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大学・研究所にある論文を検索できる 「Generalized Solutions to Several Problems in Open Channel Hydraulics」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Generalized Solutions to Several Problems in Open Channel Hydraulics

MEAN, Sovanna 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23527

2021.09.24

概要

本論文は,1次元開水路流れにおける現象を微分方程式によってモデル化した際に,その解が滑らかさを失うことについて探求したものである.例えば,ダムが崩壊した時に発生する衝撃波や,灌漑用水路においてゲートを操作した時に伝播していく流量波を,時間と空間の関数として表そうとすれば,連続性や微分可能性に関する要請を緩和せざるを得ないため,「微分方程式の解とは何か?」という問いに立ちかえって研究を進めることが必須になる.20世紀なかば以降に急速に発展した「弱解」あるいは「一般化解」,および,「粘性解」という概念は,流体現象の理解全般に関して明瞭な指針を与えている一方,開水路水理学における展開は大きく遅れていると言わざるを得ない.本論文は,このリサーチギャップを埋めるものである.

本論文は全6章から構成される.

第1章では,開水路水理学を俯瞰し,研究の背景を説明した.

第2章では,関連する研究の文献レビューを行い,研究課題を整理した.

第3章では,重力と摩擦力がつりあっているという仮定のもとで得られる「キネマティックウェーブ方程式」を扱った.この微分方程式は,洪水流の追跡などに古くから用いられているが,スカラーの未知変数としての水深を支配する1階の準線型偏微分方程式であり,解が滑らかさを失わないという仮定のもとではハミルトン・ヤコビ型の方程式に変形できる.ハミルトン・ヤコビ型の方程式については,滑らかでない粘性解を考えることができ,その数値解法として「レベルセット法」が知られている.本章では,レベルセット法をキネマティックウェーブ方程式に適用すれば,他の手法では困難な水路の一部において水深がゼロとなる場合を容易に取り扱うことができることを示した.一方,不連続な衝撃波の再現については,レベルセット法は必ずしも有効ではないことを示唆した.

第4章では,キネマティックウェーブ方程式を,ハミルトン・ヤコビ型の方程式としてではなく,保存型の1階準線型偏微分方程式として取り扱った.1次元空間領域における保存型1階準線型偏微分方程式については,可測かつ有界な関数の空間,すなわち,不連続をも許容する滑らかでない関数の空間における一般化解の理論が確立されている.その理論によれば,水理学における定説とは異なり,キネマティックウェーブ方程式には,滑らかな入力条件のもとでも,散逸せずに成長していく衝撃波を表す解が存在する.本章では,そのような衝撃波を可視化するため,不連続な一般化解の近似に有効であるとされるゴドゥノフスキームを用いた数値計算を行った.ただし,あくまでも数値計算例であるため,存在証明とはなっていないことに注意が必要である.

第5章では,水理学で通常用いられる一般的な仮定のもとで,質量と運動量の保存則を表す1次元開水路定常流の支配方程式についての数理解析を行った.この支配方程式は1階準線型常微分方程式であり,一見,初期値問題が適切となるとも考えられるが,本章では,有界領域におけるディリクレ境界値問題,すなわち,解に「境界値」が定義できて指定された値と同一視できるようになる問題の適切性を議論した.開水路の断面が一様である場合の主結果は,以下の4点である.1)一定の条件下で滑らかな解(漸変流)が一意に存在して安定となる.2)粘性解は不連続(跳水)を含みうる.3)粘性解は一般化解である.4)一般化解が一意とならないための必要条件が,ある補助関数を用いて表される.さらに,粘性解が二つ存在するディリクレ境界値問題の具体例を挙げた.

最終章の第6章では,本研究で得られた主要な成果を要約するとともに,今後の展望について言及した.