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大学・研究所にある論文を検索できる 「Nitrogen solubilities in the lower-mantle minerals : implications for the formation process of nitrogen reservoir in the deep Earth」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Nitrogen solubilities in the lower-mantle minerals : implications for the formation process of nitrogen reservoir in the deep Earth

福山, 鴻 東京大学 DOI:10.15083/0002006688

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

福山



本論文は5章からなる。第1章は、イントロダクションであり、地球表層および深部に
おける窒素に関する先行研究を総括し、本論文の目的が設定されている。地球表層・マン
トル物質は、コンドライト隕石に比べた場合、窒素の存在比が炭素や水素等より相対的に
低いことが知られている。その原因として、マグマオーシャン固化時の鉱物による窒素の
取り込みや、窒素に富む地殻物質・プレート物質の沈み込みなどにより、地球深部に窒素
が貯蔵された可能性が示唆されてきた。しかし、地球マントルの約半分を占める下部マン
トルにおける窒素の貯蔵に関する実験的研究は限られている。下部マントルで約 80 体
積%を占める bridgmanite への窒素溶解度は、単一の実験で報告されているのみである。
また約 15 体積%を占める ferropericlase への窒素溶解度については実験的制約がない。
沈み込むプレート中の鉱物がどのように下部マントルまで窒素を運びうるかも未解明で
ある。これらの背景を踏まえ、本論文は下部マントルや沈み込むプレート条件下で安定な
bridgmanite、ferropericlase、stishovite への窒素溶解度を決定し、窒素のバジェットを
議論することを目的とした。
第2章は研究手法について述べられている。出発物質の組成や準備方法、下部マントル
条件での高温高圧実験手法、回収した実験試料の分析方法の詳細が説明されている。出発
物質は、すべて酸化物の混合粉末と窒素源である硝酸アンモニウムから作成されたこと、
下部マントルと同等の酸化還元条件を再現するため、Fe-FeO buffer が用いられたことが
説明されている。高温高圧実験にはマルチアンビル高圧発生装置、試料の分析には、XRD、
FE-SEM-EDS、ラマン分光法、SIMS が用いられ、SIMS の標準試料は、石英ガラス基
板と MgO 単結晶基板に窒素イオンを打ち込むことによって作成された。
第3章は実験結果について述べられている。高温高圧実験で回収・同定された鉱物相は
stishovite、bridgmanite、(ferro)periclase であった。Stishovite の窒素溶解度は最大
404 ppm に及び、実験温度が上昇するにつれて窒素溶解度が高くなることが分かった。
Al や Fe を含まない bridgmanite の窒素溶解度は最大で 5.7 ppm であること、stishovite
と同様に実験温度が上昇するにつれて窒素溶解度が高くなること、さらに、Al や Fe を
固溶することによって、溶解度は上昇することが分かった。Fe を含まない periclase の
溶解度は bridgmanite に比べて低いが、実際の地球深部と同程度に Fe を固溶すると最
大で 132 ppm に及ぶことが分かった。上記のような鉱物中の窒素の定量結果に基づき、
鉱物中に窒素がどのような状態で存在し得るかが推定された。
第4章は、実験結果に基づく議論、特に下部マントルが窒素貯蔵庫となりうる可能性お
よ び そ の 形 成過程に関する議論が展開されている。沈み込む地殻物質に含ま れ る
stishovite は、窒素の最大溶解度が比較的高く、表層付近から下部マントルに窒素を運ぶ
有力なキャリアーになり得ることが本研究で明らかとなった。マグマオーシャンの固化
過程では、対応する温度条件下で比較的高い最大窒素溶解度をしめす bridgmanite と

ferropericlase が窒素をとりこみ、地球深部への貯蔵に主要な役割を果たし得ることが示
唆された。特に、今まで実験報告がなかった ferropericlase が下部マントルで最も多く窒
素を貯蔵できる鉱物であること、および下部マントルは、現在の地球大気に存在している
質量の約 21 倍に達する窒素を貯蔵し得ることが明らかとなった。
第5章は、結論が述べられている。沈み込むプレートと下部マントルに対応する条件下
での鉱物への最大窒素溶解度を明らかにしたこと、および溶解度と地球表層-内部の進
化過程とを照合することにより、下部マントルが窒素貯蔵庫となる可能性およびその形
成過程が制約されることが述べられている。
本論文は、沈み込むプレートおよび下部マントル条件で安定な鉱物への窒素溶解実
験と実験生成物の定量分析を、実験的困難を克服しながら初めて系統的に明らかにし、地
球深部のみならず、地球大気と地球内部との共進化の理解に大きく貢献するものである。
なお、本論文は、鍵裕之博士、井上徹博士、佐野有司博士、菱田俊一博士、新名亨博
士、高畑直人博士、柿澤翔博士、Evelyn Füri 博士、Cécile Deligny 氏との共同研究の成
果であるが、論文提出者が主体となって実験、分析、議論を行ったものであり、論文提出
者の寄与は十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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