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大学・研究所にある論文を検索できる 「心筋ミオシン固有の1分子及び多分子特性の実測とシミュレーションを用いた心機能の理解」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

心筋ミオシン固有の1分子及び多分子特性の実測とシミュレーションを用いた心機能の理解

黄, 勇太 東京大学 DOI:10.15083/0002006669

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名







心筋βミオシンは心臓の収縮力を生む分子モーターであり,先行研究によってスト
ローク(power stroke)の大きさや発生する力などの1分子特性が明らかにされてき
た.最近,シミュレーションにより,心筋細胞が急速に弛緩するためには,心筋βミ
オシンが集団で逆向きのストローク(reverse stroke)を行うことが重要であることが
示唆された.しかし,心筋βミオシンの reverse stroke の大きさや速度を正確に計測
した研究はない.本論文では,心筋βミオシン多分子および1分子での力計測と,心
筋βミオシン集団における reverse stroke の役割をシミュレーションで調べた研究に
ついて述べられている.本論文は,全 7 章から構成されている.
第1章は全体の序論である.心筋と骨格筋の収縮メカニズム,および心筋βミオシ
ンを中心としたミオシンの運動メカニズムに関する研究背景が詳細に述べられた後,
本研究の目的が述べられている.
第2章では,実験に必要なミオシン等の試料の調製,光ピンセット装置や実験系の
評価,および実験の手順について述べられている.心筋βミオシンの多分子実験では,
豚の心室から精製した心筋βミオシンと,機能頭部のないミオシンロッドを混合する
ことによってミオシンフィラメントを作製した.これをアクチンフィラメントと相互
作用させ,光ピンセットで変位や発生した力を計測した.また1分子実験では,心筋
βミオシンと大量のミオシンロッドを混合し,心筋βミオシン1分子がアクチンフィ
ラメントと相互作用するように調整した.これに光ピンセットで負荷をかけたときの
心筋βミオシンの変位を計測した.
第3章では,心筋βミオシン多分子の力計測について述べられている.まず,心筋
βミオシン集団(約 15 分子)が発生する力は 55 pN 以上であり,骨格筋(速筋)ミ
オシン集団が発生する力(35 pN 以下)よりも大きいことが明らかになった.また,
骨格筋(速筋)ミオシンでは reverse stroke がほとんど見られなかったのに対し,心
筋βミオシンでは逆向きのステップが頻繁に観測された.
第4章では,心筋βミオシン 1 分子の力計測について述べられている.心筋βミオ
シン 1 分子に高負荷を加えたときの動態を計測した結果,心筋βミオシンは骨格筋
(速筋)ミオシンに比べ,1 分子の状態で reverse stroke を頻繁に起こすことが明ら
かになった.また心筋βミオシンには 2 段階のストロークがあり,それぞれ約 6 nm
と 3 nm の大きさであることが示された.さらに,power stroke と reverse stroke の反
応速度と負荷の関係を定量的に求めることができた.

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第5章では,心筋βミオシン多分子と1分子での実験結果の整合性や,先行研究と
の比較などについての考察が述べられている.
第6章では,心筋βミオシン集団における reverse stroke の役割をシミュレーショ
ンで調べた研究について述べられている.心筋βミオシン 15 分子が発生する力を,
reverse stroke を考慮したモデルでシミュレーションをしたところ,心筋βミオシン
1分子での高頻度の reverse stroke が,心筋βミオシン多分子で観測された高い力発
生と頻繁な逆向きステップを引き起こすことが示された.また,心筋βミオシンの分
子数を筋肉内と同じ 75 分子に増やしてシミュレーションをした結果,reverse stroke
は,張力の維持,急速な弛緩,および低い ATP 消費率に貢献している可能性が示唆
された.
第7章では,本研究の結論と意義が述べられている.本研究では,心筋βミオシン
の1分子計測により,心筋βミオシンの reverse stroke の直接観測に成功した.また,
心筋βミオシンの多分子計測により,心筋βミオシン集団は骨格筋(速筋)ミオシン
集団よりも高い力発生と頻繁な逆向きステップを示すことが明らかになった.さらに,
この集団的性質には reverse stroke が鍵となっていることがシミュレーションから判
明した.このように,心筋βミオシンの分子特性としての reverse stroke を解明し,
心筋βミオシン多分子の力発生への影響を計算した本研究は,心収縮の分子メカニズ
ムに新たな知見を与えるものである.
本論文の内容は現在投稿中である.鷲尾巧 博士,久田俊明 博士,樋口秀男 教
授,茅元司 助教との共同研究であるが,提出者が主体となって実験および解析を行
い,筆頭著者として執筆したものであり,その寄与が十分であると判断される.
したがって,博士(理学)の学位を授与できると認める.

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