長期人工呼吸器装着患者に対する多職種協働に基づいたリハビリテーション (第122回成医会葛飾支部例会)
概要
難治性遺伝性網膜疾患は,治療法の開発が急務でありながら,決定的な治療法が確立していない重要疾患で,その大半を占める網膜色素変性や黄斑(錐体)ジストロフィは難病認定されている.難治性遺伝性網膜疾患の遺伝子型と表現型の関連性を研究テーマとして,2001年から研究を開始し,これまで網膜色素変性を含め様々な疾患で,新規遺伝子変異を特定し,欧米とはその原因が異なることを明らかにしてきた.現在,葛飾医療センターと東京慈恵会医科大学附属病院での専門外来で多数の難治性遺伝性網膜疾患の患者さんを診療し,関東圏はもちろん関東外からも多数の患者さんが通院している.遺伝子変異を特定する解析方法も進歩・発展し,一つの遺伝子のエクソン領域の塩基配列を決定するSanger法から現在は,次世代シークエンサを用いた全エクソーム解析が主流となり,私たちのグループもほとんどの症例で,現在,全エクソーム解析によって疾患原因・変異を特定する研究を行っている.疾患原因を特定しても治療法に結びつかない現状が長く続いたが,2008年,世界で最初にRPE65遺伝子変異よる先天黒内障に対して,アデノウィルス随伴ベクター(AAV)を用いた遺伝子治療が欧米で実施された(NEnglJMed,2008).その後,多数例でAAVを用いた臨床研究が実施され,AAVの安全性が確認された.RPE65遺伝子に続き,コロイデレミアの原因遺伝子であるCHMやX連鎖網膜色素変性の原因遺伝子であるRPGRに対する遺伝子治療の臨床治験も欧米で実施され,日本でもいよいよ遺伝子治療が実施される段階になった.ビタミンA代謝を司る視サイクルで,活性型ビタミンAである11-cisretinalが産生されないことで,難治性遺伝性網膜疾患が引き起こされる.代表疾患として,11-cisretinolから11-cisretinalに変換する酵素をコードするRDH5遺伝子異常により,白点状眼底が引き起こされる.白点状眼底は,これまで停在性夜盲に分類され進行性はしないとされてきたが,私たちは晩期に錐体機能異常,黄斑部異常が検出されるケースが少なくないことを明らかにした.
本講演では,間もなく本邦でも遺伝子治療が開始される可能性が高い,コロイデレミア及びX連鎖網膜色素変性の臨床的特徴および遺伝子解析結果について紹介したい.また,白点状眼底の多数例の解析で導き出された臨床像の特徴と治療に向けた戦略,その実際について講演したい.