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大学・研究所にある論文を検索できる 「Evolution of Dipeptidic Molecules for the Induction of the Non-native Catalysis of Cytochrome P450BM3 by Screening and the Analysis of the Mechanisms」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Evolution of Dipeptidic Molecules for the Induction of the Non-native Catalysis of Cytochrome P450BM3 by Screening and the Analysis of the Mechanisms

米村, 開 名古屋大学

2023.06.26

概要

学位報告4

別紙4
報告番号








論文題目















Evolution of Dipeptidic Molecules for the Induction of the Nonnative Catalysis of Cytochrome P450BM3 by Screening and the
Analysis of the Mechanisms
(シトクロム P450BM3 の非天然反応を誘起するジペプチド誘
導体のスクリーニングによる開発およびその作用機序の解明)

名 米村 開

論 文 内 容 の 要 旨
シトクロム P450s (P450s) は、生体内で代謝や生合成などに関わる酸化酵素である。細菌、古細菌、
真核生物を問わず、様々な生物が種々の基質を酸化するために多様な P450s を有している。P450s は
非活性な C-H 結合を直接官能基化できることから、合成化学への応用を志向して様々な研究が行わ
れてきた。中でも、巨大菌由来のシトクロム P450BM3 (P450BM3) は、モノオキシゲナーゼ P450s
の中で最大の活性を示し、発現・精製が容易な上、結晶構造も早期から報告されており構造情報が豊
富なことから盛んに研究されてきた。P450BM3 の基質結合部位は天然の基質である長鎖脂肪酸の結
合に最適化されているため、それ以外の非天然基質の酸化反応は通常進行しない。そのため、
P450BM3 の高い触媒活性を望みの反応に応用するためには、酵素への変異導入による反応空間の調
節が必要であった。一方、申請者の所属する研究室では、天然基質の構造を模擬した偽の基質(デコ
イ分子)をベンゼンなどの非天然基質と共に野生型 P450BM3 に添加すると、非天然基質の水酸化が
進行することを報告している。申請者は、デコイ分子の構造の最適化による、より高度な水酸化活性
の誘起を目指して研究を行ったので、本論文として報告する。
本稿第二章では、スクリーニングによるデコイ分子の進化について報告する。既存のデコイ分子の
中でも特に高活性なデコイ分子の構造を基に段階的なスクリーニングを行った結果、従来のデコイ分
子に比べ約 1.6 倍高い、毎分 400 回転を超えるベンゼン水酸化活性を誘起するデコイ分子の開発に成
功した。興味深いことに、得られたデコイ分子存在下では、トルエン、クロロベンゼン、シクロヘキ
サン、プロパンの水酸化も高速に進行し、今回開発したデコイ分子がベンゼンに限らず、多様な有機
小分子の水酸化に応用可能であることを示した。さらに、高圧化においてより高難度なエタンの水酸
化も毎分 80 回転を超える速度で進行し、得られたデコイ分子の有用性を示した。
本稿第三章では、ベンゼン水酸化スクリーニングで開発されたデコイ分子を中心に行った
P450BM3 への結合状態の調査を報告する。ベンゼン水酸化で有効だったデコイ分子は、長鎖脂肪酸

学位関係

よりも多くの水素結合で P450BM3 と結合していた。一方、その結合解離定数 Kd は長鎖脂肪酸
と近い値を示しており、増加した水素結合はデコイ分子の結合力を高めているのではなく、デ
コイ分子の酵素内部での位置の正確な固定化に寄与していることが示唆された。また、天然基
質が結合すると F-, G-ヘリックスが移動することが知られているが、デコイ分子と P450BM3
の共 結晶 に おい ては そ のよ うな 変 化は 見ら れ なか った 。 さら に、 デ コイ 分子 - ベン ゼ ンP450BM3 の三者複合体の結晶構造を解析したところ、His266 が大きく動くことでヘム上の空
間がベンゼンの大きさに合わせて 3 倍近く拡大していることが分かった。天然基質の結合に伴
う F-ヘリックスの移動によってこの His266 の動きは制限されてしまうため、デコイ分子は天
然基質同様に P450BM3 に結合しながらも構造変化を起こさないことで、活性部位を狭めつつ
もベンゼンの取り込みが可能な状態を維持していると推察された。また、基質非結合状態でも
F-, G-ヘリックスがシフトしやすい A264E 変異体とデコイ分子の共結晶においてもやはり F-,
G-ヘリックスのシフトは観察されず、デコイ分子が P450BM3 の構造変化を抑えていることが
支持された。さらに、相互作用解析で得られた結果を基に反応条件を最適化したところ、ベン
ゼン水酸化活性が最大で毎分 2000 回転に達した。この活性値は天然基質の水酸化活性に迫る
ものであり、デコイ分子を用いた反応系の潜在能力の高さを示した。
本稿第四章では、P450BM3 にメタンを水酸化させるデコイ分子の開発について報告する。メタ
ンは C-H 結合解離エネルギーが高く、また分子サイズが小さいことから活性部位への固定化が難
しいために水酸化が極めて高難度とされる。メタン自体の水酸化活性のスクリーニングは困難で
あるため、ブロモメタンを代理基質として用い、デコイ分子の段階的なスクリーニングによる改
良を行った。ブロモメタン水酸化スクリーニングで選ばれたデコイ分子の存在下では、高圧反応
装置を用いた反応で実際に P450BM3 によるメタンの触媒的な水酸化反応が進行し、P450 による
メタンの初の触媒的水酸化を達成した。
本稿第五章では、P450BM3 の祖先型酵素の推定について報告する。祖先型酵素は一般的に高い
耐熱性を持つことが知られており、祖先型酵素を鋳型としてタンパク質を設計する手法が近年多
数報告されている。P450BM3 を含む CYP102A サブファミリーに属する現存酵素のアミノ酸配列
を用いて推定した祖先型酵素の配列を基に、P450BM3 と類似の基質特異性を示すように改変を加
えたタンパク質を設計した。AlphaFold2 によるタンパク質立体構造予測からは、設計した改変祖
先型酵素は P450BM3 と同様にフォールディングし、類似の基質を認識可能であることが示唆さ
れた。さらに、発現した改変祖先型酵素は現存酵素を上回る耐熱性を有していた。
以上、申請者は、デコイ分子を用いた P450BM3 による非天然基質の水酸化活性を極限まで高
めることに成功した。スクリーニングによるデコイ分子の開発手法は、ベンゼンやメタンに限ら
ず、他の基質の水酸化を志向するデコイ分子の開発にも応用しうるものである。また、本論文で示
したベンゼンと P450BM3 による結晶構造は、ベンゼンと金属酵素の共結晶としては初めての報
告であり、今後のデコイ分子の開発のみならず、変異体の開発や他のベンゼン水酸化酵素の機能
解明にも寄与すると期待できる。以上の成果は、P450s に限らず、タンパク質工学の発展に幅広く
貢献するものであると捉えている。

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