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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on the Transport Mechanism and Physiological Roles of a Cargo Protein of Extracellular Membrane Vesicles from Shewanella vesiculosa HM13」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on the Transport Mechanism and Physiological Roles of a Cargo Protein of Extracellular Membrane Vesicles from Shewanella vesiculosa HM13

Kamasaka, Kouhei 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23952

2022.03.23

概要

細菌は、細胞外膜小胞 (EMV) と呼ばれる直径 20-250 nm 程度の膜に覆われた球状の粒子を細胞外に分泌する。EMV は、細胞間コミュニケーションや病原性発現、バイオフィルム形成といった多様な生理機能に関与する。一方、EMV をプラットホームとするワクチンや薬物送達系、異種タンパク質分泌生産系の開発が注目されている。これらの生理機能の発現機構解明や応用開発を進める上で、EMV の積荷タンパク質の機能や、その EMV への輸送機構を明らかにすることは重要であるが、それらに関する知見はきわめて限定的である。本研究は膜小胞高生産性のグラム陰性細菌Shewanella vesiculosa HM13 の EMV の主要積荷タンパク質 P49 について、EMV への輸送機構と生理機能の解明に取り組んだものであり、その内容は以下のように要約される。

1.P49 の EMV への輸送における P49 遺伝子周辺遺伝子群の機能解析
P49 は S. vesiculosa HM13 の EMV の主要積荷タンパク質であり、外来タンパク質を EMV に輸送する際のキャリアとしてその有用性が期待されている。本菌の全ゲノム解析の結果、P49 遺伝子近傍の遺伝子群が、グラム陰性細菌のタンパク質外膜透過装置である II 型分泌装置 (T2SS) のサブユニットのホモログ (GspE2、GspF2、GspK2、GspD2) や、グリセロホスホジエステルホスホジエステラーゼ、リポオリゴ糖ホスホエタノールアミントランスフェラーゼ、細胞表層多糖生合成に関与するフリッパーゼ、ニトロレダクターゼのホモログ(それぞれ GdpD、LptA、Wzx、NfnB)をコードすることが見いだされた。P49 の EMV への輸送にこれらの遺伝子群が関与するか調べるため、これらの破壊株を作製した。各遺伝子破壊株から細胞画分、EMV画分、EMV を除去した上清画分 (PVF) を調製し、P49 の局在性を解析した結果、T2SS のサブユニットホモログを欠損した株では、P49 は主に細胞画分に見いだされた。一方、GdpD、LptA、Wzx、NfnB の各遺伝子破壊株では、P49 は主に PVF に局在していた。以上の結果から、P49 は T2SS 様分泌装置によって細胞外に輸送され、GdpD、LptA、Wzx、NfnB 依存的に生成する EMV 表層成分との相互作用を介してEMV に積み込まれるものと考えられた。

2.EMV 表層多糖が関与する P49 の EMV への輸送機構の解明
P49 の EMV への積み込みに関与することが示された Wzx は、リポ多糖 (LPS)の O 抗原多糖や細胞外多糖 (EPS) の生合成において、内膜内葉で合成された多糖前駆体をペリプラズム側に輸送するフリッパーゼのホモログである。S. vesiculosa HM13の LPS には O 抗原多糖が見いだされなかったことから、Wzx は O 抗原多糖の生合成には関与しないと考えられた。一方、本菌の EPS を解析した結果、EMV 画分に Wzx 依存的に合成される EPS が存在することが明らかとなった。また、GdpDと LptA も本 EPS の合成に必要であることが遺伝子破壊実験によって示された。次に、EMV と精製 P49 の結合性を in vitro で評価した。P49 欠損株由来の EMV と精製 P49 を in vitro でインキュベートした結果、P49 が EMV に結合することが示された。EMV への結合に伴って P49 の二次構造が変化して β シート構造が増加することが明らかとなり、また、P49 が結合した EMV の電子顕微鏡観察では、EMVの外周部に P49 を含むと考えられる粒子状構造が観察された。一方、EPS 非生産性の Wzx、GdpD、LptA の各遺伝子破壊株より調製した EMV には P49 は結合しなかった。以上から、P49 は EMV 表層に存在する EPS との相互作用を介して EMV に結合するものと考えられた。NfnB 遺伝子破壊株については EPS の生産が見られたが、本株から調製した EMV に P49 は結合しなかった。これらの結果から、NfnBは P49 との相互作用に必要な EPS の部分構造の生成に関与すると考えられた。

3.P49 の生理機能解析
上述のように、P49 は EMV 表層多糖との相互作用を介して EMV に結合するタンパク質であると考えられた。EMV 表層における P49 の機能解明を目的に、野生株および P49 欠損株から調製した EMV をナノ粒子トラッキング解析に供した。その結果、野生株由来の EMV については直径約 72 nm の付近に単一の主要ピークが検出された。このピークは EMV 単量体に由来していると考えられた。一方、P49 欠損株由来の EMV については、単量体と考えられる粒子のピークに加えて複数の EMVの会合体に由来すると考えられるピークも検出された。P49 欠損株由来の EMV に精製 P49 を in vitro で添加することで会合体と考えられるピークが消失し、野生株のEMV の粒度分布に類似した単一の主要なピークが検出された。この結果から、P49は EMV の表層多糖に結合することで、EMV の凝集を抑制しているものと考えられた。P49 は EMV の分散性を高めることで、EMV の表面積を増加させるとともに、細胞から離れた標的への EMV の長距離送達を可能にしていると考えられる。