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大学・研究所にある論文を検索できる 「新規膵がん治療を目的としたrBC2LCNレクチン修飾リポソームに関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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新規膵がん治療を目的としたrBC2LCNレクチン修飾リポソームに関する研究

木村, 聡大 筑波大学

2021.08.03

概要

目的:がん細胞への標的指向性を高めることを目的とした抗体によるナノ粒子の表面修飾の効果は未だ限定的である.そこで我々は,がん細胞の最外層が様々な糖鎖で覆われていることを考慮し,抗体に対する抗原に代わって,これらの糖鎖を標的とすることに着目した.これまでに我々は,臨床膵癌に類似した形態像を呈するヒト膵癌細胞株(Capan-1)に特異的なフコシル化糖鎖が発現していること,また,これらの糖鎖に特異的に結合するタンパク質である rBC2LCNレクチンが薬剤担体として有用であることを報告してきた.そこで本研究では,ドキソルビシン含有リポソーム(Doxosome)の表面を rBC2LCN レクチンで修飾することにより,新規の糖鎖標的ナノ粒子(Lec-Doxosome)を開発し,このナノ粒子の効果ならびに特異性を,ヒト膵癌モデルを用いて in vitro および in vivo で検証した.

対象と方法:Lec-Doxosome は,脂質リンカーを介して rBC2LCN レクチンをリポソーム表面に挿入する post insertion method により作製した.rBC2LCNレクチンが高い結合性を有するヒト膵癌細胞株(Capan-1)ならびに結合性の低いヒト膵癌細胞株(SUIT-2)を用いて,in vitro での細胞結合性,取込み性,殺細胞効果を非修飾リポソームであるDoxosome と比較した.In vivo 試験では,前述のヒト膵癌細胞株を用いた皮下腫瘍モデルマウスを確立し,Lec-Doxosomeと Doxosome を経静脈的に投与した際の腫瘍への薬剤集積性と経時的な抗腫瘍効果を比較した.また,これらのナノ粒子を投与した際の有害事象の有無を血液学的,病理組織学的に評価した.

結果:In vitro 試験においては,Capan-1 では Lec-Doxosome の方が Doxosomeよりも細胞への結合性や取り込み性が有意に高く,殺細胞効果も高濃度下においては有意に強力であった一方で,SUIT-2 では同様な差が認められなかった. In vivo 試験においては,Capan-1 モデルマウスにおける腫瘍への薬剤集積性は Doxosome よりも Lec-Doxosome で有意に高かったが,抗腫瘍効果に関しては有意な差は認められなかった.また,Lec-Doxosome 投与群において死亡例は認めず,特異的な有害事象も認められなかった.

考察:本研究では,膵がん細胞のフコシル化糖鎖に特異的に結合する rBC2LCNレクチンをリポソーム表面へ修飾することに成功した.In vitro の検証結果からは,rBC2LCN レクチンの表面修飾に伴い標的細胞表面糖鎖への結合を通じて細胞内へリポソームを効率的に誘導できたと考えられる.In vivo においてもレクチン修飾に伴う腫瘍集積性の向上を認めたが,抗腫瘍効果の向上には十分に反映されなかった.この理由としては,上乗せされたリポソーム量ならびに内包抗癌剤量が,抗腫瘍効果の有意な差をもたらすには不十分であったと考えられる.今後は,より緻密なレクチン修飾を試み,更には,膵がん細胞により効果的な内包薬剤を用いたリポソームをベースとして検証していく.

結論:リポソームのがん細胞への標的指向性を高める手段として,がん細胞表面糖鎖を標的としたレクチン修飾が有用である可能性を示したが,現状では上乗せ効果をより高めるための改善が必要である.

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