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大学・研究所にある論文を検索できる 「リチウムイオン電池の性能改善に向けた各部材の検討および解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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リチウムイオン電池の性能改善に向けた各部材の検討および解析

笠井 誉子 Noriko Kakai 東京理科大学 DOI:info:doi/10.20604/00003590

2021.06.09

概要

本論文は、(1)緒論、(2)リチウムイオン電池の安全性に対するセパレータの影響と安全性評価方法、(3)0.4Li2MnO3-0.6LiMni/3Nii/3Coi/3O2の電気化学特性および結晶構造におftるセパレータと負極の影響、⑷0.4Li2Mn03-0.6LiMm/3Nii/3Coi/302のin-situ中性子結晶構造解析、(5)結論、の全5章から構成される。各章の概要を以下に示す。

第1章では、本研究の背景と目的を述べた。現在、リチウムイオン電池は小型の携帯機器から車載•大規模蓄電用途に至るまで、幅広く使用されている。更なる高容量化、高工ネルギー密度化が求められているが、これらを実現するための課題として、安全性、高工ネルギー密度化が可能な材料の開発、電池の作動メカニズムの解明が挙げられる。本論文では、第2 章で電池の安全性に対するセパレータの影響について、第3 章で高容量• 高作動電圧材料である固溶体正極について、第4章でin-situ中性子回折測定について研究することで、これらの課題にアプローチした。本研究を通じ、リチウムイオン電池の性能改善に寄与することを目的とする。

第2章では、リチウムイオン電池の安全性に対するセパレータの影響と安全性評価方法について述べた。高耐熱セパレータがリチウムイオン電池の安全性を向上させることは広く知られているが、セパレータがどのように電池の安全性に寄与しているか、また、どの程度の耐熱性が必要かは明らかになっていない。本研究では、電池が短絡したときのセパレータの状態を模擬した試験方法を考案し、実際の電池での安全性試験結果と比較した。電池が短絡した際の等価回路図を元に、模擬電池を使用した短絡試験を実施した。起電力を持たない模擬電池(正極• 負極•セパレータの積層体で電解質を含まない)に電源としてリチウムイオンニ次電池を接続し、模擬電池側を短絡させた。実際の電池では、短絡電流の直接測定や、熱暴走した電池におftる短絡初期の事象の観察は困難である。一方で模擬電池を用いた試験では、短絡電流の直接測定、短絡初期に発生した事象の観察が可能になる。この系を用いて、セパレータを変えた際の短絡電流、発熱量、試験後のセパレータの様子を比較した。セラミック塗工不織布セパレータでは短時間で短絡電流が流れなくなったため発熱量が抑えられ、セパレータの損傷も小さかった。短絡による発熱で正極集電体の一部が焼失し、導電路が失われることで短絡電流が流れなくなったと考えることができる。一方でフィルムセパレータでは長時間短絡電流が流れ続ftたため発熱量が大きくなり、短絡部周辺が広範囲で溶融、収縮している様子が観察された。フィルムセパレータでは短絡部発熱によってセパレータが溶融し短絡部が広がったために、短絡部での正極集電体の焼失が起こらず、短絡電流が流れ続ftたと考えられる。
これらのセパレータを用いて実際の電池で釘刺し試験を行ったところ、模擬電池での短絡試験で損傷が小さかったセパレータほど、安全な状態となっていた。以上の結果より、模擬電池を使用した短絡試験は、実際の電池での安全性と相関があることがわかった。

第3章では、固溶体正極材料0.4Li2MnO3-0.6LiMni/3Nii/3Coi/3O2の電気化学特性および結晶構造におftるセパレータと負極の影響について述べた。一般に、リチウムイオン電池におftる正極の研究には、金属Li負極、オレフィン系微多孔膜セパレータが使用される。しかし、実際の電池では主に炭素系負極が使用されており、セパレータ種も様々である。それにも関わらず、リチウムイオン電池の構成材である負極やセパレータの違いが正極の構造にどのように影響するかはほとんど研究されていない。本研究では、固溶体正極材料0.4Li2MnO3•0.6LiMni/3Nii/3coi/3O2について、金属Li負極またはグラファイト負極と3種類のセパレータ(ポリプロピレンフィルム、セラミック塗工不織布、セルロース系不織布)を用いて電池動作を行い、中性子または放射光X線回折を用いて充放電後電極の平均結晶構造を比較した。グラファイト負極はそのまま固溶体正極と組み合わせた場合サイクル容量が著しく劣化したが、あらかじめ金属Liと充放電し、負極にLiが一定量挿入された状態で使用することで安定したサイクル特性を得られることがわかった。サイクル特性改善の原因は明らかではないが、充放電によってグラファイト負極表面にSEIが形成されたこと、 Liが挿入されたことでグラファイト負極の電位が下がったこと等が考えられる。
負極やセパレータの違いによって0.1C 5サイクル充放電後の正極の平均構造が大きく変わることはなかった。このことは、過去に得た金属Li負極、PPフィルムセパレータのデータがグラファイト負極や不織布セパレータでも概ね適用できることを示している。一方、 0.1C5サイクル、1C 50サイクル、計55サイクル充放電後では、サイト間の電子密度分布やMQ6八面体の歪みについて、セパレータによる差が広がっていた。セパレータの細孔径分布や保液性の違いによって生じる電極面内でのLiイオン分布の差が、正極の平均結晶構造に影響したと考えられる。サイクルによる正極の結晶構造変化を見る場合には、従来の金属Li負極とフィルムセパレータではなく、実際に使用する負極とセパレータで特性を比較する必要がある。

第4章では、0.4Li2Mli()3-0.6LiMni/3Nii/3coi/3O2のin-situ中性子結晶構造解析について述べた。これまでに当研究室において、充放電状態を変えた電極でのex・situ中性子回折測定やLiNio.8co0.202正極でのin-situ中性子回折測定は行われてきたが、固溶体正極を使用したin-situ中性子回折測定は初の試みとなる。
第3章での検討の結果、5サイクル充放電では負極やセパレータの差によって正極の結晶構造に大きな変化は見られなかったことから、ラミネートセルの構成は0.4Li2MnO30.6LiMni/3Nii/3Coi/3O2(LMNC)IEffi.金属Li負極、PPフイルムセパレータとした。過去に報告のあるin-situ中性子回折測定では、円筒型電池もしくは積層数の多いラミネートセルが使用されているが、本研究で使用したセルは正極1枚、負極2枚の小型ラミネート電池である。また電解液や外装材についても、先行研究では水素の影響を少なくするために重水素置換電解液や水素を含まない外装材が使われていたが、本研究では通常の電解液および外装材を使用した。ラミネートセル作製後、初回充放電、真空下での2サイクル目充放電による動作確認を経て、3サイクル目の充放電でin-situ中性子回折測定を行った。測定はJ-PARCのBL20iMATERIAにて、ビームパワー600kW、ビーム照射面積 20mmX20mmで行った。中性子は、充電、放電に分ftて連続照射し、2時間ごと、またはLi移動量0.03molでスライスしたデータでピークの変化を比較した。中性子回折パターンのピークを帰属したところ、正極、負極集電体であるAl、Cu、負極であるLi、固溶体正極材料LMNC、の4相を示したことから、これら4相で解析を行った。その結果、LMNCに帰属されるピークが充放電状態に応じてシフトしていく様子が観察された。特別な電解液や外装材を使用せずに中性子回折測定で充放電中の正極の構造変化を見た例は本研究が初となる。

第5章では、本研究の結論と今後の展望について述べた。本研究において、セパレータが電池の安全性に寄与するメカニズムを明らかにし、実電池の安全性と相関のある評価方法を提案した。これにより、現在では5000cの熱風を当てても形状を保つセパレータを開発することができた。また、固溶体正極がグラファイト負極と各種セパレータで充放電可能であること、5サイクル定常状態においては、負極•セパレータの違いで結晶構造に大きな差がないことがわかった。これにより、固溶体正極の実電池への適用の道筋を示すことができた。更に、in-situ中性子回折測定について、過去の報告と比較して小型かつ一般的な闇造のセルでも、充放電中の固溶体正極の構造変化観察が可能なことを示した。これにより、少量サンプルでも充放電中の作動メカニズムの研究に利用できることから、新規材料ク開発につながると考えられる。

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