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大学・研究所にある論文を検索できる 「フラグメント分子軌道法と教師無し学習を用いたタンパク質-リガンド間相互作用解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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フラグメント分子軌道法と教師無し学習を用いたタンパク質-リガンド間相互作用解析

川嶋, 裕介 大阪大学

2021.03.24

概要

フラグメント分子軌道(FMO)法は巨大分子系の量子化学計算を現実的な時間で実行する量子化学計算手法の一つであり、近年様々な領域で応用されている。この手法の特徴の一つに、大規模分子をフラグメントに分割した各フラグメントの計算結果をベースにして全分子計算を行なうため、Inter Fragment Interaction Energy(IFIE)として、各フラグメント間の相互作用エネルギーを定量的かつ容易に求めることができることが挙げられる。これによって、系内の原子団間のフラグメント間相互作用の定量的な解析が可能となる。そのため、IFIEのリガンド-受容体相互作用解析における活用が期待されており、年々生体分子系に対するFMO法の適用が拡大されている。更に、IFIEはエネルギー分割法(PIEDA)によって静電相互作用(ES)、交換反発相互作用(EX)、電荷移動相互作用(CT+mix)、分極相互作用(PL)、分散相互作用(DI)という物理学的に意味が異なるエネルギー成分に分割できる。これによって得られるPIEDAのエネルギー成分は、リガンドと受容体の結合において重要とされる非共有結合性相互作用に対応付けることが可能である。そのため、PIEDAによって得られる相互作用情報は構造ベース創薬(SBDD)における新規医薬品の開発に於いて重要な知見を与えると考えられる。

複数リガンドに対するPIEDAの解析方法には、階層的クラスター解析(HCA)を行った後に各フラグメントとリガンドとの相互作用エネルギーをヒートマップで表示する方法(VISCANAなどに実装)がある。これによって、相互作用解析に於いてどのアミノ酸残基が重要であるかを一覧することができる。しかしながら、この手法は対象となるリガンドの数が増えると、HCAで得られる樹形図が複雑になり視認性が悪くなるという問題がある。このため、サンプルサイズが大きくなっても、視認性を損なわず要約できる手法の開発が望まれる。そこで、我々は次元圧縮とクラスタリングを同時に行うことができる教師無し機械学習法である自己組織化マップ(SOM)をHCAと組み合わせることで、大量のデータでもPIEDAの結果を、視認性を損なわず要約できる手法をSBDDでは初めて適用した。

序章では、提案手法の概要を関連する手法の説明を含めて説明した。初めにPIEDAについて説明した後、SBDDで重要となる非共有結合性相互作用とPIEDAの各エネルギー成分の対応について述べた。次に、提案手法の核となる手法である自己組織化マップについて説明を行った。最後に、階層的クラスタリングについて説明を行った。

第一章と第二章では、提案手法に対するケーススタディーとしてDipeptidyl Peptidase-4 (DPP-IV)阻害剤複合体とCOVID-19 の原因ウィルスであるSARS-CoV-2のメインプロテアーゼを対象として相互作用解析を行った。

第一章では、様々な機関や企業で開発が行われており知見も豊富なDPP-IV阻害剤に対してPIEDAと提案手法による解析を行うことにより、本手法の有効性を確認した。初めにFMO計算を行った後、IFIE及び各相互作用成分に対して提案手法による解析を適用した。その結果、リガンドと重要な相互作用を持つアミノ酸残基を抽出し、視覚的に要約することが可能であることを示した。また、クラスタリングにおいて特徴的な相互作用を持つアミノ酸残基としてTyr547とPhe357、Trp629、Ser630を抽出し、クラスターの特徴も要約することができた。解析の中でも特に、DI項に対するクラスタリングが、良く知られているDPP-IV阻害剤のクラス分類と対応する結果が得られることを示した。次に、提案手法による解析の後の流れとしてクラスター毎のPIEDA解析を行った。DI項に対して本手法を適用した後、クラスター毎にPIEDAの各相互作用成分による解析を行い、非共有結合性相互作用の当てはめを行った。リガンドが多くなるにつれ当てはめる作業は困難になるが、クラスター毎に行うことで比較的容易に行うことができたと考えられる。

第二章では、FMOデータベースから得られるSARS-CoV-2メインプロテアーゼのPIEDA結果に対して、提案手法による解析を行った。対象のデータは、PDBjのデータが登録される際に半自動的に計算されており、活性サイト外に存在するリガンドなど、解析を行う上でノイズとなるデータも存在する。そのようなデータに対しても問題なくデータの解析ができることが望まれるが、この章では、提案手法がノイズの含まれるデータに対しても適切に機能するかを含め、解析を行った。初めに、ノイズの含まれるデータに対して提案手法による解析を適用した。その結果、第一章と同様に、重要となる相互作用を持つアミノ酸残基を抽出し、視覚的に把握できることを示すと同時に、ノイズが存在するようなデータに対しても適切に機能することを示した。さらに、DI項に対するクラスタリングでは、活性サイト外の リガンドがSOMによって特定の潜在空間の格子点にクラスタリングされ、活性サイト内外のリガンドが区別されていることが見られた。次に、第一章と同様に、提案手法による解析の後の流れとしてクラスター毎のPIEDA解析を行った。活性サイト内のリガンドのデータのみを考え、DI項に対して本手法を適用した後、クラスター毎にPIEDAの各相互作用成分による解析を行い、非共有結合性相互作用の当てはめを行うことができた。

本研究では、FMO法のSBDDへの利用拡大を目的に、大量のリガンドに対しても視認性を損なわず機能するPIEDAの要約・解析手法の開発を行った。近年の計算機の計算速度向上により、大量のシミュレーションが可能になると考えられることから、学習のためのラベルを必要としないこの手法が、より広範に、PIEDAにおける探索的データ解析で利用され、FMO法によるSBDDの発展に寄与することを期待する。

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