回避することができる。ただし胸骨後腔は生理的には本来
存在しない空間であるため、剥離による作成を必要とする。この経路作成は従来、開腹のうえ用手的・
盲目的に行われていたが、その際の出血や腹膜損傷の可能性は胸骨後経路特有のリスクであり、可及的

019年 9
に減ずる必要がある。これらの観点から本研究者らは、より低侵襲かつ安全な手技をめざし 2
月より腹腔鏡下胸骨後経路作成 (
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;LRRC)を考案、導入し報
告している。しかしながら、同手技による胸骨後経路再建を行なわれた症例において従来行われていた
後縦隔経路再建症例と比較し術後合併症、再建後胃管機能の観点から遜色がないかは不明のままであっ



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;MIE)後の LRRCによる胸骨後経
本研究では、低侵襲食道切除術 (M
路再建の術後成績を検討し、その安全性と有効性を明らかにすることを目的とした。
〔方法ならびに成績〕

I
. 方法
2010 年から 2021 年までに神戸大学医学部附属病院において頸部吻合による一期的胃管再建を伴う
MIEを施行された 374例を対象とした。このうち LRRCによる胸骨後経路再建症例は 62例、後縦隔
12例であった。対象症例において年齢、性別、臨床病期 T、術前リンパ節転移の有無、
経路再建症例は 3
腫瘍主座、術前化学療法の有無、組織型を共変最とするロジスティック回帰を用いた最近傍法での傾向

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;LR) と後縦隔経路
スコアマッチングを行い、腹腔鏡下胸骨後経路再建群 (
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;PM)間での周術期成績、合併症発生率、再建胃管機能の比較を行った。
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. 傾向スコアマッチング後の患者背景

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2例の LRRC施行症例は全例 LR群 (
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2
)に含まれた。傾向スコアマッチングの結果、各 LRRC症
例に対応する 6
2例の後縦隔再建症例を得た (PM群
、 n=6
2
)。
マッチング後の患者背景は、ロボット支援下手術が LR群で有意に多く、頸部郭浦を伴う三領域リンパ
節郭清が LR群で有意に少なかった。また頸部吻合法に関して LR群ではその大部分がリニアステープ
ラーによる三角吻合であったのに対し、 PM群では有意にバリエーションを認めたが、その他は有意な
差を認めなかった。

皿術後成績
術後成績について、手術時間は LR群で有意に長く、出血量は LR群で有意に減少し (
P<0.001)、病理
学的病期および術後在院日数に両群間で有意差は認めなかった。縫合不全率 (LR24%v
s
.PM19%)、肺
炎発症率 (LR21%v
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.PM19%)、C
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ndo分類 G2以上のその他合併症率 (LR24%v
s
.PM18%)
に有意差はみられなかった。 PM群で胃管気管痩 (
1例)、食道裂孔ヘルニア (
2例)の発症を認めたが LR
群では発症なく、肺塞栓症については両群でその発症率に差を認めなかった (LR5%v
s
.PM5%)。

w.再建胃管機能
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.PM27%)には有意差を
再建胃管機能について、内視鏡的拡張術を要した術後吻合部狭窄率 (LR16%v
osAng
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認めなかった一方、逆流性食道炎に関する術後 1年での再建胃管吻合部の内視鏡所見(修正 L
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)は LR群で有意に良好であった (LR群 2%vs.PM群 1
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%
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0
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3
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)。

〔総括〕

LR群での手術時間の延長と出血量減少はロボット支援下手術が多かったことが影響したと考えられ
る。術後成績について両群間に注意すべき差はみられず、 LR群では意図通りに術後の後縦隔経路特異
的合併症を回避した。術後 1年での術後逆流性食道炎について、 LR群で内視鏡的粘膜所見評価におい
て有意に良好な結果が得られた。これに関して、胸骨後経路再建では食道胃管吻合部は解剖学的に頸切
痕やや頸側に位置することになる。同部は胃管の胸郭からの出口となり狭小部であるため、胃管の過度
の圧迫を避けるために十分な剥離を行うが、一方でこの部位での適度な圧迫は、吻合部口側食道の粘膜
変化を抑制する可能性がある。胸骨後経路では後縦隔経路と比較して再建胃管長が短くてよいこと、縫
合不全発症時の管理が容易であること、異時性の胃管癌に対処しやすいことなどの利点を有する。本研
究ではこれに加え、 LRRCによる胸骨後経路再建はその他合併症のリスクを増加させることなく、より
良好な再建胃管機能の維持に貢献しうることが示された。

本研究は、低侵襲食道亜全摘術後の再建経路に関する手術手技について研究したものであるが、従来行
われていなかった腹腔鏡下での胸骨後経路作成手技を考案、導入したうえでその術後成績を検討し、同
手技による再建を受けた症例が後縦隔経路再建症例と比較して遜色なくさらに再建胃管機能を改善し
うることを初めて明らかにした報告である。食道悪性腫瘍に対する亜全摘術後の再建経路に関する手術
手技について重要な知見を得たものとして価値ある業績と認める。
よって、本研究者は、博土(医学)の学位を得る資格があると認める。

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