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大学・研究所にある論文を検索できる 「Scheduled intravenous acetaminophen versus nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) for better short-term outcomes after esophagectomy for esophageal cancer」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Scheduled intravenous acetaminophen versus nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) for better short-term outcomes after esophagectomy for esophageal cancer

川上, 次郎 名古屋大学

2021.07.21

概要

【緒言】
 胸部食道癌に対する根治的食道切除術は術後疼痛を伴い、十分な疼痛管理が必要である。術後疼痛のコントロールが不十分であると、肺活量が減少し、有効な去痰が阻害され、呼吸器合併症のリスクが高まり、患者の回復が遅れる。食道切除術後の効果的な術後疼痛管理は、術後の合併症を予防し、早期回復を促進するために重要である。硬膜外麻酔(TEA)に基づくマルチモーダル鎮痛が一般的に使用されており、各鎮痛剤の投与量を低減し、副作用を最小限に抑える。オピオイド関連の有害事象を減少させるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)もマルチモーダル鎮痛薬に含まれる。しかし、NSAIDs は、血小板機能障害、消化管粘膜障害、腎機能障害などが指摘されている。さらに近年の報告では、大腸切除後の縫合不全との関連が指摘されている。一方で、食道切除術後疼痛において、アセトアミノフェン定期静脈投与の有効性と安全性が報告されている。アセトアミノフェンは NSAIDs に比べて鎮痛作用が弱いとされるが、安全性が高いため好まれることが多い。しかし、NSAIDs の代わりにアセトアミノフェンを定期静脈投与することで、同等の鎮痛効果が得られるのか、食道切除術後の短期転帰を改善できるのかは明らかではない。本研究は、食道切除術後の疼痛管理においてアセトアミノフェン定期静脈投与の有効性と術後短期成績への影響について NSAIDs と比較することを目的とした。

【対象と方法】
 本研究はレトロスペクティブに行われた単施設コホート研究である。2014 年 5 月から 2016 年 10 月までの間に愛知県がんセンター病院で胸部食道癌に対して根治的切除が施行された連続患者を抽出した。本研究の適応基準は、右開胸または右胸腔鏡、開腹または腹腔鏡、胸骨後または後縦郭経路の胃管再建患者とした。術後疼痛を比較するため他の術式は除外した。
 2015 年 8 月から NSAIDs による縫合不全増加の可能性を危惧して、NSAIDs の使用を中止し、代用としてアセトアミノフェン定期静脈投与を導入した。NSAID の使用以外に、他の疼痛管理に変更はなかった。
 観察研究における治療選択バイアスおよび潜在的な交絡因子の影響を軽減するために、患者背景を治療逆確率重み付け(IPTW)を用いて調整した。胸部疼痛 visual analog scale(VAS)、腹部疼痛 VAS、オピオイド消費量、術後合併症の有無、肝障害、腎障害、術後短期成績について、IPTW で調整した回帰分析を行った。胸部疼痛 VAS、腹部疼痛 VAS、オピオイド消費量の時系列データは Bonferroni 多重補正で p 値を調整した。

【結果】
 研究期間中、愛知県がんセンター病院で胸部食道癌に対して、定型的な根治食道切除術を施行した連続 150 例のうち、2015 年 8 月以前に手術を受けた 73 例には術後の疼痛管理に NSAIDs を使用し(NSAIDs 群)、2015 年 8 月以降に手術を受けた 77 例には NSAIDs の代わりにアセトアミノフェンを使用した(Acetaminophen 群)。
 患者の臨床的特徴は、NSAIDs 群と比較して Acetaminophen 群で年齢中央値が高く、胸腔鏡と開腹の比率が高かった。術前に化学放射線療法を受けていた患者の比率は NSAIDs 群で高かった(Table1)。
 胸部平均 VAS はアセトアミノフェン群で NSAIDs 群と比較して術後日数(POD)0、4、 5、6 で有意に低かった(Figure 1a)。腹部平均疼痛 VAS は、POD 4、5、6 でアセトアミノフェン群が有意に低かった(Figure 1b)。アセトアミノフェン群で NSAIDs 群と比較してオピオイド消費量の有意な増加はなかった(Figure 1c)。
 縫合不全と術後せん妄の発生率はアセトアミノフェン群の方が NSAIDs 群より低かった(縫合不全、オッズ比(OR)0.3、p = 0.01、術後せん妄、OR 0.19、p < 0.01、Table 3)。術前化学放射線治療の比率が NSAIDs 群で高かったため、化学放射線療法を調整した場合の解析を追加したが、有意な関係は維持されていた(Supplementary Table 2)。

【考察】
 本研究では 3 つの重要な発見があった。1. 術後疼痛管理は、NSAID 群よりもアセトアミノフェン群でより効果的であり、オピオイドの消費量も増加しなかった。2. 食道切除後でも、アセトアミノフェンの定期静脈投与で、重度の肝機能障害は観察されなかった。3. アセトアミノフェン群で、縫合不全および術後せん妄の発生率が有意に低下した。
 胸部アプローチ(胸腔鏡、開胸)、腹部アプローチ(腹腔鏡、開腹)を含む様々な因子が術後疼痛に影響を与えていると考えられ、それぞれのアプローチを共変量の一つとして選択し、調整した。食道切除後の疼痛管理において、これまでアセトアミノフェンと NSAIDs それぞれの有効性が報告されている。本研究では初めて Acetaminophen群の方が、NSAIDs 群と比較して、術後の疼痛管理が良好であり、オピオイドの有意な増量もないというエビデンスを示した。
 肝障害は、治療用量であってもアセトアミノフェンの最も重篤な副作用である。このコホートのアセトアミノフェン群では 6 例(8%)に CTCAE グレード 3 以上の肝酵素上昇が認められたが、観察期間中にすべて回復した。これまでの報告と同様に、食道切除後のアセトアミノフェン定期静脈投与で、重度の肝障害は観察されなかった。
 大腸直腸手術後に NSAIDs が吻合部の治癒を阻害し、縫合不全のリスクを高める可能性があるとの多数の報告がある一方で、上部消化管術後の NSAIDs と縫合不全との関連性についての報告は非常に少ない。 本研究では NSAIDs 群と比較して、 Acetaminophen 群で縫合不全が有意に減少していたが、サンプル数が少なく、縫合不全と NSAIDs との関連性は不明なままである。今後サンプル数を増やした検討が必要であると考える。
 また、術後せん妄は食道切除術を受けた患者の 50%で報告されており、合併症率の増加や入院期間の長期化と関連している。アセトアミノフェンには中枢性鎮痛作用があると考えられており、中枢神経系への抗炎症作用が術後せん妄の発症を抑制する可能性がある。同様の報告はまだ少なく、今後も知見の集積が望まれる。
 本研究はいくつかの Limitation がある。第一に、単施設のレトロスペクティブ研究で、サンプルサイズも限られている。プロスペクティブな無作為化試験ではなく、IPTWでは未知の交絡因子すべてを調整することはできない。アセトアミノフェンを定期静脈投与したのに対し、NSAIDs は定期経腸投与したため、投与方法が 2 群で異なっており、これが結果に影響を与えた可能性がある。今回、研究の限界はあるものの、アセトアミノフェン静脈内投与の有効性を明らかにすることで、食道切除術後の疼痛管理や短期予後の改善に貢献することが期待される。

【結語】
 アセトアミノフェン定期静脈投与は、食道切除術を受けた患者の術後疼痛管理に効果的かつ適切であり、NSAIDS と比較して縫合不全および術後せん妄の発生率の低下と関連している可能性がある。

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