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大学・研究所にある論文を検索できる 「肝臓と骨格筋がインスリン抵抗性および動脈硬化に及ぼす影響についての検討 : [6,6-2D2]グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法で2型糖尿病患者の内因性糖放出率と糖取り込み率を評価する非ランダム化群間比較試験 -高齢2型糖尿病患者の骨格筋に関連する因子の探索-」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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肝臓と骨格筋がインスリン抵抗性および動脈硬化に及ぼす影響についての検討 : [6,6-2D2]グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法で2型糖尿病患者の内因性糖放出率と糖取り込み率を評価する非ランダム化群間比較試験 -高齢2型糖尿病患者の骨格筋に関連する因子の探索-

森田, あい 東京大学 DOI:10.15083/0002002383

2021.10.13

概要

【序文】我が国の高齢化は進行しており、糖尿病患者においてもまた、高齢化が進んでいる。糖尿病は血管合併症だけでなく、サルコペニアを含む老年症候群を合併しやすいため、高齢糖尿病患者は健康寿命が短縮しやすく、国民医療費や介護医療費を増大させる要因となり得ると考えられる。2型糖尿病の成因の一つであるインスリン抵抗性は、肥満・過食などを背景として発症し、2型糖尿病の重要な病態である。さらにインスリン抵抗性は2型糖尿病に合併するサルコペニアの一因にもなるとされており、その病態解明をすることは非常に重要である。本研究では、第一部として[6, 6-2D2]グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法を行い、臓器別インスリン抵抗性の評価などを行った。第二部では高齢2型糖尿病患者の骨格筋量を規定する因子を網羅的に行った。

―第1部-安定同位体標識グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法で2型糖尿病患者の内因性糖放出率と糖取り込み率を評価する非ランダム化群間比較試験
【背景】肝臓と骨格筋はインスリン抵抗性の機序に大きな役割を担っていることから、インスリン抵抗性の責任臓器であるとされる。インスリン抵抗性改善薬であるビグアナイド薬は主に肝臓のインスリン抵抗性を改善させ、チアゾリジン薬は主に骨格筋のインスリン抵抗性を改善させる。各々違った作用を持つため、2型糖尿病患者のインスリン抵抗性の責任臓器を特定することは、患者に適切な治療法を選択するうえで重要である。正常血糖高インスリンクランプ法は、インスリン抵抗性の評価法としてゴールドスタンダードと言われているが、この手法で評価できるのは骨格筋のインスリン抵抗性のみであり、肝臓のインスリン抵抗性を評価することが出来なかった。肝臓のインスリン抵抗性を評価する方法として、[6, 6-2D2]グルコース(安定同位体標識グルコース)を用いた正常血糖高インスリンクランプ法がある。この手法では、正常血糖高インスリンクランプ試験で投与するインスリン濃度を2段階(低用量・高用量)に設定することにより、1段階目では肝臓の、2段階目では骨格筋のインスリン抵抗性を評価することができる。本研究は2型糖尿病患者を肥満・脂肪肝ありもしくは非肥満・脂肪肝なしに分類し、[6, 6-2D2]グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法を行い両群の臓器別インスリン抵抗性を評価することを目的として行った。

【方法】入院中の2型糖尿病患者(20~79歳)で肥満・脂肪肝あり(5例)もしくは非肥満・脂肪肝なし(5例)の者を対象とした。肥満の基準はBMI(bodymassindex)25kg/㎡以上、脂肪肝の基準はCAP(controlled attenuation parameter)232.5dB/m以上とした。重度の肝腎機能障害やアルコール多飲者などは除外した。主要評価項目として、[6, 6-2D2]グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法を行い、定常状態での内因性糖放出率(endogenous glucose production, EGP)と糖取り込み率(rate of glucose disappearance, Rd)を評価した。Rdは血中インスリン濃度による影響を大きく受けるため、定常時のブドウ糖注入率(Glucose infusion rate, GIR)を血中インスリン濃度で補正した値であるM/I ratioを骨格筋のインスリン抵抗性の指標とした。副次評価項目はインスリン投与によるEGP抑制率、正常血糖インスリンクランプ法における血糖値・血中インスリン・Cペプチド・遊離脂肪酸の変動、血糖コントロール指標(空腹時血糖値、HbA1c)およびHOMA-IR・HOMA-β・CPIとEGPおよびM/I ratioとの関連、肝機能検査・血中コレステロール値・凝固検査・血算とEGP・M/I ratioとの関連、安全性評価項目とした。

【結果】肥満・脂肪肝あり群は、非肥満・脂肪肝なし群と比較してクランプ①、クランプ②におけるRdが有意に低く、M/I ratioも同様に有意に低下していた。有意差は認めなかったが、EGPは肥満・脂肪肝あり群で高かった。また、EGP抑制率も肥満・脂肪肝あり群で低い傾向を認めた。血中遊離脂肪酸(Free fatty acid, FFA)は肥満・脂肪肝あり群で有意に上昇していた。

【考察】本研究ではインスリン濃度依存的にRdが上昇し、EGPは低下しており、これは既報と同様の所見であった。EGPで有意差を認めなかったのは、CAPの個体差が大きかったためである可能性がある。また肥満・脂肪肝あり群ではインスリン投与前後の血中FFA濃度が高く、脂肪細胞のインスリン抵抗性も高い可能性がある。以上から、[6, 6-2D2]グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法は、2型糖尿病患者の骨格筋・肝臓・脂肪細胞のインスリン抵抗性を同時に評価できる可能性が示唆された。両群の肝臓・骨格筋におけるインスリン抵抗性の差は、血中FFAが関与していると考えられるが、EGPおよびM/I ratioはFFAと有意に相関していたことから、脂肪毒性によるインスリン抵抗性はFFA濃度依存的である可能性が示唆された。

―第2部―高齢2型糖尿病患者の骨格筋量に関連する因子の探索
【背景】老年症候群の一つであるサルコペニアは骨格筋量とその質の低下により診断され、フレイル(虚弱)の中核病態である。サルコペニアの中でも肥満に合併したサルコペニアは「サルコペニア肥満」と呼ばれ、サルコペニア単独あるいは肥満単独と比較して高血糖や高血圧、脂質異常症、インスリン抵抗性などの冠動脈疾患リスクと関連し、さらに死亡率が高いことが報告されている。サルコペニア肥満のメカニズムは、肥満を背景とした慢性炎症性環境、インスリン抵抗性による蛋白分解の合成低下と分解促進、高インスリン血症によるマイオカイン上昇などが考えられている。2型糖尿病にサルコペニアが合併する意義は大きく、血糖コントロールへの影響や転倒・骨折から寝たきりになるリスクが高まることなど考えられる。それ故、サルコペニアの予防は重要であるが、どのような患者でサルコペニアリスクが高いのか検討した報告は少ない。本調査は、高齢2型糖尿病患者の骨格筋量と臨床的背景について検討し、サルコペニアを来しやすい要因について検討することを目的とした。

【方法】2014~2016年に東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科に教育入院した1675例のうち、生体インピーダンス法による体組成評価が行われた65歳以上の高齢2型糖尿病患者は336例であった。その中から膵性もしくは肝性糖尿病の患者12例、ステロイド内服者8例、悪性腫瘍の術前もしくは治療中の患者5例、感染症合併4例、食欲不振がある患者2例、浮腫を伴う患者5例、慢性閉塞性肺疾患を合併する患者1例、透析中の患者3例を除外した296例を対象に、体組成と患者背景、身体所見、血液検査所見および生理学的検査所見との関連を比較した。

【結果】骨格筋量低下群では骨格筋量正常群と比較して有意に高齢であり、肥満指数が有意に低く、インスリン抵抗性が低くインスリン分泌能が低下していた。また、過去最大BMIも有意に低かった。骨格筋量低下群では糖尿病発症前に最大体重となっており、糖尿病発症前に体重が減少している可能性が示唆された。またCAVIの数値が有意に高く、動脈硬化が進展していた。骨格筋量正常群では肥満指数とCAVIが負の相関関係を示したのに対し、骨格筋量低下群では肥満指数とCAVIが正の相関関係を示していた。多変量解析では、骨格筋量は年齢や性別などと独立して動脈硬化と関与していた。

【考察】(1)骨格筋量に影響を及ぼす因子について:肥満を背景として骨格筋量が低下することが報告されているが、本調査では肥満以外の要素の可能性が推察された。インスリン分泌能の低下はIGF-I産生を低下させ、骨格筋量を低下させる可能性が報告されている。本調査でも骨格筋量低下群は内因性インスリン分泌能が低下しており、骨格筋量に影響を及ぼしている可能性が推察される。また骨格筋量低下群では糖尿病を発症する以前に骨格筋量が低下している可能性が示唆された。骨格筋量低下群の糖尿病発症には、肥満に伴うインスリン抵抗性ではなく、インスリン標的臓器である骨格筋量が減少し糖利用が低下することにより生じるインスリン抵抗性が背景にある可能性がある。インスリン抵抗性評価法のゴールドスタンダードである正常血糖高インスリンクランプ法を用いて骨格筋量低下とインスリン抵抗性の関与を検討した報告はなく、病態解明のために今後検討が必要である。
(2)動脈硬化に影響を及ぼす因子:一般的に内臓脂肪の蓄積は動脈硬化進展に関与する報告があるが、骨格筋量正常群では逆の結果が得られた。さらに骨格筋量低下群では既報と同様に内臓脂肪蓄積と動脈硬化進展に有意な相関関係が見られたことから、骨格筋量の維持が動脈硬化進展予防に働いている可能性が考えられる。マイオカインは直接的ないし間接的に動脈硬化進展抑制作用を示す報告があり、今後さらなる研究の蓄積が必要である。

-第3部-
【第1部結論】
 日本人2型糖尿病患者に対して[6, 6-2D2]グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法を実施した。肥満・脂肪肝を伴う2型糖尿病患者は、非肥満・脂肪肝なしの2型糖尿病患者と比較して骨格筋、肝臓、脂肪細胞のインスリン抵抗性が高い可能性が示唆された。[6, 6-2D2]グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法は、2型糖尿病患者の骨格筋・肝臓・脂肪細胞のインスリン抵抗性を同時に評価できる可能性がある。本手法は2型糖尿病に限らず、インスリン抵抗性を示す様々な表現型への応用も期待される。

【第2部結論】
 高齢2型糖尿病患者において、インスリン分泌能低下はサルコペニアの危険因子となり得る可能性が示唆された。2型糖尿病におけるサルコペニアには、インスリン抵抗性だけでなく、インスリン抵抗分泌能低下も含めたインスリン作用不足が発症に関与している可能性がある。また骨格筋量低下群は糖尿病発症前から骨格筋量が減少してる可能性も推察され、インスリン標的臓器である骨格筋減少に伴うインスリン抵抗性糖尿を背景としている可能性がある。骨格筋量とインスリン抵抗性の関連について、正常血糖高インスリンクランプ法で検証した報告はなく、今後検討していく必要がある。骨格筋量の維持が動脈硬化進展を予防できる可能性については明確な機序は明らかにされておらず、今後さらなる研究が求められる。

【結語】
 骨格筋と肝臓がインスリン抵抗性及び動脈硬化に及ぼす影響について検討を行った。[6, 6-2D2]グルコースを用いた正常血糖インスリンクランプ法は肝臓・骨格筋・脂肪細胞のインスリン抵抗性を同時に評価できる可能性が示唆された。同手法を用いることにより、サルコペニアとインスリン抵抗性の関連を解明する一助になることが期待される。また、骨格筋量維持が動脈硬化に与える影響についても、今後さらなる研究が求められる。

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