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Influence of Preadmission Frailty on Short- and Mid-Term Prognoses in Octogenarians With ST-Elevation Myocardial Infarction

吉岡, 直輝 名古屋大学

2023.05.30

概要

主論文の要旨

Influence of Preadmission Frailty on Short- and MidTerm Prognoses in Octogenarians With ST-Elevation
Myocardial Infarction
80 歳以上の ST 上昇型心筋梗塞患者において
入院前のフレイルが短中期予後に及ぼす影響

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座

総合医学専攻

循環器内科学分野

(指導:室原 豊明
吉岡 直輝

教授)

【緒言】
ST 上昇型心筋梗塞(STEMI)に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は広く
臨床現場で施行されており、現代社会においては、より高齢の心筋梗塞患者への PCI
件数が増加している。社会の高齢化に伴い、フレイルの概念が浸透しつつあり、その
程度を評価する指標の一つとして、Canadian Study of Health and Aging Clinical Frailty
Scale(CFS)が挙げられる。CFS は簡易な問診によって、対象者の生活機能レベルや認
知機能に応じてフレイルの程度を 9 段階に分類する評価方法であり、臨床現場でもそ
の意義が評価され広く使用されている。しかしながら高齢の STEMI 患者において、
CFS が予後にどのような影響を持つのかは十分に研究されていない。
【対象および方法】
本研究は日本国内の東海地方 5 施設における多施設共同研究であり、試験実施計画
書はヘルシンキ宣言に基づいて作成され、各施設の研究倫理審査委員会で承認されて
いる。
2014 年 1 月から 2016 年 12 月の 3 年間で STEMI に対し PCI を施行した患者を抽出
した。これらの患者 1301 名のうち、80 歳未満および入院時に自宅以外(施設もしくは
病院)で生活していた患者を除外し、最終的な研究対象は 273 名であった。
研究対象患者はフレイルの程度に基づき 3 群にグループ分けされた。すなわち、
CFS1~3(非フレイル群)、CFS4~5(軽度フレイル群)、CFS6~9(重度フレイル群)である。
主要アウトカムは、①2 年以内の全死亡(中期予後)②自宅以外への退院(院内死亡お
よび施設もしくは他院への転院の複合イベント)(短期予後)の 2 つを設定した。
統計解析は SPSS version 23 および R version 3.5.1 を用いて実施した。
CFS の 3 群間における患者背景を、グループ変数はカイ二乗検定にて、正規分布す
る連続変数は一元配置分散分析にて、非正規分布する連続変数は Kruskal-Wallis 検定
にて比較した。
2 年以内の全死亡は Kaplan-Meier 法で評価し、患者群間の生存率を log-rank 検定で
検討した。また 2 年以内の全死亡に関連する因子を、Cox 回帰分析を用いて抽出した。
結果はハザード比(HR)および 95%信頼区間(95% CI)で表記した。
自宅以外への退院は患者群間の比較をカイ二乗検定で行った。また自宅以外への退
院に関連する因子を、ロジスティック回帰分析を用いて抽出した。結果はオッ ズ比
(OR)および 95% CI で表記した。
いずれの解析も P < 0.05 を統計学的な有意差とした。
【結果】
273 名は CFS1~3: 140 名(51.3%), CFS4~5: 99 名(36.3%), CFS6~8: 34 名(12.5%)に分
類された。(Figure 1)
CFS が最終段階の 9 であった患者は本研究では存在しなかった。
3 群間において患者背景で有意差を認めたのは、年齢、body mass index(BMI)、脳梗

-1-

塞の既往、末梢血管疾患の既往、喫煙、ヘモグロビン値、血清アルブミン値、白血球
数であった。(Table 1)
研究期間中に 65 名が死亡した。CFS の程度が悪化するほど、全死亡のリスクは有意
差をもって上昇した。(Figure 2)
自宅以外への退院は 64 名に見られた。生存退院および自宅退院できる率はフレイ
ルが上昇するほど有意差をもって悪化した。(Table2, Figure 3)
多変量解析による 2 年以内の全死亡に寄与する予測因子は、フレイルの程度(軽度
フレイル: HR 1.81; 95% CI 0.99–3.36; P=0.056, 重度フレイル: HR 2.37; 95% CI 1.11–
5.05; P=0.026)、BMI(HR 0.88; 95% CI 0.81–0.95; P=0.001)、Killip 分類≥3(HR 2.20; 95%
CI 1.26–3.83; P=0.006)、心不全既往(HR 2.88; 95% CI 1.22–6.77; P=0.015)、右冠動脈責
任病変(HR 0.53; 95% CI 0.31–0.93; P=0.026)であった。(Table 3)
同様に多変量解析による自宅以外への退院に寄与する予測因子は、フレイルの程度
(軽度フレイル: OR 1.99; 95% CI 0.86–4.63; P=0.11, 重度フレイル: OR 9.50; 95% CI 3.48–
25.99; P<0.001)、Killip 分類≥3(OR 4.42; 95% CI 1.99–9.84; P<0.001)、C-reactive protein
値(OR 1.30; 95% CI 1.05–1.59; P=0.014)、左冠動脈主幹部責任病変(OR 5.06; 95% CI
1.38– 18.55; P=0.015)であった。(Table 4)
【考察】
今回の研究の目的は CFS が高齢の STEMI 患者に及ぼす影響を検証することであっ
た。最も強調すべきは、CFS が PCI を施行した高齢 STEMI 患者の短期および中期の
予後予測に強い相関を示したことである。
CFS がこれまで急性冠症候群の予後予測の有意な因子とされてきた腎不全、糖尿病、
性別、年齢などよりも高齢の STEMI 患者の全死亡予測に優れていたことは今回の研
究の重要な点である。高齢者のフレイルの程度を推し量るのには、CFS の他にもいく
つかの有用なパラメーターがある。例えば歩行速度がその一つだが、歩行速度の測定
には時間と患者の協力ならびに努力が必要で、フレイルの強い患者には施行できない
ことも多い。またその他のフレイル評価ツールも身体機能に関する評価項目が多く、
完全に評価できれば有用なツールである一方で、これらの項目を緊急の臨床現場で満
足するのは容易ではない。それらと比較し、CFS は簡便であり特別な問診や検査を要
しない点で、同時に多くの判断や処置が求められる臨床現場においても有用なツール
ということが言える。
フレイルは、体重減少、易疲労性、身体的・精神的・社会的因子といった多方面の
因子の複合で形成される脆弱性を統合した概念である。今回の研究では、フレイルに
関連する因子の一つである BMI も予後予測の有意な因子であったことも興味深い。す
なわち BMI 値が低い瘦せ型の STEMI 患者ほど予後が悪かったという点である。本来、
BMI 値が高い、肥満型の患者の方が高血圧、糖尿病、脂質異常といった心血管病のリ
スク因子を多くもつ傾向がある。しかしながら今回の研究では逆の相関を示し、いわ
ゆる肥満パラドックスの様相を呈した。これは痩せ型の患者が心臓悪液質、低栄養、

-2-

抑うつ傾向が強いことと関係している可能性がある。
また今回、短期予後として、フレイルの程度が強いほど STEMI 発症後に自宅退院が
できない可能性が高まることを我々は報告した。これまで臨床現場で自宅退院が困難
となる因子として、性別、認知機能の低下、独居生活、配偶者以外から介護を受けて
いることなどが報告されているが、CFS で評価されるフレイルの程度が、日常臨床に
おいて高齢の STEMI 患者の自宅退院の可能性を推し量ることができることを示した
点でも今回の研究は意義深い。
臨床現場において、入院早期に CFS を用いてフレイルを評価する事で、なるべく早
い段階から社会的サポートや心臓リハビリテーションを併用しながら介入を行うこと
が可能になり、高齢の STEMI 患者の独立した生活機能を温存できる可能性が期待さ
れる。
研究の限界としては、後ろ向き研究であること、PCI を施行しなかった STEMI 患者
との比較ができていないことが挙げられる。さらに、本来 9 段階で評価すべき CFS を
症例数が少ないために 3 群に分けて評価しており、将来的にはより多くの症例データ
ベースでの解析が望まれる。また、CFS の評価が後ろ向き研究のために入院時に行わ
れているわけではなく、想起バイアスならびに誤分類バイアスの可能性が除外しきれ
ない。フレイルへの介入、フレイルの程度の改善もしくは悪化が予後に及ぼす影響も
重要な点であるがこれについても言及できておらず、今後のさらなる研究が望まれる。
【結語】
CFS を使用して評価された入院前のフレイルの程度は、高齢の PCI を施行された
STEMI 患者において、中期の全死亡のみならず院内死亡および自宅以外への退院とい
う短期予後予測においても有用であった。

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