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大学・研究所にある論文を検索できる 「膵がん細胞表面糖鎖を標的とした治療法の開発-レクチンを用いた光線療法-」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

膵がん細胞表面糖鎖を標的とした治療法の開発-レクチンを用いた光線療法-

黒田, 順士 筑波大学

2023.09.04

概要









論 文 題 目:

膵がん表面糖鎖を標的とした治療法の開発
-レクチンを用いた光線療法-

指導教員:
人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻
小田竜也 教授



属:

筑波大学大学院人間総合科学研究科
疾患制御医学専攻



名:黒田

順士



的:

膵がんは難治性がんの一つとして知られ,その予後は不良である.膵がんに対する新
規治療標的の開発が急務であり,分子標的治療薬の開発が試みられているが,これ
まで有効な治療成績が得られていないのが現状である.当研究室では,細胞表面糖
鎖が有望ながん治療の標的になり得るとして,糖鎖に結合活性を有するレクチンに着
目した.そして,rBC2LCN レクチンが膵がんに特異的結合性を有することを示し,薬
剤担体としての有効性を証明した.一方で,このレクチンの治療応用に向けては非標
的毒性の最小限化が課題であり,そのために光免疫療法(photoimmunotherapy; PIT)
のコンセプト を応用することが有力な戦略になり得ると考えた.これは,IRDye700

(IR700)という光感受性物質を結合させた IR700 複合体が細胞膜に結合した時のみ近
赤外光により活性化され,細胞毒性を発揮するというものである.
本研究では,rBC2LCN レクチン-IR700 複合体(rBC2-IR700)を合成し,これを用い
た光線療法(lectin-based phototherapy: Lec-PT)の有効性を検証したものである.
対象と方法:
ヒト膵がん細胞株 Capan-1(H type 3 糖鎖陽性),SUIT-2(H type 3 糖鎖陰性)に対し
て,蛍光顕微鏡観察およびフローサイトメトリーを行って,in vitro での rBC2-IR700 の
特異的結合性を確認した.また,in vitro での Lec-PT の細胞毒性は,細胞膜の損傷を
反映するヨウ化プロピジウム染色後のフローサイトメトリーで評価した.細胞株由来およ
び患者由来の異種皮下移植モデルマウスに対して rBC2-IR700 を 20 µg 尾静脈投与
し,蛍光イメージングで標的腫瘍への集積および生体内分布を検証した.同モデルマ
ウ ス に 対 し て , ① 治 療 な し ( Control ) ; ② rBC2-IR700 20 µg 静 脈 投 与 の み
(rBC2-IR700);③ 近赤外光 100 J/cm2 照射のみ(NIR light);④ rBC2-IR700 20 µg
投与後,近赤外光 100 J/cm2 照射(Lec-PT)の群分けを行い,in vivo での Lec-PT の
抗腫瘍効果を検証した.さらには,GFP-luciferase を発現した Capan-1 細胞株
(Capan-1-GFP-luc)を移植した膵がん同所移植モデルに対して Lec-PT を行い,ル
シフェラーゼ活性の定量化により,治療効果を検証した.


果:

合成された rBC2-IR700 は,in vitro においてその特異的結合性が確認され,Capan-1
細胞に対して,近赤外光の光量依存的に細胞毒性が増加することが示された.また,

in vivo においても,皮下移植マウスに対する rBC2-IR700 投与後に,Capan-1 腫瘍お
よび患者由来腫瘍への高い蛍光強度が検出され,特異的結合が示された.その上で,
同腫瘍モデルに対して rBC2-IR700 投与後 6 時間で近赤外光を照射(Lec-PT)ところ,
治療(Lec-PT)群において,腫瘍の増大が有意に抑制された.さらに,抑制効果は反
復治療(週 1 回,3 週間)によって,持続することが示された.一方で,rBC2-IR700 の

生体内分布において,腎臓と肝臓への高い集積が確認され,標的外毒性のリスクが
示唆されたが,近赤外光に対して臓器を遮蔽により毒性が軽減されることを示した.そ
こで,膵がん同所移植モデルに対する Lec-PT では,非標的である腹腔内臓器を遮蔽
して近赤外光照射を行い,治療(Lec-PT)群において,明らかな有害事象なく有意な
治療効果を認めた.


察:

本研究では,細胞株および患者由来の異種移植モデルを用いて,膵がんを標的とす
るレクチン-光感受性物質(IR700)複合体を開発し,その効果を検証した.その結果,
膵がんマウスモデルにおいて,近赤外光照射後に腫瘍の縮小を認めた上,標的外毒
性を示さないことが実証された.
抗体を用いた光免疫療法においては,すでに頭頸部がんに対して EGFR を標的とし
たセツキシマブ-IR700 複合体が臨床応用されているが,膵がんにおける EGFR 発現
率 は 低 い.その 点 において,膵 癌へ の 反応性 レクチ ン を 用いた IR700 複合体
(rBC2-IR700)は有力な治療薬候補になり得ると考えられる.膵がんへの本治療法の
臨床応用としては,局所進行膵がんにおいて有効であると考えられ,術前治療におい
て,顕著な全身毒性を伴わずに腫瘍を減量することで,病理学的完全切除の可能性
を高め,生存率の向上に寄与すると期待される.


論:

本研究では,膵がん標的レクチンである rBC2LCN の IR700 複合体を用いた光線療法
への応用が,膵がんマウスモデルにおいて腫瘍の縮小に有効であることを報告した.
本研究は概念実証として,現状の抗体を用いた標的治療では治療困難ながんに対し
て,レクチンを用いた低毒性な治療が実用的かつ実現可能であることを示すものであ
る.

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