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大学・研究所にある論文を検索できる 「Characterisation and Crystallisation of CYP102 Family Enzymes: New Function for Decoy Molecules in Protein Crystallisation to Explore Model Compounds of Transient Species in the P450 Catalytic Cycle」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Characterisation and Crystallisation of CYP102 Family Enzymes: New Function for Decoy Molecules in Protein Crystallisation to Explore Model Compounds of Transient Species in the P450 Catalytic Cycle

STANFIELD, Joshua Kyle 名古屋大学

2020.04.02

概要

【概要】本研究では、CYP102 酵素群に属する水酸化酵素に結合し、非天然基質の水酸化反応を活性化する「擬似基質」に着目し、様々な新規擬似基質を設計・合成することで、その広範な応用を試みた。特に、同じ CYP102 酵素群でも反応空間の構造が大きく異なる蛋白質に対し、本擬似基質機構を拡張し、CYP102A5 や CYP102A7 での非天然基質の水酸化に成功した。また、CYP102 酵素群の中でも最大級の酵素活性を示す P450BM3(CYP102A1)に対し、今回合成した擬似基質を検討する中で、P450BM3 の結晶化を大きく促進する擬似基質 AbiATrp を見出し、AbiATrp と P450BM3 の共結晶を種結晶として利用した新規結晶調製法を開発した。本手法を利用することで、従来困難であった様々なP450BM3の結晶構造解析に成功し、その構造学的観点からの理解を大幅に推進することに貢献した。

【本文】第四章では、新規擬似基質の設計指針の提案と合成を行った。特に、擬似基質の結合による活性部位の構造変化が、活性向上や立体選択性の変化を促すと期待し、活性部位に近接する擬似基質の末端部位を中心に様々な改変を検討した。

第五章では、セレウス菌由来の CYP102A5、リケニホルミス菌由来の CYP102A7 及びストレプトマイセス属放線菌由来のCYP102D1 の過剰発現系及び精製手法を確立し、P450BM3 以外の CYP102 酵素群へ擬似基質機構を展開した。非天然基質の水酸化活性を確認したところ、CYP102A5 と CYP102A7では最適な擬似基質が大きく異なった。CYP102A5 は嵩高いアミノ酸を修飾した擬似基質が有効であったが、CYP102A7 ではアラニンの様な側鎖の小さなアミノ酸を修飾した擬似基質やアミノ酸を修飾していない擬似基質を用いると高い活性を示した。CYP102D1 は合成した擬似基質では水酸化反応が進行せず、従来と異なる擬似基質の設計が必要であることを明らかにした。擬似基質の酵素への結合を確認すると、CYP102A5 と CYP102A7 では、天然基質の結合とは異なる二段階の擬似基質の結合が見られ、擬似基質が協同的に作用していることが示唆された。また、水酸化反応が観測されなかった CYP102D1 においても擬似基質の結合が観測された。

第六章では、網羅的なスクリーニングによって、CYP102A5 の結晶化条件を最適化し、最高分解能 2.8 Å で構造解析に成功した。さらに、P450BM3 の構造と比較することで、CYP102A5 の基質結合に関与するアミノ酸残基の同定にも成功した。P450BM3 では Y51 と R47 のアミノ酸残基が基質に結合していたが、CYP102A5 では S358、R356 が基質結合に重要な役割を担っていることが示唆された。

第七章では、脂環式カルボン酸誘導体及び植物ホルモン誘導体を修飾した擬似基質と P450BM3 の共結晶化を行い、その構造解析に成功した。脂環式カルボン酸誘導体(5CHVATrp 及び 6CHCATrp)との共結晶では、P450BM3 の活性部位近傍の F87 側鎖の回転が観測された。さらに、この F87 の回転は、芳香族化合物の不斉水酸化反応における立体選択性の制御に重要であることが示唆された。また、植物ホルモン誘導体を修飾した AbiATrp を用いると、P450BM3 の結晶化が著しく促進される特異な現象が観察され、従来の結晶化条件と比べ非常に高品質な結晶が収率良く得られることを見出した。解析の結果、AbiATrp 結合型 P450BM3 の構造は最大分解能 1.22 Å で得られ、化合物が結合した P450BM3 の構造としては、最も高い分解能を達成した。アンドロスタン誘導体である AnoFATrp と P450BM3 の共結晶では、P450BM3 と AnoFATrp との間に、これまでの擬似基質では存在しなかった新たな水素結合が観察され、結合力向上に向けた擬似基質の新規設計指針を得た。

第八章では、AbiATrp が P450BM3 の結晶化を大きく促進することを利用し、P450BM3 の新規結晶化法を開発した。AbiATrp 存在下で調製した P450BM3 の結晶を種結晶として利用し、これまで結晶化が困難であった擬似基質と P450BM3 の共結晶の構造解析に成功した。これにより、P450BM3 を強く活性化する擬似基質は、分子内相互作用や P450BM3 との水素結合によって、P450BM3 内で立体構造が固定化されていることを明らかにした。さらに、本結晶化法を応用することで、補因子であるヘムを人工金属錯体に置換した P450BM3 改変体の結晶化にも成功した。P450 の酸化活性種(鉄四価オキソポルフィリン π カチオンラジカル)に類似した構造を持つ、モリブデンオキソポルフィリン導入 P450BM3 に対し、擬似基質、及び非天然基質であるスチレンを結合した共結晶構造を得た。スチレンのビニル基がオキソ種近傍に観察され、その配向が実験的な立体選択性と一致することを明らかとした。一方、ヘムを補因子とする通常の P450BM3 とスチレンの共結晶では、ビニル基が活性中心から離れた位置で結合することが確認された。これらの結果は、酸化活性種の生成に伴いスチレンが活性部位内で回転することを示唆しており、触媒サイクルの進行と共に起こる基質の動的変化を、結晶構造上で観測したものと言える。以上から、新規 P450BM3 結晶化法は、擬似基質と P450BM3 の相互作用を容易に可視化することで、次世代の擬似基質の設計指針を与えるだけでなく、反応機構の解明や新規反応系の開発への貢献が期待される。

本研究では、様々な擬似基質を設計・合成することで、P450BM3 以外の CYP102 酵素に擬似基質を応用することに成功し、酵素ごとにそれぞれ最適な擬似基質が存在することを見出した。また、P450BM3 以外では達成されていなかった CYP102 酵素群の結晶構造解析を CYP102A5 によって達成し、基質結合部位の特定にも成功した。さらに、結晶化促進作用を示す AbiATrp を発見し、従来困難であった擬似基質との共結晶や、P450BM3 改変体の結晶化を達成した。この新規結晶化法を利用し、酸化活性種の類似構造を解析することで、P450BM3 の触媒回路における動的変化を結晶構造に基づき考察することが可能となった。CYP102 酵素群による非天然基質の高効率な水酸化を可能とする新規擬似基質の分子設計に関する本研究での取り組みにより、擬似基質の結合や酸化活性種の生成に伴う活性部位の構造変化を考慮した真の酵素反応場設計が可能になった。これらの研究成果により、CYP102 酵素群を用いるバイオ触媒開発が飛躍的に進展するものと期待する

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