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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of Catalytic Reduction of CO2 Using Self-Photosensitized Noble Metal Complexes with Tetradentate PNNP Ligands」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of Catalytic Reduction of CO2 Using Self-Photosensitized Noble Metal Complexes with Tetradentate PNNP Ligands

鎌田, 健司 名古屋大学

2022.06.03

概要

二酸化炭素 (CO2) は温室効果ガスである一方、還元することで一酸化炭素 (CO) やギ酸(HCO2H) などの有用物質に変換できる。この還元に光エネルギーを利用する CO2 光還元反応は、CO2 利用と太陽光エネルギー変換という観点で一石二鳥の技術であり、資源・エネルギー問題を解決する切り札として注目を集めている。CO2 を還元する均一系の光触媒系には、光増感剤 (PS)と触媒 (Cat) の二種類の金属錯体が必要である場合が多い。一方で PS と Cat の機能を併せもつ金属錯体を用いると、一種類の錯体で CO2 の光還元反応系を構築できる。しかし、そのような光還元触媒の問題点として以下の三点が挙げられる。第一に、光触媒の短時間での失活により触媒回転数 (TON) が低い値 (~350) にとどまっている。第二に、ほぼ全ての例は有機溶媒中で検討されており、水溶媒を用いた例は非常に少ない。第三に、照射光として紫外および短波長側の可視光が必要である。太陽光の効率的な利用のためにはより長波長の光でも駆動する必要がある。
本研究ではこれらの問題点を克服しうる CO2 光還元触媒の開発に取り組んだ。本論文は 4 章より構成されている。

第 1 章では、PNNP 型四座配位子を有するイリジウム (Ir) 錯体を利用した CO2 光還元反応について論じている。当研究室では(PNNP)Ir 錯体が多価カルボン酸の水素化触媒として開発されている。この触媒は PNNP 四座配位子による頑健な構造によって高温・高 H2 圧条件下でも触媒活性を保つ。そのため、CO2 光還元反応においても触媒活性を維持し、より高い TON が獲得されると着想した。4 種類の(PNNP)Ir 錯体を合成のうえ、トリエタノールアミン (TEOA) を犠牲還元剤として用いた CO2 光還元反応における触媒活性を調査した。その結果、ビピリジン (bpy) 部に 2,4,6-トリメチルフェニル (Mes) 基を導入した錯体 (Mes-IrPCY2) が最も高い耐久性・触媒活性を示し、HCO2H および CO 生成に関する TON は 48 時間でそれぞれ 97, 52 であった。反応溶液の ESI-MS 測定により、Mes 基の導入によって bpy 上での副反応による失活が防がれていることが確認された。犠牲還元剤を TEOA から 1,3-ジメチル-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール (BIH) に変更したところ触媒活性は劇的に向上し、168 時間の光照射によってTON は>10,400 に達し、HCO2H 選択性は 70–87%、QY は 49%であった。これらの TON とQY は PS と Cat の機能を併せもつ光還元触媒の中では世界最高の値である。Ir 錯体の電気化学的および光化学的性質を系統的に調査したところ、それらの性質にほとんど差は見られなかったことから、触媒活性は立体的な影響によって向上したと結論づけた。また、水溶液中で CO2 光還元反応を行うことを指向して、タンパク質と Ir 錯体を組み合わせる人工金属酵素の開発にも取り組んだ。ヘム結合部に変異を加えたエルシニア菌由来のヘム獲得タンパク質 (HasAypt(R40G))と Ir 錯体を組み合わせた人工金属酵素を用いて CO2 光還元反応を行なった結果、少量ではあるが HCO2H の生成 (TON ~18) が確認された。

第 2 章では、(PNNP)Ir 錯体を用いた CO2 光還元反応における機構解明研究について論じている。Mes-IrPCY2 の卓越した性能と極めて稀な高 HCO2H 選択性を説明するために反応機構の解明に取り組んだ。過渡吸収分光測定および EPR 測定、サイクリックボルタンメトリー測定、紫外可視吸収スペクトル測定など用いて、CO2 光還元反応の機構に関する知見を得た。その結果、光励起した錯体が還元的に消光されて生成した一電子還元種と CO2 が反応すると HCO2H が生成し、脱プロトン化して生成した Ir(I)種と CO2 が反応すると CO が生成することが示された。また、ビピリジル PCH2 部の水素原子の酸性度が非常に高いことが NMR 測定より確認されたため、配位子上の水素原子と Ir 上のヒドリドを利用する外圏型の反応によって CO2 が HCO2H に還元されることが示唆された。

第 3 章では、(PNNP)ルテニウム (Ru) 錯体を用いた CO2 光還元反応の開発について論じている。当研究室では(PNNP)Ru 錯体が不活性アミドの水素化触媒として開発されている。
(PNNP)Ir 錯体は耐久性に優れた CO2 光還元触媒として機能したため、(PNNP)Ru 錯体も長時間にわたり CO2 を光還元できると着想した。(PNNP)Ru 錯体を CO2 光還元触媒として用いたところ、58 時間の光照射で CO および HCO2H 生成に関する TON はそれぞれ 21, 30 であり、16 時間程度の触媒誘導期が確認された。触媒誘導期を短くするために塩基存在下でRu 錯体を加熱処理した結果、触媒誘導期はほぼ消失し触媒活性が向上した。144 時間の光照射で CO および HCO2H 生成に関する TON はそれぞれ 307, 489 に達し、この間に光触媒の有意な失活は見られなかった。ESI-MS 測定の結果から、上記の加熱処理により配位子のビピリジル PCH2 部の水素原子と Ru 上のクロロ配位子が除去されていることが確認された。

第 4 章では、(PNNP)オスミウム (Os) 錯体を用いた赤色光を用いる CO2 光還元反応の開発について論じている。Os を中心金属にもつ光増感剤は、Ir 錯体や Ru 錯体と比較してより長波長の光を吸収できる。しかし、CO2 光還元反応において赤色光で駆動し PS と Cat の機能を併せもつ錯体を利用した報告例はない。そこで PNNP 配位子の中心金属として Osを導入した錯体を合成のうえ CO2 光還元反応における触媒活性を調査した。その結果、赤色光 (λ = 630 nm) の照射下においても高 CO 選択的 (>99%) に CO2 光還元反応が進行し、48 時間の光照射で CO 生成に関する TON は 47 に達した。

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