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大学・研究所にある論文を検索できる 「A randomised controlled trial of pectoral nerve-2 (PECS 2) block vs. serratus plane block for chronic pain after mastectomy」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A randomised controlled trial of pectoral nerve-2 (PECS 2) block vs. serratus plane block for chronic pain after mastectomy

Fujii, T. 藤井, 祐 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
 乳がんは女性のがんのなかで最も多く、生存率が比較的高い疾患である。しかし、乳がんに対する手術後の慢性痛は約25-60%に発生すると報告され、術後の生活の質(以下、Quality of Life(QOL))を低下させる一因となっている。
 区域麻酔は術後の急性痛や慢性痛を軽減し、なかでも硬膜外麻酔や傍脊椎ブロックは乳がん術後の急性痛や慢性痛を軽減すると報告されている。しかし、これらの方法は体幹の深部へアプローチするため、周術期低血圧や稀ではあるが血腫、気胸などの合併症が発生する危険性を伴っている。近年、これらの方法に代わって、超音波ガイド下に胸壁の筋膜間に局所麻酔薬を投与する超音波ガイド下胸壁ブロックがより安全でより簡易な方法として報告されている。胸壁ブロックのうち、Pectoral nerve-2ブロック(以下、PECS2ブロック)は大胸筋と小胸筋の間および前鋸筋の上の2ヶ所に局所麻酔薬を投与する方法で、またserratus planeブロックは前鋸筋と広背筋の間に局所麻酔薬を投与する方法である。
 この胸壁ブロックは乳がん術後の急性痛を軽減するとの報告は散見されるが、術後の慢性痛に対する軽減効果はいまだ不明である。過去の報告やわれわれの短期的な観察研究から、PECS2ブロックはserratus planeブロックよりも慢性痛の軽減に効果があると仮定した。その解明のために、本研究では乳がん手術6ヵ月後の慢性痛に対するPECS2ブロックとserratus planeブロックの有効性を比較検討した。

【方法】
 名古屋大学病院生命倫理審査委員会の承認のもと、2015年8月から2018年8月までに乳がんに対して乳房切除術が予定された患者をブロックランダム化によって2群に割付した。全身麻酔はプロポフォールとレミフェンタニルを用いて導入および維持を行った。手術開始前に割付に従って超音波ガイド下にPECS2ブロック(PECS2群)またはserratus planeブロック(Serratus群)を施行した。乳房部分切除や同時に乳房再建術が行われた患者は除外した。
 PECS2群は0.5%ロピバカインを大胸筋と小胸筋の間に10mlと前鋸筋上に20mlを計2ヶ所に投与した。Serratus群は0.5%ロピバカインを前鋸筋と広背筋の間に30mlを1ヵ所に投与した。
 術後観察は手術24時間後に研究に関与していない病棟看護師が0-100㎜のvisual analogue scale(以下、VAS)で急性痛を評価して、また術後6ヵ月後に割付を盲検化された独立した担当者による電話調査で0-10のNumerical Rating Scale(以下、NRS)で慢性痛を評価した。
 主要評価項目として、QOLに影響する中等度以上の疼痛のある患者(NRS≧4)の割合を両群間で比較した。さらに、術後慢性痛にとくに影響が強い因子として報告のある腋窩リンパ節郭清の有無と術後放射線治療の有無を多重ロジスティック回帰分析によって調整解析を行った。副次評価項目として、6ヵ月後に疼痛のない患者(NRS=0)の割合と健康関連QOLの指標であるEQ-5D-3L換算スコアを両群間で比較した。
 また、術後急性痛の評価として、手術後24時間までのモルヒネ使用量とVASによる疼痛強度を両群間で比較した。

【結果】
 患者は80人登録され、各群40人ずつに割付された。両群間の患者の年齢、閉経状態、体格(Body Mass Index)、手術リスク、手術手技(リンパ節処理方法)、手術・麻酔時間、術後放射線治療の有無に統計学的有意差は認めなかった(図1)。
脱落群はなく、手術6ヵ月後の中等度以上の慢性痛の割合はPECS2群4人(10%)、Serratus群13人(33%)(p=0.03)であった。腋窩リンパ節郭清と術後放射線治療の有無で調整解析しても調整後オッズ比(95%信頼区間)は0.23(0.07-0.80)と有意であった(p=0.02)。
 6ヵ月後に疼痛のない人の割合はPECS2群19人(48%)、Serratus群10人(25%)(p=0.06)であり、同様の調整後オッズ比(95%信頼区間)は2.9(1.1-7.5)と有意であった(p=0.03)。EQ-5D-3L換算スコアの平均値(標準偏差)は、PECS2群で0.91(0.14)、Serratus群で0.87(0.15)と有意な差はなかった(p=0.21)。
 急性痛の評価として、モルヒネ使用量は中央値[四分位点]でPECS2群が4[2-7]mgでSerratus群が6[3-9]mgと、PECS群で有意に使用量が少なかった(p=0.04)。しかし、24時間後の疼痛強度は中央値[四分位点]でPECS群18[11-27]mm、Serratus群23[11-35]mmと有意差はなかった(p=0.44)。

【考察】
 PECS2ブロックはserratus planeブロックより乳がんに対する乳房切除術後の中等度以上の慢性痛の頻度を軽減した。
 胸壁ブロックは乳房手術に対する安全で簡単な体表面に近い手技であり、術後急性痛に有効との報告はあるが、どの方法が有効かは分かっていない。本研究で、PECS2ブロックがserratus planeブロックよりも有効であることが示唆された。
 術後慢性痛は患者のQOLを低下させる要因であるが、本研究ではEQ-5D-3L換算スコアに有意差は認めなかった。これは疼痛だけがQOLに影響する要因ではないためだと考えられた。
 本研究にはいくつかの制限があった。コントロール群(ブロック未施行群)を設定なかったために術後慢性痛に対するserratus planeブロックの効果を評価できなかった。また、本研究は単施設での比較試験のために結果を一般化するには限界がある。さらに、慢性痛の評価を手術6ヵ月後としたために、それより長期間の評価はできていない。以上から、今後さらなる検討が必要と考えられる。

【結論】
 PECS2ブロックはserratus planeブロックと比較して、乳がんに対する乳房切除後の6ヵ月後における慢性痛、特に中等度以上の疼痛の発生頻度を軽減できる有用な方法であることが示唆された。

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