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大学・研究所にある論文を検索できる 「Prevalence of obstructive sleep apnea as assessed by polysomnography in psychiatric patients with sleep-related problems」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Prevalence of obstructive sleep apnea as assessed by polysomnography in psychiatric patients with sleep-related problems

岡田, 一平 名古屋大学

2022.12.22

概要

【背景】
精神疾患患者では睡眠関連の訴えは頻繁に認められ、例えばうつ病では、80%以上の患者が睡眠障害を訴え、さらにうつ病治療開始後も残存しやすい症状であることも報告されている。一方、精神疾患に伴う睡眠障害の治療は、早期改善に寄与することが明らかにされており、精神疾患の治療において、睡眠障害を適切に診断・評価して、対応することが重要である。臨床上、いびきなどの患者・家族等からの訴えから閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が疑われることも多く、OSAは睡眠障害・日中の覚醒度や活動性の低下を来すのみならず、精神疾患患者の早期死亡原因の1つでもある心血管・脳血管障害のリスク因子でもあり、合併の有無を適切に評価することは重要である。しかし、精神疾患患者を対象とした従来の睡眠研究では、質問紙やアクチグラフ、簡易ポリグラフ検査によるものが殆どで、OSAの重症度や有病率などの正確なデータが乏しかった。そこで今回、睡眠障害を診断するための客観的評価方法のゴールドスタンダードである睡眠ポリグラフ検査(PSG)を受けた精神疾患患者を対象に、PSGの結果および睡眠障害、とりわけOSAに着目し後方視的に検討することとした。

【方法】
対象は当院精神科病棟で2009年2月から2019年3月までにPSGを受けた精神疾患患者264名において、PSGの結果および睡眠障害診断のほか、年齢、性別、主訴、BMI、向精神薬使用などの患者背景について電子カルテ情報を後方視的に比較検討した。なお、本研究は名古屋大学医学部生命倫理審査委員会の承認を得ている。

【結果】
患者背景を示した(Table1)。男性158名、女性106名、平均年齢47.7±19.9歳、平均BMI23.8±4.8kg/m2であった。主訴は、いびき(41.9%)、眠気・過眠(21.2%)、不眠(15.2%)、その他(23.1%)であった。精神疾患の内訳は、うつ病(30.7%)、双極性障害(16.3%)、神経発達症(16.3%)、統合失調症(9.1%)、神経認知障害(8.3%)、不安症(7.6%)、身体症状症(6.1%)、その他の精神疾患(5.7%)であった。睡眠障害の内訳としては、OSAが55.7%と最も多かった。精神疾患ごとに見ると、うつ病(61.7%)・双極性障害(69.8%)・統合失調症(58.3%)・神経認知障害(54.5%)・身体症状症(56.3%)患者では半数以上に無呼吸低呼吸指数(AHI)≧5のOSAが合併していた(Table2)。さらにOSAを有する精神疾患患者のうち、61.9%がAHI≧15の中等症・重症のOSAであった。精神疾患ごとにみると、うつ病・双極性障害・統合失調症・不安症・神経認知障害・その他の精神疾患で半数以上が中等症・重症のOSAであった(Figure1)。OSAのリスク因子として、いびき・男性・年齢(≧50歳)・BMI(≧25kg/m2)が同定された。一方、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)およびエプワース眠気尺度(ESS)のスコア、ベンゾジアゼピン/抗うつ薬/抗精神病薬の使用率はAHI≧5群と<15群でも有意差がなかった(Table3)。また、いびきを主訴とする患者の74.3%にOSAを認めたが、いびきを主訴としない患者でも42.6%にOSAが認められた。OSA以外の睡眠障害としては、不眠症(18.6%)、中枢性過眠症(7.6%)、レストレスレッグス症候群/周期性四肢運動障害(7.6%)、レム睡眠行動障害(7.2%)、概日リズム睡眠・覚醒障害(7.6%)などが認められた(Table1)。

【考察】
睡眠関連症状を有する精神疾患患者264人のPSG結果から、精神疾患患者においてOSA、とりわけ中等症から重症のOSAが比較的高率に潜在していることが明らかとなった。また精神疾患患者においてはPSQIやESSといった質問紙や、いびきがないことでは、OSAを否定することが困難である可能性が示唆された。

在宅でのPSGを用いた研究からは、一般人口においてAHI≧5のものは、男性の83.8%、女性の60.8%という海外の報告があるが、対象者の平均年齢やBMIが本研究とは異なっている。重度の精神疾患患者においてOSAの有病率は25.7%というメタ解析の報告があるが、このメタ解析に取り込まれた報告のうちPSGを用いた研究は限られている。PSGを用いたものだけを抽出するとOSAの有病率は56.7%であり、今回の結果(55.7%)と概ね一致する。本研究ではOSAのうち、62%が中等症から重症のOSAであった。これまでうつ病患者を対象とした報告では、13.9%が中等症から重症のOSAであったという報告があったが、精神疾患患者では重症度の高いOSAが既報より多く潜在している可能性を示唆する結果となった。

今回、いびき、年齢(≧50歳)、BMI(≧25kg/m2)、男性がOSAのリスク因子として挙げられた。これらは一般人口でも精神疾患患者でもOSAのリスク因子であることがこれまでに報告されている。OSAや肥満は、精神疾患患者における早期死亡原因の一つである心血管・脳血管障害のリスクファクターであることが知られており、OSAへの早期介入が精神疾患患者における早期死亡等の改善をもたらすか、今後の研究が期待される。一方で、PSQIやESSといった質問紙や向精神薬の使用状況からOSAを否定することは困難な可能性が示された。これまでにも精神疾患患者においてPSQIやESSはOSAを含む睡眠関連呼吸障害の検出に有用でなかったという報告もあり、主観的評価のみで判断することは避けるべきかもしれない。さらには、リスク因子であるいびきを主訴とする患者の74%にOSAが認められたが、いびきを主訴としない患者からも43%にOSAが認められたことから、いびきの訴えのみに依拠するべきではない。

本研究の限界として、睡眠関連症状を有するものを対象にしたサンプリングバイアスが存在しており、結果を直ちに精神疾患患者全体に当てはめることはできない。また長期入院患者やクリニック通院患者など本研究で対象とならなかった精神疾患患者では、本研究と異なった睡眠障害の分布が認められる可能性がある。

【結語】
睡眠関連の訴えのある精神疾患患者から、中等症または重症のOSAが比較的高率に認められた。主観的睡眠指標や向精神薬使用からOSAを予測することは困難であり、精神疾患患者においてもOSAが合併する可能性を積極的に考慮する必要がある。

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