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大学・研究所にある論文を検索できる 「Pelvic exenteration associated with future renal dysfunction」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Pelvic exenteration associated with future renal dysfunction

山東, 雅紀 名古屋大学

2022.07.01

概要

【緒言】
隣接臓器への浸潤を伴う局所進行・再発の骨盤内悪性腫瘍患者に対し、骨盤内臓全摘術(PE)は根治を目指すための最後の手段である。しかし、高侵襲な手術後の合併症率は高く、特に尿路変向に伴う術後尿路感染や尿路狭窄などの尿路系合併症率は高い。同じように尿路変向を伴う膀胱全摘術後患者において、術後尿路合併症が腎機能を長期的に低下させ、慢性腎臓病(CKD)患者を有意に増加させるという報告があるが、これまでPE術後患者の長期腎機能に関する報告はない。本研究の目的は、PE術後患者の長期腎機能の推移とCKD患者の割合の変化を評価し、腎機能低下のリスク因子を探索することである。

【対象及び方法】
2006年から2017年まで当教室でPEを施行した94人中、経過観察期間が3年に満たなかった53人と再発のため尿管狭窄をきたした1人を除外し、最終的に40人が解析対象となった。入退院時および術後半年ごとの推定糸球体濾過量(eGFR)値を収集し、入院時のeGFR値を1とし、各比率を算出した。CKDは一般的に用いられるeGFR<60ml/min/1.73m2とした。1-3年間でeGFR値が20-30%以上低下すると、将来の末期腎不全や死亡率が増加することが知られており、術後3年間でeGFR値が25%以上低下した患者を早期腎障害群と定義した。健常人のeGFR低下率を年間あたり1ml/min/1.73m2と仮定し、本集団と比較した。入院中に起きた合併症を早期合併症、術後3年以内に再入院を要した合併症を晩期合併症とし、尿路感染、尿管狭窄、尿管導管吻合部狭窄、腎結石を総じて尿路系合併症と一括りにした。尿路狭窄に対しては腎瘻造設や尿管ステント留置を行った。また、術後経過観察期間を、1.5年までのearly phase、1.5年から3年までのmiddle phase、3年以降のlate phaseの3つに分類した。統計手法は、2群間の比較に対しFisherの正確検定とMann-WhitneyのU検定を用い、腎機能の推移および腎機能低下のリスク因子解析についてはrandom growth modelを用いた。p値<0.05を有意差ありとした。

【結果】
表1に患者背景を示す。経過観察期間の中央値は6年であった。手術時年齢の中央値は61歳で、29人(72.5%)が男性であった。疾患は再発直腸癌が24人(60%)を占め、次いで原発直腸癌が10人(25%)であった。尿路変向法は、回腸導管38人(95%)、尿管皮膚瘻2人(5%)であった。早期腎障害群は16人、非早期腎障害群は24人であった。2群間で比較すると、患者背景や早期合併症に有意差は認めず、晩期尿路系合併症と小腸閉塞は早期腎障害群で有意に多かった。晩期合併症のうち、尿路感染と小腸閉塞を同時期に発症した患者を4人認め、いずれも早期腎障害群であった。晩期尿路系合併症と小腸閉塞の発症は有意な相関関係にあった(表2)。再発は全体で17人(42.5%)に認め、20人がPE後に全身化学療法を受けた。

入退院時、術後1.5年、術後3年、最終フォローアップ時のCKD罹患率とeGFR中央値を表3に示す。全体でCKD患者は、入院時の4人(10%)から最終フォローアップ時の22人(55%)にまで増加した。早期腎障害群では、最終的に13人(81.3%)がCKDと診断され、そのうち2人が末期腎不全のため人工透析を導入した。非早期腎障害群では最終的に9人(37.5%)がCKDと診断されたが、人工透析患者は認めなかった。

次にeGFR値の推移をみると、術後3年でeGFR中央値は79.5から61.2ml/min/1.73m2まで23%低下した。図1Aは、術後3年間のeGFR比の推移を半年毎にプロットし、健常人を仮定したeGFR比の推移を点線で示しているが、PE術後患者の腎機能は健常人と比較して明らかに低下した。さらに、early phaseにおいて年間あたり-12.2ml/min/1.73m2と急速に低下し、middle phaseでは年間あたり-1.5ml/min/1.73m2と緩やかに低下し、二相性の低下傾向を示した。群別でみると、早期腎障害群のeGFR中央値は、earlyphaseで28%(82.9から59.8ml/min/1.73m2)低下したのに対し、非早期腎障害群では4%(76.5から73.4ml/min/1.73m2)しか低下しなかった。早期腎障害群のeGFR値はmiddle phase以降も低下し続けたが、非早期腎障害群では概ね安定していた。図1Bは群別のeGFR比の推移を示しており、early phaseにおいて早期腎障害群のeGFR比は有意に低下し(p<0.001)、middle phaseでは有意差はないが低下する傾向がみられた(p=0.099)。

リスク因子解析では、晩期合併症である尿路系合併症と小腸閉塞が独立した腎機能低下のリスク因子であった(図2)。

【考察】
本研究は、尿路変向を伴うPE術後患者のCKD罹患率が増加することを示した初の報告である。CKD患者の割合は、術後3年で10%から50%、中央値6年の最終フォローアップ時には55%まで増加した。50歳以上の健常な日本人のCKD罹患率は18.6%と報告されており、大きく上回る結果であった。局所進行・再発の骨盤内悪性腫瘍は予後不良で、PE自体稀な術式であるため、長期にわたって経過観察することは困難である。それゆえ、本研究は貴重な報告である。

本研究の早期腎障害群において、術後3年以降も進行性の腎機能低下を認め、最終的に81.3%の患者がCKDと診断された。対照的に、非早期腎障害群の腎機能は緩徐な低下にとどまり、最終的に37.5%の患者がCKDと診断された。PE術後においても早期腎障害はCKDの有用な予測因子となり得た。また、PE術後患者のeGFR比の推移が二相性に低下したことに注目した。尿路変向を伴う膀胱全摘術後患者においても同様に腎機能が二相性に低下したという報告があった。Early phaseにおいて早期腎障害群のeGFR低下率は28%であり、非早期腎障害群の4%より有意に高かった。術後1-2年以内の急激なeGFR値の低下に留意することは、将来CKDとなり得る高リスク患者を見出すために有用と考える。高リスク患者のさらなる腎機能の低下を防ぐことは今後の課題である。

本研究では、晩期尿路系合併症が早期腎障害の有意なリスク因子であった。尿路系合併症を防ぐためには、回腸導管を作成する際に尿管周囲の血流を最大限温存し、尿管を愛護的に扱うことが重要と考える。また、我々医療者だけでなく、患者自身が、発熱時には医療機関を早期に受診するなど、尿路系合併症に対する早期治療介入の重要性についてしっかり理解しておく必要がある。

小腸閉塞はPE術後患者の14-19%に認められる頻度の高い合併症である。小腸閉塞は早期腎障害の独立したリスク因子であり、晩期尿路系合併症の発生と有意な相関関係がみられた。早期腎障害群のうち4人の患者が同時期に尿路感染と小腸閉塞を合併していた。小腸閉塞に伴う乏尿と、その結果回腸導管から細菌が逆流することで尿路感染を引き起こし、腎障害を引き起こしていると考えられる。小腸閉塞の患者が発熱を伴っている場合には、十分な補液を行い、適切に抗生剤を使用することが腎保護のために重要である。

本研究のlimitationは、後方視的検討であり、サンプルサイズが小さいことである。PE術後患者は、腎毒性のある様々な化学療法や抗生剤治療などを受けており、PEの純粋な腎機能への影響を評価することは困難である。また、体重や血圧は腎機能へ及ぼす影響が大きい因子であるが、PE術後の変化は評価されていない。さらに、最終フォローアップまでの観察期間は個々により異なるため、将来のCKD罹患率は過小評価されているかもしれない。本研究では健常人を仮定した生理的腎機能低下と比べたが、具体的な比較対象がないこともlimitationの一つである。

【結語】
尿路変向を伴うPE術後患者は、将来腎障害を引き起こす高リスク群であり、術後6年(中央値)で半数以上がCKDを併発した。早期腎障害は、PE術後においてもCKDの発症を予測する代替マーカーになり得る。術後1.5年の腎機能低下に留意することは、早期腎障害群を見分けるために役立つかもしれない。特に、晩期尿路系合併症や小腸閉塞を起こす患者は、早期腎障害のリスクがあると認識すべきである。

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