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大学・研究所にある論文を検索できる 「有害事象管理のための外来化学療法における外来診察協働業務の機能と効果の検証」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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有害事象管理のための外来化学療法における外来診察協働業務の機能と効果の検証

鈴木 真也 富山大学

2020.03.24

概要

〔目的〕
新規抗がん薬が開発され、外来における薬物療法が増加するなか、国立がん研究センター東病院では外来抗がん薬療法において、薬剤師が医師、看護師とともにチーム医療に参画するべきとの臨床現場のニーズに応え、2007 年より全国初となる薬剤師が内科医師の外来診察に同席して外来化学療法を協働して業務を実施する“医師の外来診察に協働する業務(以下、外来診察協働業務)”を開始した。外来診察協働業務は、医師の診察前、診察中、診察後における薬剤師の協働業務により成り立ち、医師、看護師は薬剤師からの情報をより得ることのみならず、その提案により充実した臨床が実践できるようになったが、その定義は明確化されておらず、有益性に関するデータも存在しなかった。本研究は、外来診察協働業務の機能を明確にするとともにその効果を有害事象管理の側面から検証した。

〔方法並びに成績〕
患者、医師、看護師を対象とした意識調査では、回答者の 98 % 以上から外来診察協働業務が“ 有用である” もしくは“ とても有用である” と高い評価がされた。その理由として、治療の質の向上、治療の安全性の向上が挙げられた。具体的にどのような業務がそれらにつながるかを確認した設問では、外来診察に連動した業務と相談もしくは依頼が容易になるといった外来診察協働業務の強みであるチーム医療を発揮するための アクセスの良さが挙げられ、外来看護師のような医師の外来診察と密に連動した業務が薬剤師の職能においても臨床現場でニーズがあることが明らかとされた。また、医療者の 7 割から薬剤業務に関する負担を軽減するとの評価があるとともに外来診察協働業務により外来診察時間が、患者は 17 % 、医師は 24 % 短縮すると評価がされていたことから業務円滑化に関する有益性についても明らかとされた。

抗がん薬の処方鑑査について検証した 2016 年 6 月から 9 月の調査は処方鑑査を通した介入内容を Barnett らの分類、重要性を Overhage らのスケールにより評価した。その結果、介入のほとんどが薬物治療の安全性に関するものであり重要性は高かった。過去におこなった抗がん薬調製室による介入頻度 1 % に比較して外来診察協働業務による介入は 27.5 % と大きく上回った。処方鑑査を通した介入により致命的なものは 1.8 %を防ぐとともに治療を改善する重要な介入を多く実施しており、治療の安全性を向上し治療の質を向上することを明らかとした。

抗がん薬の有害事象管理について検証した 2016 年 6 月から 8 月の調査結果では、化学療法症例の 4 人に 1 人で医師の通常の処方に加えて薬剤師より処方提案がなさ れ、そのうち約 20 % が抗がん薬の有害事象に対する処方提案であり、半分以上の有害事象を改善させていたことを明らかとした。

服薬アドヒアランス管理について検証した 2016 年 6 月から11 月の調査結果では、服薬アドヒアランス不良を理由とした医師の介入依頼は全介入件数のうち 3 % と少なかったが、アドヒアランス不良例への介入により内服率は 4 割から 9 割へ改善していたことを明らかとした。

特定の外来抗がん薬治療において外来診察協働業務の機能と効果を検証した調査は、特徴的かつ様々な有害事象が治療の一時休薬を高頻度にきたし、長期間の内服を必要とする甲状腺癌レンバチニブ経口抗がん薬療法の 2015 年 5 月から 2017 月 3 月におけるデータを対象とした。その結果、計 501 件の外来診察を通して介入した 125 件の外来診察協働業務による介入の 9 割以上が治療方法と有害事象管理に関するものであり、外来診察日の中日に実施した計 156 件テレフォンフォローアップでは 17 % において薬剤師が電話介入で重篤な有害事象が発見され、それが最終的に医師により一時的な休薬につながっていたことから大きく臨床に貢献することが明らかとなった。

医療経済効果の検証は、薬剤費削減に関わる介入の調査と医療経済効果のシミュレーションを実施した。2016 年 6 月から 11 月の介入を評価した調査結果では、薬剤費削減に関わる提案が 90 % 以上採用され、約 700 万円の薬剤費削減が認められた。薬剤費削減に関わる介入の理由の 4 割が治療や副作用に対する提案であったことから、評価を含めない単純な残薬調整だけでは実施できないような薬剤師の職能をいかした介 入内容であった。同期間中における薬剤師による提案で増加した薬剤費は約 300 万であったものの、医師が処方した後の薬剤師による薬剤追加の提案の理由はいずれも治療継続もしくは抗がん薬による副作用管理に欠かせないものであった。医療経済効果をシミュレーションした結果では、年間 7 千万規模の医療経済的な有益性があることを明らかとした。

〔総括〕
本研究は日本で報告がない先進的な試みである薬剤師の外来診察協働業務の機能を 定義化するとともに、その効果を、意識調査、処方鑑査、有害事象管理、服薬アドヒアランス、で検証することで臨床に有益であることをはじめて明らかとするとともに外来診察協働業務を他施設で普及するための根拠となる医療経済効果および薬剤費削減効 果の基盤データを示した。

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