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大学・研究所にある論文を検索できる 「コバルトポリモリブデン酸を触媒とした酸素発生反応におけるO-O結合形成機構の解明と制御に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

コバルトポリモリブデン酸を触媒とした酸素発生反応におけるO-O結合形成機構の解明と制御に関する研究

多伊良, 夏樹 TAIRA, Natsuki タイラ, ナツキ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

Studies on Mechanism and Control of O-O
Coupling in Water Oxidation Catalyzed by Cobalt
Polymolybdates
多伊良, 夏樹

https://hdl.handle.net/2324/6787407
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(理学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(様式3)







論 文 名









多伊良

夏樹

Studies on Mechanism and Control of O-O Coupling
in Water Oxidation Catalyzed by Cobalt Polymolybdates
(コバルトポリモリブデン酸を触媒とした酸素発生反応における
O-O 結合形成機構の解明と制御に関する研究)
















近年、水の酸化反応を利用して光化学的に水素エネルギーや CO2 還元生成物を得る人工光合成が
注目されている。しかし、酸素発生反応 (2H2O → O2 + 4H+ + 4e−; WO) は 4 電子酸化を要する難解
な反応であり、効果的に促進できる酸素発生触媒 (WOC) の学理探求と解明が依然必要不可欠であ
る。植物の光合成活性中心に存在する WOC (Mn4 CaO5) の構造決定と並行し、高活性な分子性 WOC
の研究は近年飛躍的な進歩を遂げた。一方、実用化に向けた研究課題の一つに触媒の耐久性の向上
があげられる。通常の有機物に基づく配位環境は過激な酸化条件下において酸化分解し CO2 を発生
するのに対し、ポリオキソメタレート型の高活性な WOC (POM 型 WOC) は、金属酸化物を配位環
境に有することから酸化分解に対する耐性が高く、長年注目されてきた WOC 群である。しかし、
巨大分子量を有することが障害となり、詳細な機構的研
究が実に遅れていた (図 1a) 。本研究では、最小分子量

(b)

(a)

O
Mo H Mo
O
HO
OH
CoIII

の POM 型 WOC であるモリブデン酸を有するコバルト
単核 POM ([CoIIIMo6O24H6]3−、Co-POM-Mo、図 1b) およ
び特に WO 反応の律速過程として知られる O-O 結合過
Co-POM-Mo

程に着目し、反応機構の解明およびその制御に基づく
まず、Co-POM-Mo と温和な犠牲酸化剤として知られ
る[RuIII(bpy)3]3+(RuIII)の 混合による化 学酸化を 駆動力
とした酸素発生反応の速度論的研究、同位体標識法お
よび網羅的な DFT 計算に基づく機構的研究に取り組ん
だ。ストップトフロー分光光度法を用い、Co-POM-Mo
と RuIII による酸素発生反応の各種条件下における速度
データを収集し、Eyring プロットの作成を行った。その
結果、律速過程であると予測される O-O 結合形成過程
に対する活性化エントロピーは正の値を有し (ΔS‡ =
20-40 cal K−1 mol−1)、O-O 結合が Co-POM-Mo 単一分子
内で解離的活性化を受けて進行する分子内 O-O 結合過
程 (i-I2M 過程) であることを初めて突き止めた (図

: Co

: Mo or W : O

:P

図 1. (a) Hill らの報告したコバルト 4 核 POM の
構造、(b) Co-POM-Mo の構造、活性中心
-14.0

∆S‡ = 20-40 cal mol-1 K-1

-15.0

ln(kh/kBT)

WO 反応の高効率化に取り組んだ。

-16.0

-17.0

-18.0
3.25

30.0 °
C
11.5 °
C

Double exponents
Single exponent
Williams-Watts function
3.30

3.35

3.40

3.45

103 x 1/T (K-1)

3.50

3.55

図 2. 酸素生成速度に対するアイリングプ

2) 。次に、速度論的解析により支持された i-I2M 過程の ロット

詳細を明らかにすることを目的とし、同位体標識法を用いた反応機構解析を行った。まず、17O 標識
水を添加後の Co-POM-Mo の

17

O-NMR シグナル強度の増大から水交換反応の動力学的研究に取り

組んだ。その結果、POM 骨格の二つのモリブデンを架橋した酸素 (μ2 -O) およびモリブデンに結合
した末端酸素 Ot の交換反応が酸素発生に比べて十分に遅いことを明らかにした。次に、 18O 標識水
(49%

18O)

中において酸素発生反応を行い

16 O

2、

16O 18 O

および

18 O

2

の生成比を GC-MS によって算

出することで O-O 結合過程の解明に取り組んだ。得られた生成比率に対しモンテカルロシミュレー
ションによる解析を行い、i-I2M 過程を経由する酸素発生反応とコバルト及び2つのモリブデンを
架橋した架橋酸素 (μ3 -OH) 原子と溶媒である水の交換反応が 2:1 の割合で進行することを突き止め
た。さらに、実験的手法により明らかにされた i-I2M 過程について、DFT 計算を用いた綿密な反応
機構の解析を行った。その結果、1 電子酸化の後、Co-POM-Mo 骨格内の酸素原子にスピンが局在化
した CoIII -O•種の生成を示唆する極めて重要な知見を得ることに成功した。さらに重要なことに、そ
の後続の協奏的なプロトン電子共役移動過程 (CPET 過程) を経て、2 電子酸化体が生じ、Co-POMCH3

Mo が i-I2M 過程を経由することを明らかにした。
一方、Co-POM-Mo および Co2-POM-Mo、最も高活

N

性 な 酸 素 発 生 触 媒 の 一 つ と し て 知 ら れ る Ru-bda 型

O

WOC の化学酸化および修飾電極の作製による電気化
学的酸化による均一系および不均一系での活性評価を

RuIII による酸素発生反応の各触媒濃度における速度定

30

数を見積もり、律速過程に関与する触媒の反応次数を

25

TOF (s−1)

35

過程で、Ru-bda(pic)2 は二分子会合過程で進行すること

O

O

Co2-POM-Mo
Ru-bda(pic)2

10
5
0

か に し た 。 こ の 結 果 は 、 低 濃 度 領 域 に お い て Ru-

N

15

定数から触媒回転頻度 (TOF) を算出したところ、触媒
ン酸 WOC は Ru-bda(pic)2 の活性を上回ることを明ら

N

Co-POM-Mo

20

を明らかにした。さらに興味深いことに、算出した速度
濃度 16 μM 以下の条件においてコバルトポリモリブデ

Ru

CH3

ず、ストップトフロー分光光度法を用い、各種 WOC と

および Co2-POM-Mo では O-O 結合形成過程は単分子

O

Ru-bda(pic)2

Co2-POM-Mo

行い、O-O 結合過程と活性相関の解明に取り組んだ。ま

算出した。その結果、POM 型 WOC である Co-POM-Mo

N

0

4

8

12

16

20

24

28

Concentration of catalyst (μM)

32

図 3. 各 WOC における TOF の触媒濃度依存性

bda(pic)2 の二分子会合過程が抑制され、触媒反応の効率が低下することを意味する。さらに、カウ
ンター交換により疎水性の THpACo-POM-Mo、疎水性の配位子を用いて Ru-bda(isq(OMe)2)2 をそ
れぞれ合成し、プロトン伝導体であるナフィオンおよび電気伝導体であるカーボンブラックの分散
液と混合し、ドロップキャスト法に基づき修飾電極を作製した。まず、THpACo-POM-Mo を担持さ
せた修飾電極のナフィオンの割合を変化させた際の電流密度を測定し、プロトン伝導が十分に促進
される 32wt%付近で電流密度の増大が飽和することを明らかにした。さらに、THpACo-POM-Mo お
よび Ru-bda(IsqOMe)2 の修飾電極の電流密度を測定し THpACo-POM-Mo がより高効率に酸素発生
反応を触媒していることを見出した。この結果は、電極上への触媒の固定化が、Ru-bda(IsqOMe)2
の二分子会合過程による O-O 結合過程を抑制する一方、THpACo-POM-Mo の単分子過程による OO 結合過程の進行への影響は少ないことを示している。
以上、本研究は最低分子量の POM 型 WOC に着目し、クラスター型 WOC における分子内 O-O 結
合過程および分子性 WOC における O-O 結合形成機構とその活性相関を明らかにするものであり、
新規 WOC の開発に留まらず種々の分子性触媒を開発する上で、重要な指針を与える成果である。

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