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大学・研究所にある論文を検索できる 「日本の病院で働く中国人看護師が直面している課題と対策」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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日本の病院で働く中国人看護師が直面している課題と対策

度, 進梅 大阪大学

2022.03.24

概要

【目的】
日本の病院に働く中国人看護師が仕事や生活で抱える問題点や悩み、抱えている将来像などを、インタビューを通じて明らかにすること(研究1)、大阪府能勢町の一般住民への介護予防の取り組みの一つ実施されている「いきいき百歳体操」に介して、身体機能への効果について検証を行う目的とし、合わせて主観的健康観への影響、社会活動との関連についても検討したこと(研究2)、および、地域在住高齢者における健康長寿のため、家庭血圧測定データによって定義された白衣現象と仮面現象の現状とその関連要因を明らかにすることを目的とした(研究3)。

【方法と結果】
研究1では、半構成的面接による質的帰納的研究を用い、日本の病院に勤めている同意を得られた中国人看護師13名に、仕事内容、日本での看護師を志望した理由、仕事の現状、満足度及び将来の希望等についてインタビュー形式で聞き取り調査を行った。年齢は20~30代。平均在日年数は4.3年である。データ分析の結果、中国人看護師は日本の給料が高い、日本の先進的な医療・看護技術を習いたい、自国と違う世界を見たい、自国の医療環境が悪いことなどで日本の病院で働く動機としていた。日本で働く多くの中国人看護師は、言語障壁、文化の違いに関連する人間関係、日常生活における孤独感、日本人看護師より昇進の機会が少なく、日本の病院からの支援も不十分であった。多くの中国人看護師は日本での将来を心配している現状が明らかとなった。また半分以上の中国人看護師は日本での就労生活に対して明確な将来像を持っていない現状も明らかとなった。今後海外からの看護師を雇用が進むと考えられる我が国における現状での課題と対策が浮き彫りとなった。

研究2では今後アジア圏の国々でも高齢化が進むため、我が国の介護予防に関する研究に取り組んだ。2015年10月~2019年6月の期間に、大阪府能勢町において、介護予防事業として実施されているいきいき百歳体操に参加した町民を対象とした。調査を行えたのは1028人であった。女性が766人(74.5%)と多く、平均年齢は72.6±8.0歳、506人(49.2%)が前期高齢者であった。データの揃っている464名において、体力測定での測定値の変化について、初回と1年後を比較したところ、4項目すべてで有意な改善を認めた。主観的健康感が良いと回答した者は、初回の29.1%から半年後には45.4%に増えていた。毎月1回以上参加している社会活動については、半年後、1年後に、老人クラブ、ボランティア活動など一部の社会活動への参加割合が増加していた。

研究3では要介護の原因疾患として脳血管障害や認知症の関与が大きいがその最大リスクである高齢者高血圧の研究に取り組んだ。2012年-2017年に高齢者健康長寿(SONIC)研究調査の参加者のうち、自宅で測定した血圧を手帳に記入し、血圧手帳のデータを調査会場に持参した380名を対象者にし、安定した値を示しており、連続する3-5日間記録された朝の血圧データを用いた。女性185人(48.7%)、男性195人(51.3%)、70代95人(25.0%)、80代245人(64.5%)、90代40人(10.5%)であった。344人(90.5%)の対象者は高血圧を罹患されていた。291人(76.6%)は降圧治療を受けている。本研究の定義で、白衣現象183人(48.2%)、仮面現象115人(30.3%)、正常82人(21.6%)であった。また、持続性高血圧は130人(34.2%)であった。

【総括】
中国人看護師が将来像に基づいてより良い計画を支援するため、言語障壁を克服し、病院からの文化理解を支援することが必要である。今後我が国では医療・介護の現場で看護師の需要が益々増加することが予測される。中国人のみならず今回得られた知見はすべての外国人看護師に通じる知見と考えられるため、今回の知見を今後医療・介護現場で外国人医療従事者を雇用する際に活かす必要がある。

いきいき百歳体操は高齢化の進む地域や自治体において推奨される介護予防事業であると考えられた。一般地域在住高齢者において白衣現象と仮面現象ともに多くなり、特に年齢と共に仮面現象の割合が増加している可能性がある。白衣現象と仮面現象の識別において、家庭血圧測定は非常に重要であることが示唆され、高齢期においてその測定を推奨するべきと考えられる。