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大学・研究所にある論文を検索できる 「イネが生産する抗菌性化合物モミラクトンの作用機序に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

イネが生産する抗菌性化合物モミラクトンの作用機序に関する研究

富田, 啓介 東京大学 DOI:10.15083/0002006877

2023.03.24

概要



査 の 結 果 の 要 旨





富田 啓介

自ら移動することが出来ない植物が外部からのストレスに対応すべく獲得した機構の一
つに、多様な二次代謝産物の生産が挙げられる。植物が生産する二次代謝産物には高い生物
活性を有するものが数多く存在しており、医薬品等に利用されている。一方で、そのような
化合物の殆どは活性の報告がなされるにとどまり、作用メカニズムが詳細に解明された例
は少ない。近年、薬剤耐性菌や農薬耐性雑草の出現が相次いで報告されていることからも、
新規な作用機序を有する化合物の発見・開発やその作用機序の解明は喫緊の課題である。
モミラクトンはイネ籾殻から単離されたジテルペン化合物であり、植物や真菌の生育を
抑制する。更に、モミラクトンは抗腫瘍活性など動物細胞に対しても活性を有することも報
告されている。このように、モミラクトンは様々な生物種に対する活性をもつが、その作用
機序に関する知見は現在まで殆ど得られていない。
本論文は、分裂酵母の変異株ライブラリーを用いた化学遺伝学的手法と有機合成により
創出したモミラクトンプローブ分子を駆使してモミラクトンの作用機序を解析したもので
あり、全 5 章から成る。
第 1 章では、これまでに報告されているモミラクトンの生物活性や構造活性相関および
生合成経路について概説している。さらに、真核細胞のモデル生物である酵母について、各
種変異株ライブラリーの構築や、それらを利用し化合物の作用機序を明らかにした先行研
究例を交えながら、生物活性化合物の作用機序解明のためのツールとしての酵母の有用性
について述べられている。
第 2 章では、酵母を用いてモミラクトンの作用機序を明らかにするための基盤となる知
見を得るべく、代表的な酵母である出芽酵母と分裂酵母に対するモミラクトンの抗菌活性
を評価し、分裂酵母がより高いモミラクトン感受性を示すことを明らかにしている。さらに、
モミラクトン処理時の分裂酵母の形態観察を行うことによって、モミラクトンが分裂酵母
の細胞分離を阻害することや、細胞頂端において異常な微小管構造の形成を引き起こすこ
とも明らかにしている。

第 3 章では、分裂酵母の ORF 過剰発現株ライブラリーや遺伝子破壊株ライブラリー、変
異原エチルメンタンスルホン酸を用いランダムに変異を導入した細胞プールからモミラク
トン感受性が変化する株をスクリーニングすることによって、モミラクトンの作用・耐性機
構に関与する遺伝子を網羅的に探索している。その結果、モミラクトン感受性に影響を与え
る複数の遺伝子の取得に成功し、それらの遺伝子の機能からモミラクトンが微小管の動態
や隔壁形成に影響を与えていることを推定している。これは、第 2 章での形態観察の結果
を支持するものであった。また、翻訳に関与する遺伝子がモミラクトン感受性に関与してい
たことから、モミラクトンが翻訳を阻害している可能性を提示している。一方、ATP 合成
酵素のサブユニットをコードする atp2 の破壊株がモミラクトン B 耐性を示したことから、
モミラクトン感受性と呼吸活性との関係を様々な変異体や呼吸阻害剤を用いて追究し、両
者に正の相関があることを見出している。さらに、モミラクトンが細胞内の活性酸素種
(ROS)レベルを低下させること、また、ROS の添加がモミラクトンの生育阻害効果を抑
制したことなどから、モミラクトンは ROS レベルを減少させることで生育を阻害している
可能性を見出している。加えて本章では、モミラクトン耐性を付与する因子として 2 つの
輸送体 (Caf5, Pmd1) とストレス応答性転写因子 Pap1 の取得にも成功している。
第 4 章ではまず、光反応性樹脂に官能基非依存的にモミラクトン B を固定したビーズを
用いて結合タンパク質の探索が行われている。モミラクトン B 自体に結合する証拠は得ら
れていないものの、推定 NAD(P)H 脱水素酵素 Obr1 がビーズ結合タンパク質として同定さ
れている。さらに、モミラクトンの細胞内局在や結合因子取得のためのプローブ分子の創出
を目的として、モミラクトンの構造活性相関研究も併せて行われており、複数のモミラクト
ン誘導体の合成とその活性評価がなされている。抗菌活性が高く維持された誘導体は得ら
れていないものの、アレロパシー活性を維持した誘導体の創出に成功し、モミラクトンが持
つ 2 つの活性それぞれの構造活性相関が異なっていることを示唆している。
第 5 章では、2 章から 4 章において得られたモミラクトンの作用機序に関する知見が総
括・考察され、今後の展望や課題が述べられている。
これらの研究成果は、殆ど明らかになっていなかったモミラクトンの作用機序の一端を
解明しただけでなく、モミラクトンの生産能とその耐性形質とを併せた高ストレス耐性作
物の作出による、環境保全型農業の実現に新たな展望を示すものであり、学術上応用上寄与
するところが少なくない。よって、審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として
価値あるものと認めた。

参考文献

論文題目 イネが生産する抗菌性化合物モミラクトンの作用機序に関する研究

応用生命工学専攻

平成 30 年度 博士課程進学

氏名 富田 啓介

指導教員 野尻 秀昭

本博士論文の内容は学術雑誌論文として出版する計画があるため公表できない。

なお、本論文の内容は 5 年以内に出版予定である。

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