リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「A survey of Japanese physician preference for attire : what to wear and why」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

A survey of Japanese physician preference for attire : what to wear and why

𠮷川, 由貴 名古屋大学

2022.04.25

概要

【緒言】
医師の服装は医療面接において患者が医師に対して抱く信頼感の重要な要素の一つとされる。医師の診察衣に対して患者視点から調査した研究はこれまでに多く報告されている。医師の白衣着用は、患者に衛生的・専門的・権威的かつ科学的な印象を与えるとされ、韓国、マレーシア、イスラエルやアメリカ合衆国等様々な国から患者が医師の診察衣に対して白衣を望むことが報告されている。本邦でも、医師の服装に関するアンケート調査で、多くの患者は白衣着用のほうが白衣非着用よりも信頼できると回答している。
患者の診察衣嗜好は時代や場所などの影響を受けると考えられる。スイスのプライマリ・ケアの場での調査によると、白衣を重要と考える患者は 34%にとどまり、白衣が医師の象徴的服装ではなくなりつつあることが示されている。近年、本邦でも在宅診療などを中心にあえて白衣を着ない診療形態も見受けられ、医師が診療現場に応じて診察衣を選択している可能性が考えられる。
それにもかかわらず、本邦では診察衣の実情に関する報告はない。そのため診療現場毎の着衣の変化だけでなく、医師の診察衣選択に寄与する要因も明らかではない。そして世界的にも、診察衣研究は病院を対象としているものが多く、診療所の報告はごく少数であり、在宅診療の場での診察衣に関する研究はない。
そこで本研究の目的は、病院・診療所・在宅診療での診療経験がある医師を対象に、診察時の診察衣に関する実情を調査すること、及び医師は診療の場所(病院、診療所、在宅診療)毎に何を重視し診察衣を選択するのかを明らかにすることとした。

【方法】
対象は日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医 794 名(男性:580 名 73%女性:214 名 27%)のうち日本プライマリ・ケア連合学会メーリングリスト(任意登録)に登録している医師とし、Web を用いた質問紙調査を実施した。
本邦の在宅診療は病院からの派遣と診療所からの派遣に大きく分かれるため、病院・診療所・在宅診療(病院派遣)・在宅診療(診療所派遣)の 4 つの診療場面を設定した。診察衣に関しては先行研究を参考に、男女医師の白衣・セミフォーマル・スクラブ・ カジュアルの 4 種(Fig1)とした。診察衣の現状把握として、各々の診療の場での診療の有無及び診察衣(白衣、スクラブ、セミフォーマル、カジュアル、その他より選択)、診察衣を選択した理由(勤務先規定、過去からの習慣、専門的、共感的、清潔感、動きやすさから 1 項目)を選択式アンケートで調査した。
現在着用している服装が自身の考えを反映していない可能性も考慮し、理想の服装についても調査した。現在の診察衣調査と同様に、各々の診療の場において家庭医が理想とする診察衣(白衣、スクラブ、セミフォーマル、カジュアル、その他より選択)並びにその理由(専門的、共感的、清潔感、動きやすさ、その他から 1 項目)を選択式アンケートにて調査した。
統計解析は IBM SPSS Statistics 26 を用いて l×m 分割表の独立性の検定および残差分析を Pearson のカイ 2 乗検定を行った。

【結果】
全家庭医のうち 19.3%(153 名;男性 112 名 73% 女性 41 名 26.8%)から回答を得た。家庭医の診療従事場所ごとの内訳を Table1 に示す。
実際に診療時に着用している服装の選択理由は、白衣で習慣と専門的、清潔感、スクラブで動きやすさ、カジュアルは共感的が多かった(Table2)。診察時に実際に着用している診察衣の実情調査(Fig2)では、病院では白衣を選ぶ家庭医が半数以上(52%)を占めた。一方、診療所と在宅診療では非白衣が半数以上を占めた。各施設での服装毎の選択理由も Table2 と同様の傾向を示した(Fig3)。
理想と考える診察衣の選択理由を Table3 に示す。セミフォーマルは清潔感、白衣は専門的・清潔感、スクラブは動きやすさ、カジュアルは共感的という理由が多かった。診察の場毎の理想の診察衣調査では、病院では白衣を選択する家庭医が多く(54%)、診療所や在宅診療では白衣以外を選択する割合が増加した(Fig4)。各施設での服装毎の選択理由も Table3 と同じ傾向を示した(Fig5)。
病院で白衣が望ましいと考える家庭医は過半数であるが、病院以外の施設では 1/4の家庭医しか白衣を理想の診察衣としていなかった(Fig4)。そのため病院で白衣が望ましいと回答した家庭医に限定して、病院以外の各施設でどのような診察衣選択をしたのかを検討した(Fig6)。診療所では白衣が多い傾向を示したが、在宅診療では白衣を選択割合が減少し、カジュアル比率が増えた。診療所系在宅診療ではカジュアル選択が最も多い結果となった。カジュアル選択の理由の多くは共感的というものであった。

【考察】
本研究では本邦の家庭医が、診療の場毎で実際にどのような診察衣を着用し診療しているかを初めて明らかにした。特に在宅診療における服装研究報告は初となる。今回の調査で本邦の家庭医が診療の場に応じて服装の嗜好を変えることが明らかとなった。
海外での患者視点の医師の服装に関する嗜好調査では、病院及び診療所において、患者は白衣を好む報告が多い。本邦でも患者視点の診察衣嗜好に関する研究では、病院や診療所において白衣が好まれている。本研究では診療所・在宅診療で動きやすさや患者への共感性を重視し過半数の家庭医は白衣を着用していないことが明らかとなった。また理想の診察衣調査でも、診療所・在宅診療では非白衣群が増加した。既報では患者は診療所で白衣を望んでおり、診療所において医師・患者間で白衣着用に関する嗜好の差異が認められた。
病院では実際及び理想の服装で白衣が最多であり、医師・患者間の診察衣の嗜好は合致した。病院での医師の診察衣に対する患者の意識調査では、白衣は専門的・衛生的、カジュアルは親しみやすいと考える患者が多いという報告がある。本研究では、病院において、理想の服装として白衣が最も多くその理由は専門的だからというものが最多であった。これは専門性を求める患者のニーズに合致する結果と考える。
診療所や在宅診療はプライマリ・ケアの中核であり、患者により近い場での診療となる。診療所や在宅診療ではカジュアルを選択する医師が増加し、理由としては共感的が多かった。本研究では特に在宅診療において白衣以外の診察衣を好む医師をより多く認めた。他の報告で白衣は有意に患者の緊張・不安を高めることが知られている。在宅においては医師と患者との近接性を意識し、医師があえて白衣を選択しない可能性も考えられるが、現時点で他に医師患者双方の服装に関する調査報告はなく、今後の研究課題としたい。
世界的にも家庭医の服装についての考えに関する報告がないことから、今後の患者・医師関係構築の一助になる研究であると考える。

【結論】
病院では実際および理想の診察衣として白衣が最多であり、その多くは専門的という理由から選択された。一方で診療所や在宅診療では実際の診察衣は非白衣が多く、理想の診察衣はカジュアルを中心に非白衣割合がさらに増えた。そしてそれは共感的という理由から選択された。本研究から、本邦の家庭医は診療の場毎に服装を選択しており、それは異なる理由を重視しているためであることが示唆された。

参考文献

1. Rehman SU, Nietert PJ, Cope DW, Kilpatrick AO. What to wear today? Effect of doctor’s attire on the trust and confidence of patients. Am J Med. 2005;118(11):1279–1286.

2. Gooden BR, Smith MJ, Tattersall SJ, Stockler MR. Hospitalised patients’ views on doctors and white coats. Med J Aust. 2001;175(4):219–222.

3. Ikusaka M, Kamegai M, Sunaga T, et al. Patients’ attitude toward consultations by a physician without a white coat in Japan. Intern Med. 1999;38(7):533–536.

4. Koizuka M, Kuwajima I, Suzuki Y, Matsushita S, Kuramoto K. Changes in blood pressure and pulse rate during visit to a doctor’s office [in Japanese]. Nihon Ronen Igakkai zasshi. (Japanese Journal of Geriatrics). 1992;29(12):912–917.

5. Fernandes E. Doctors and medical students in India should stop wearing white coats. BMJ. 2015;351:h3855.

6. Petrilli CM, Saint S, Jennings JJ, et al. Understanding patient preference for physician attire: a cross-sectional observational study of 10 academic medical centres in the USA. BMJ Open. 2018;8(5):e021239.

7. Gherardi G, Cameron J, West A, Crossley M. Are we dressed to impress? A descriptive survey assessing patients’ preference of doctors’ attire in the hospital setting. Clin Med (Lond). 2009;9(6):519–524.

8. Sotgiu G, Nieddu P, Mameli L, et al. Evidence for preferences of Italian patients for physician attire. Patient Prefer Adherence. 2012;6:361–367.

9. Landry M, Dornelles AC, Hayek G, Deichmann RE. Patient preferences for doctor attire: the white coat’s place in the medical profession. Ochsner J. 2013;13(3):334–342.

10. Zahrina AZ, Haymond P, Rosanna P, et al. Does the attire of a primary care physician affect patients’ perceptions and their levels of trust in the doctor? Malays Fam Physician. 2018;13(3):3–11.

11. Batais MA. Patients’ attitudes toward the attire of male physicians: a single-center study in Saudi Arabia. Ann Saudi Med. 2014;34(5):383–389.

12. Menahem S, Shvartzman P. Is our appearance important to our patients? Fam Pract. 1998;15(5):391–397.

13. Sebo P, Herrmann FR, Haller DM. White coat in primary care: what do patients think today? Cross-sectional study. Swiss Med Wkly. 2014;144:w14072.

14. Kurihara H, Maeno T, Maeno T. Importance of physicians’ attire: factors influencing the impression it makes on patients, a cross-sectional study. Asia Pac Fam Med. 2014;13(1):2.

15. Ishikawa M. Eliminating the image of white coats and hospitals has increased patients’ motivation for active treatment [in Japanese]. Jpn J Rehabil Med. 2017;54(10):811–813.

16. Tiang KW, Razack AH, Ng KL. The ‘auxiliary’ white coat effect in hospitals: perceptions of patients and doctors. Singapore Med J. 2017;58(10):574–575.

17. Toi T, Murata A, Ota H, Komiyama M, Ohashi H, Kusaba T. Fact-finding survey on the activities of family medical specialists [in Japanese]. Nippon Primary Care Rengou Gakkaishi. 2016;39(4):243–249.

18. Yamada Y, Takahashi O, Ohde S, Deshpande GA, Fukui T. Patients’ preferences for doctors’ attire in Japan. Intern Med. 2010;49(15):1521–1526.

19. Aldrees T, Alsuhaibani R, Alqaryan S, et al. Physicians’ attire. Parents preferences in a tertiary hospital. Saudi Med J. 2017;38(4):435–439.

20. Maruani A, Leger J, Giraudeau B, et al. Effect of physician dress style on patient confidence. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2013;27(3):e333–337.

21. Kamata K, Kuriyama A, Chopra V, et al. Patient preferences for physician attire: a multicenter study in Japan. J Hosp Med. 2020;15(4):204–210.

22. Chung H, Lee H, Chang DS, et al. Doctor’s attire influences perceived empathy in the patient-doctor relationship. Patient Educ Couns. 2012;89(3):387–391.

23. Cobos B, Haskard-Zolnierek K, Howard K. White coat hypertension: improving the patient-health care practitioner relationship. Psychol Res Behav Manag. 2015;8:133–141.

参考文献をもっと見る