リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Impact of Pleural Thickness on Occurrence of Postoperative Complications in Patients with Malignant Pleural Mesothelioma」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Impact of Pleural Thickness on Occurrence of Postoperative Complications in Patients with Malignant Pleural Mesothelioma

伊藤, 俊成 名古屋大学

2023.07.04

概要

主論文の要旨

Impact of Pleural Thickness on Occurrence of
Postoperative Complications in Patients with
Malignant Pleural Mesothelioma
悪性胸膜中皮腫の術後合併症発生における胸膜肥厚の影響

名古屋大学大学院医学系研究科
病態外科学講座

総合医学専攻

呼吸器外科学分野

(指導:芳川 豊史
伊藤 俊成

教授)

【緒言】
悪性胸膜中皮腫(MPM)は胸膜に発生する難治性悪性腫瘍であり、その原因の大部分
はアスベスト(石綿)の吸入曝露と言われている。治療は疾患の症例数が少ないことか
ら診断・治療ともにエビデンスに乏しいが、切除可能症例には外科手術を含む集学的
治療が、切除不可能症例や術後再発症例には薬物療法が主体となり、放射線治療が集
学的治療の一環として施行されている。外科治療では、主に患側の肺、心膜、横隔膜
を含む臓側胸膜と壁側胸膜を切除する胸膜肺全摘術(EPP)と心膜、横隔膜を含む臓側
胸膜と臓側胸膜を切除し、肺を温存する胸膜切除及び肺剥皮術(P/D)が用いられ、肉眼
的完全切除(MCR)を達成することにより、予後と無増悪生存期間の改善が得られると
されている。しかしMPMに対するMCRを目指す手術は、いずれの術式も侵襲が大きく、
合併症発生率、周術期死亡率が高いため、そのリスク因子の特定は重要である。
近年病理学的病期分類によるT1aとT1bの区別が困難であり、代わりとして腫瘍によ
る胸膜肥厚がMPMの生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)に関する指標としてより優
れているとの報告がある。この胸膜肥厚が合併症発生にも影響しているのでないかと
仮説を立て、胸膜肥厚を含む術前因子と合併症発生との関連を検討した。
【方法】
2005年から2021年の期間に、P/DまたはEPPを行った51例を対象とし後方視的に検討
した。胸膜肥厚の定義や計測方法は世界肺癌学会中皮腫病期分類プロジェクトにより
提唱された方法に従い、胸腔内を3分割(上部:肺尖から大動脈弓の下縁の間、中部:上部
と下部の間、下部:左心房が最初に確認できる位置より尾側)し、各部位で最も厚い胸
膜厚の和とした(Figure.1)。
術後合併症は術後90日以内のClavien-Dindo分類におけるGrade 3以上の合併症とし
た。また術後90日以内に再発した4例は、合併症・再発いずれが原因の症状か不明なた
め対象から除外した。
【結果】
観察期間中央値は28ヶ月(範囲:3-109ヶ月)であった。観察期間終了の2021年10月ま
でに、35例が現病死、8例が再発生存、4例が無再発生存であった。OSの中央値は28カ
月、PFSの中央値(PFS)は19カ月であり、3年OS率とPFS率はそれぞれ34%、22%であっ
た。(Figure.2)。
患者の年齢中央値は64(46-76)歳、男女比は42:5、術側の右左比は25:22、病理組織は
上皮型41例、二相型5例、肉腫型1例で、臨床T分類はT1 18例、T2 18例、T3 11例、臨床
N分類はN0 38例、N1 9例、術式はP/D 20例、EPP 27例、治療前の胸膜肥厚中央値は24(11129)mm、CRPは0.4(0-5)mg/dlであった。手術は3例を除いて全てMCRを得ることがで
きた。35例に導入化学療法を行い、RECIST基準による術前化学療法の奏効率を評価す
ると、PR 8名、SD 25名、PD 2名であった。
術後合併症は23例(49%)で発生した。また術後30日および90日の治療関連死亡率は

-1-

どちらも1例(2.1%)で、その1例は術後にARDSと気管支断端瘻を発症し死亡した症例
であった。術後合併症として多い項目は、膿胸(n=7)、10日間以上の肺瘻(n=7)、喀
痰排出障害(n=7)、呼吸不全(n=6)であった(Table.1)。術式別ではP/D群の主な合併症
は10日間以上の肺瘻(n=7)でありEPP群は呼吸不全(n=6)であった。またP/D群の術後
合併症が3種類であったのに対してEPP群では10種類であり多岐に渡っていた。
合併症に関連する因子のロジスティック回帰分析では連続変数に関しては中央値
で二群に分けて解析した。単変量解析では高齢(p=0.03, OR:3.81, 95%Cl:0.29-2.95)、術
側(p=0.02, OR:4.72, 95%Cl:1.36-16.40)、胸膜肥厚(p=0.02, OR:4.57, 95%Cl:1.39-15.62)が
有意であった。また多変量解析では術側(p=0.04, OR:4.90, 95%Cl: 1.10-21.71)と胸膜肥
厚(p=0.03, OR:5.26, 95%Cl:1.21-23.00)が有意であった(Table.2)。また術式別に単変量
解析を行うとP/D群では胸膜厚(p=0.04, OR:13.50, 95%Cl:1.20-151.21)が術後合併症の
リスクに有意であり、EPP群では術側(p<0.01, OR:12.22, 95%Cl:2.00-75.06)が術後合併
症のリスクに有意であった。
【考察】
本研究はMPMの患者において胸膜肥厚と術側が術後合併症のリスクファクタ ー で
あることを明らかにした。術側と手術合併症の関係はこれまでの研究でも報告があり、
左右の肺の割合が右側の方が左側よりも大きいことにより、肺機能の低下や肺血管床
の減少による心負荷の上昇がより強いことが原因とされている。
一方これまで胸膜肥厚と予後の関係を報告した論文は散見されるが合併症に関し
て報告したものはなく、本研究は胸膜肥厚と術後合併症の関係を報告した初めての論
文である。胸膜肥厚が術後合併症発生に関連する因子となる理由としては、P/Dにおい
ては胸膜肥厚が進むと、肺の深い部位まで浸潤し、剥離の際に肺損傷が増え、肺瘻が
より多く発生することが考えられる。一方EPPにおいては胸膜肥厚が進むと周囲構造
物への浸潤が高度になり、術後合併症につながると考えられる。
また本研究での術後合併症の発生率は49%であった。これまでの報告では36-52%と
報告されているがばらつきがあり、これは合併症の評価基準が異なることや、客観的
評価の基準が乏しいためと思われる。本研究ではClavien-Dindo分類におけるGrade3以
上の合併症という客観的な基準を設け評価した。また3年OS、PFSは過去の報告と比較
して遜色なく、術後30日および90日の治療関連死亡率はどちらも1例であり本コホー
トにおける外科治療は,従来の研究と同様に安全に実施されたと考えられた。
本研究ではサンプルサイズが小さい、後方視的研究である、胸膜肥厚の測定に影響
を与える胸膜癒着術の有無の情報が一部の症例で不明であるなど、いくつかの限界が
ある。それでも胸膜の厚さは根治的手術が有効な患者を決定するのに役立つと考えら
れ、今後の研究ではより大きなコホートを用いた前向き多施設試験でこの所見を検証
する必要があると思われる。
【結語】

-2-

胸膜肥厚は術後合併症の発生と関連があった。胸膜厚は簡便に測定でき、患者のリ
スクを評価する有用な指標と考えられ、術側が右側で胸膜肥厚の厚い症例では術後合
併症により注意する必要がある。

-3-

Table 1. Clavien–Dindo Postoperative Complication Grades

SIADH, Syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone; Empyema: Requiring the reinsertion of a chest
tube, washing, or reoperation. Prolonged air leakage: Lasting more than 10 days or requiring pleurodesis or reoperation.

-4-

Table 2. Predictors of Postoperative Complications

EPP, extrapleural pneumonectomy; P/D, pleurectomy/decortication; OR, odds ratio; SUVmax, maximum standardized
uptake value; RECIST, response evaluation criteria in solid tumours; CRP, C-reactive protein; % DLCO, percent
predicted diffusing capacity for carbon monoxide; % FEV1.0, percent predicted forced expiratory volume in 1 second

-5-

Figure. 1 Measurement methods of pleural thickness on preoperative computed tomography. Maximal tumor
thickness perpendicular to the chest wall or mediastinum was measured for each of the three levels (upper, middle, and
lower) on axial imaging (A). The upper level extends from the apex of the lung to the inferior margin of the arch of the
aorta (B). The middle level includes the pleura between the upper and lower levels (C). The lower level is inferior to
the first image on which the left atrium is observed (D).

Figure. 2 Postoperative survival analyses. (A, B) Three-year overall survival (OS) and progression-free survival
(PFS) curves for all enrolled patients.

-6-

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る